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カテゴリ:Simple Pleasures
マサチューセッツ州西部のあるコテージで、私達の長くて賑やかな一日が終わろうとしている。 ドレイクが私を釣りに誘う理由はただひとつ、私が船酔い知らずだと言うことだ。長時間停止したフィッシングボートに乗っていれば、例え海が穏やかでも多少は揺れているものだが、私に限っては昔から、ハリケーンが近付いている大暴れの海上でも決して船酔いをしない訳の分からぬ強靭さを持っており、ドレイクは船の上で私を放っておいても心配ないことから、誘う相手がいなければ私を連れて行こうと思うようだ。そういった点で、私は彼の「便利な女」なのである。 彼の人生における間違いは、この異常なまでの趣味と恋愛・結婚を天秤に乗せた時、「釣りに対する情熱あるいは狂気」の乗った天秤皿が下がってしまうことにある。 「海を捨ててまで一緒になりたい女性が現れたらね」 今日まで売れもしないで上から目線か。私は知っているんだぞ。彼がもう十年以上も生涯の伴侶を血眼になって探していることを。彼は見た目だけでなく中身だってなかなか良い男だが、一緒に釣りができなければ結婚できないというのはどう考えても間違っている。私も友人として、大切な、そして美しい女友達を何人もドレイクに紹介したが、結局は釣りが仇となって長続きはしなかった。もうこうなったら一生独身を貫くか、美メスのスナッパーでも見つけて一緒になるしかあるまい。 そして今日は、ボストンから合流してくれた学生時代の友人夫妻が、穏やかな海の、いやドレイクの餌食となってしまった。彼等は豪華客船の旅こそ経験があっても、小さなフィッシングボートで釣りだなんて初めてだと言い、案の定小さなゆらゆらに耐えられなかったのだった。 陸に上がってもふわふわ・ゆらゆらは収まらず食事などとんでもない。ここまでの道中は、ドレイクがカーター(ご主人の方)を、私がカーターの妻フロリダを乗せて彼等の車を運転した。そして今夜、私達はYo-Yo Maを断念して早めにコテージに戻ってきた。 Yo-Yo Maはとても残念だったけれど、これまでもTanglewoodで数回聴いているし、夏に帰ってくればまたチャンスもあるだろう。今夜はとにかく、カーターとフロリダを介抱することが先決だった。ただ、今夜はフロリダに私の話をたくさん聞いて欲しかったのに、ドレイクのやつめ・・・。 釣り自体は好調で、私も50センチくらいのスズキを釣った。ドレイクはそれよりずっと大きなスズキやシーバスなどを数匹釣り上げ、ちょっと鯖みたいな顔の、ブルーフィッシュと呼ばれる大きな魚も釣って見せてくれた。私も個人的には楽しかった。20年もドレイクの釣り狂に付き合わされれば、私も釣り好きになってしまう。波の音がいい気持ちだし、海の広さは、この世界に生まれた幸運を何度でも感じさせてくれる。ドレイクはドレイクで魚とのバトルに夢中だし、私達は船の上であまり話をしない。iPodを耳に当ててしまえば私にとっては良い瞑想の場でもある。 が、ダウンしている二人の青い顔を見れば、明日以降のスケジュールも変わってくるのは必至で、まぁ初日にドレイクは良い釣果を得たことだし、明日1日はここでゆっくりしても良いかも知れないと思っている。朝には元気になって、空気の良い森の中で美味しい食事を楽しめると良いが。 この話をしながらいつしか眠ってしまっていた。 今こちらは15℃。あと1時間もすれば夜が明ける。おやすみなさい。きっとまた、明日。 #ontheradio via @youtube お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 14, 2011 05:59:01 PM
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