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DJ Kennedy/life is damn groovy

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March 13, 2010
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カテゴリ:Friday-Night Boom





   FridayNightBoom.jpg




アパートメントホテルに辿り着くと、エレベーターを待つのは私達と、私達に背を向けて立つ
男性ひとり。左手にブルックリン・ラガーのボトルを持っていた。

やがて扉が開き、彼がふらつき加減で乗り込むのを待って私達も進む。ちょうど片足が扉を
越えた時、その人は振り返った。あなたは。

これ程の衝撃は、いつだったか信号を待っている時目の前に止まったキャブからダースベイダーが
出てきた!と思ったら、腰までもつむいだドレッドヘアで登場したMaxi Priest以来だ。

私は夫を見た。夫も相当に驚いている。もう一度、なるべく失礼にならないよう彼を見つめてみる。




                 Bob Dylan.jpg



ボブ・ディランだ!

けれどもこんなところにいるはずがない。そして残念ながら、決定的だったのは、彼が
麻薬中毒者さながらにとろんとした目でふらふらとしている様子。確かに顔のつくりも髪型も
痩せ具合もボブ・ディランそのものなのだが、ひとすじのオーラも感じられない。
悲しき似非ボブ・ディラン。

だが彼は、私達が彼を「あ、ボブ・ディランだ」と凝視しているのを分かっているかのように
じっと黙って立っている。いや、彼は私達が彼をボブ・ディランだと信じ込んでいることを
確認して、うっすら笑みさえ浮かべているように見えた。

再び夫を見ると、彼は首を小さく横に振る、違う、別人だ、と。けれどもあまりに似過ぎて
いるのだ。本人よりもそっくりだと言いたいくらいに。私はなかなか諦めがつかなかった。


暗黙の了解で何とか「これはそっくりさんだ」という結論を見出すと、今度は笑いが込み上げてきて
それを押し殺すのに腹筋が攣ってしまいそうだった。

初めて知った。これまで数多くの所謂Celebritiesに出会ってきたが、その人本人を目の当たりに
するよりも、そっくりさん、という方が衝撃は強いものなのだった。

何故、ここまで似てる?なんでこんなに同じなの?どこから見たってボブ・ディラン。自分だって
意識してるくせに。周りが「あ、ボブ・ディランだ」と呟くのを待っているくせに。そんな意地悪を
言いたくなるほど、どのアングルから見てもそっくりそのまま着ているものまでボブ・ディランだった。

夫も私も、もうどうして良いやら頭の中を整理できず笑いたいのも情けないのも必死に堪え、ただ
揃って俯いていると、3階でエレベーターが止まる。誰か、乗ってくる。


                 BobDylanprtrt.jpg


エレベーター、奥・中央にはボブ・ディラン。左に私達。ドアが開く。ドアの向こうには白人男子2人。
彼等は正面を見て一瞬、足を止める。致し方ない、スーッと扉が開いたその時視界に入ったは
あの、ボブ・ディランなのだから。

私は何か他のことを考えようとする。でないと、噴出してしまいそう。 「引っ掛かってる」

彼等はなるべくボブ・ディランを見ないように入ってきて、向かって右側の空いたスペースに陣取る。
私達も、少しでも何らかのムーヴがあったものなら自動的に緊張の糸が解けてしまいそうで、
とにかく必死に下を向く。けれどもボブ・ディランを挟んだ向こうのふたりが気になって仕方ない。

そしてそれは彼等も同様のよう。視線を感じる。「ホンモノ?」と訴えかけているのが
分かる。確かめたいのだろう。

ボブ・ディラン本人は、苦しむストレンジャー4人を弄ぶかの如く中央でふらふらしている。

9階でエレベーターが止まると、ボブ・ディランは幽霊のようにそろそろ~と立ち去った。
フン、あんなボブ・ディランがいるものか。

ドアが閉まった。動き出さないうちに男の子達のひとりがとうとう口にしてしまった。

「ボブ・ディランだ~」

やはり同じことを考えていたと分かると、4人一緒になって涙が出るほど大笑いした。
おそらく上昇するエレベーター内の大爆笑は9階ホールのボブ・ディランにも聞こえたはずだ。


