DJ Kennedy/life is damn groovy

Black Water Gold(pearl) / African Music Machine



土曜の夜はこれからだ。

北風の冷たい夜、体を温めるブランディも良いけれど、それより何より
Funk fanならシェルフから誇らしげに取り出すであろうこのアルバム。
New OrleansのFunk Band、African Music MachineのCompilation.
血が騒ぐよりもGroovyな細胞が目を覚ます。

ところがひとり、このアルバムをやはり誇らしく翳す音楽バカが、よりに
よってこの大好きなBlack Water Goldに、情けない思い出を持つ。


夏のNew Orleansは、将に茹だるような暑さ。気温のみならず湿度も
ジャングル並み、もはや警戒レベルの灼熱の町を日中、目当てのバーを
探して歩くこと1時間。結局見つからずに、ふと覗くと天井には大きな
シーリング・ファンの回る薄暗いバー。ここだ、とにかく入ろう。


　　　　　　　


カウンターのストゥールに腰かけると目の前にはずらりと並ぶフローズン
ドリンクのマシン。カクテルが全てスムージーになっているのだ。暑さと
疲労に冷たくて甘いドリンクは何よりの薬。気分は一気に急上昇、私は
ベリーニ、彼はハリケーン（これが強い。ジンとウィスキーの2本立て）を
頼むと、プラスティックのカップは高さが30センチ近くもある。けれども
後のことなど考えもせずに、喉を鳴らしあっという間に1杯を飲み干す。
見れば、止まることを知らないマシンは私達を誘惑し続ける。2杯目は
ピーニャコラーダ、そしてダイキリでしめた。

何故あんなに飲めたのか、今になって考えれば、あれはNew Orleansが
私達に与えた試練？洗礼？戒め？そんな気がする。

ホテルに戻るとまだ2時。が、殆ど気絶状態でベッドに入り、目が覚めると
深夜0時を過ぎていた。長いお昼寝でスッキリ、なら良かったが、夫も私も
激しく波打つこめかみに飛び起きた。

New Orleansの夜はこれから始まると言うのに、体も気力も着いて行かない。
悲しいことに、今夜は夜通し音楽を聴きまくり、飲んで踊って朝を迎えると
決めていながら、とにかく体調を戻さなければと考えているのである。

少し風に当たれば気分も変わるかと外に出る。通りを歩く99%の酔っ払い人口
の中で今、私と同じように「ああ、頭が割れるほど痛い」と嘆く人間は、横を
歩く夫以外にはおそらくいないだろう。1年を通して探してみても、あの町では
見つからないような気がする。そのくらい機嫌が良く、不摂生で夢中な町。


　　　　　　


通りのあちこちからデキシーランドやブルースの生演奏が、もうほぼ奇声とも
言える酔いの入った歌声と共に聞こえてくる。盛り上がりも最高潮の店々を
横目に、私達は中心からちょっと外れたバーに入った。

冷たい水以外何も口にしたくない気分でも、ここはやはり体の為に。けれど、
気だるい体と重たい瞼で目の前に立つバーテンダーを見ると「何を飲む？」
こう聞かれれば、気の弱い二日酔い夫婦は「バーにいて何も飲まないのもね」と
苦しむ頭を支えつつバーボンを彼はストレートで、私はソーダで頼んでしまった。

半ば投げやりにバーボンを飲み、その後New Orleans名物のザリガニ料理を
食べている間中、話題は無理やりな「酒は百薬の長」。反省する元気もない。と、
その時、Black Water Goldが大音響で流れ始めた。地元ファンが一斉に立ち上がる。

ああ、本当なら私だってあの輪の中に。

が、体が椅子から離れない。ファンキーな客の集団を恨めしそうに眺め、
私達は何だか、失敗を嘲られているようなつまらない思いで店を後にした。

ホテルに帰っても、Black Water Goldは耳鳴りのように頭の奥で響いていた。

翌朝ルームサービスを呼んだ時に二日酔いだと話をすると、Bloody Maryを
勧められた。飲んでも飲んでも逃れられない、酔い潰れの日々だった。

これが、BGWを聞けば思い出す、AMMとNew Orleansと私の不完全燃焼な関係。








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