それにしてもあのボブ・ディラン(に似過ぎているおじさん。絶対に本人ではない)は
こういうことがあった時、どう思うのだろう。「やっぱり」か、「しめしめ」か、まさか
「まただよ・・・」なのか。いつものことだから気にも留めていないだろうか。

この話はそれ以来、どこに行ってもパーティ・ジョークの代表として周囲を笑いの渦に
巻き込んだ。


そして2年程が経ったある時。


  Brooklyn Lager 173.jpg


私達はミッドタウンのホテルで催されたとある企業のパーティに招かれており、帰りに
ホテルのバーでBrooklyn Lagerを飲んでいた。

ひとしきり話をして、飲みかけのボトルを持ったままバーを出ると、ロビーへ降りる
エレベーターに乗り込んだ。深夜1時、中には誰もいなかった。下へ向かうエレベーターに
乗ったと思いきや、気付けば上昇し始めた。「飲み過ぎた?ちっとも気がつかなかった」

ふと見ると、隅にブルックリン・ラガーの空のボトルが置かれていた。高級ホテルに
あるまじき風景。「これは良くないね、誰も気付かないのかな」そんな話をしながら
折り返しするのを待った。

エレベーターが止まる。静かにドアが開く。 「あっ」 乗ってきたのは、






             LouReed.jpg




デジャヴのような感覚。いつかこれと同じことがあった。そうだ、ボブ・ディランだ!
ということは、また?ところが後方から、閉まり始めた扉に手を掛けて乗り込む男性。
そしてその人に向かって、

"Hey, Lou!"

本人だ、今度こそ本人なのだ、と思ったのも束の間、エレベーターはロビーに到着し、
Louと知り合いの男性は先に降りて早足で消えた。

私はすっかりその気でいたが、夫は前回同様全く信用しなかった。「そっくりさんをLouって
呼んだって何ら不思議じゃないし」と言うのだ。確かに友達の誰かがヒラリー・クリントンに
似ていれば、周りは彼女を「ヒラリー」と呼ぶのだし。確かに頷ける話ではある。けれど
どう見たってLou Reedだ。私は、あの'Lou'は本人だと、今も信じている。


それから私は考えたのだ。
ブルックリン・ラガーと関わると、どうやらそっくりさん事件に遭遇するようだ。
ふむふむ、それなら。

ところがその後「誰かのそっくりさんに会わないか」とブルックリン・ラガーを故意に
飲み続けたのがいけなかったか、その魔力はすっかり失せて何も起こらなくなってしまった。
まぁ、これだけの思い出をくれたのだから、もう十分。


こうして考えてみると、ニューヨークには著名人が大勢住んでいるが、そのそっくりさん人口
も相当であると考えられる。誰か一度、そっくりさん大会でもしてみれば良いのに。でも
その場合、優勝者は既に決まっている。それはもう、ボブ・ディランだ。V10,V20は
当たり前の激似である。



来週のFriday-Night Boomでは、皆さんにある「幻のビア」に関する情報のご提供を
お願いさせて頂きたいと思っています。来週も、どうぞ宜しくお付き合いください。



Songs about NY by Bob Dylan
HardTimesinNewYork.jpg SpanishHarlemIncident.jpg Positively4thSt.jpg DesolationRow.jpg


Songs about NY by Lou Reed/The Velvet Underground
ChelseaGirls.jpg ConeyIslandBaby.jpg DirtyBlvd.jpg EggCream.jpg



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  Gratitude 6.jpg
Closed tonight. This essay was updated on 3/14/10 @3am.
Thank You & Sweet Dreams. DJ Kennedy






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Last updated  March 14, 2010 11:48:37 PM
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