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カテゴリ:Simple Pleasures
↑ カレンの餌食となり、「欧州周遊の旅」が遠のくDJK..... 無謀なカレンの手はスペードの9とダイアの4、ディーラーの表のカードは5。それを確認もせず真っ赤な顔のデイブをちらっと見て、もう1枚を要求する。$500をベットして18でディーラーのハンドを待っている韓国人のおじさんはたまらない。が、文句は言ってもそこまでなのだ。これは彼のゲームでもあり、カレンのゲームでもあるのだから。私達の心情は勿論、「おじさんがんばれ」である。ディーラーのケントもカレンに対して「困ったものだ」という顔を隠さず、3枚目を引いた。 ダイアの7。彼女のカードは20になった。いや、なってしまったと誰もが思ったことだろう。にも関わらず、そもそもゲームを知らない上にビアがまわってやっとカレンによりかかって立つデイブは背中から彼女を抱きしめたまま、 "Keep going, honey! One more! One more!" ここでさすがにケントを含む全員が「20だ!」と怒りをぶつけ、二人は「あ、そうかそうか」とヘラヘラ笑ってそこで止めた。シンシアが小声で「帰りなさいよ」と言っていたのを私は聞き逃さず彼女を見て「そうそう」と肯くと、シンシアも私のひじを突いて笑った。 そして、ディーラーのカードである。ケントは裏のカードをめくる。 スペードのA。ケントは、 "Six or Sixteen." と読み上げる。ブラックジャックでは、Aは1か11と数える。 次にケントが手にしたのは青いプラスティックのカード、ゲームの終了を告げる「カット」のカードで、デイヴは「ブルーだ、ブルーだ。それはいくつ?10?11?」とケントに向かって叫び、彼はそれに取り合わず、すぐ後のカードを1枚引いてエースの横で表にかえした。 スペードの3。ケントは明らかに硬い表情で、"Nineteen." 5+1+3=19となる。テーブルの、おじさんからドレイクまでの空間に溜息が集まる。おじさんは厳しい目でケントを見つめ、「次のカードを見せてくれ」 ケントが次の1枚をめくると、ハートのQが顔を出す。 おじさんは再び手持ちのカードをテーブルに叩きつけた。彼のカードは18、隣に座っているメルのご主人は12、シンシアは19、私は13、ドレイクも17。もしもカレンがダイアの7を引かずにそれがディーラーに入っていたなら、 5+1+7+3+10=26 つまりディーラーは21をオーバーして全員が勝てたのだった。周囲におかまいなく喜ぶ二人。既に泥酔状態で言葉までよろよろしている。彼等がこのテーブルに持ち込んだ不穏な空気は容赦なく私達を打ちのめし、嘲笑する。更に、無情にもこういう時、ギャンブルの神様はこの愚か者二人に甘い夢を見せ続けるのだった。結局このシャッフルは彼等に流れを持って行かれ、次のシャッフルでは、おじさんはさっき両替した1000ドルと、後から新たに替えた2000ドルを使い果たした。その時点で失っていた額は、おじさんに続いて私が多かった。そうして、テーブルでチップが鮮やかに積み上げられているのはカレンの目の前だけになった。 ここで、カーターとフロリダが食事に行かないかと誘いに来た。「ディナーに行く?それともテーブルを移る?」ドレイクが私に尋ねるが、ここで席を立つのはプロの意地が許さない。とにかくしばらく様子を見たいと言った。それを聞いていたおじさん、メル夫妻とシンシアも席は立たず、カレン以外は、次のシャッフルからしばらくゲームに参加しないとディーラーに告げた。 ディーラーとデビル、いやカレンの一騎打ちは、カレンに分があった。彼等が最初にいくつチップを持っていたかは知らないが、この時ざっと見て2000ドル以上を彼女は持っていた。見兼ねたメルが私の横まで来て、「どうする?」と尋ねる。 「彼(メルの夫)はもう他のテーブルに移ろうかって言ってるんだけど、あなたはどうする?」 「そうね、ここでみんなで見物していても仕方がないわね」 その時。黙ってゲームを見つめていたシンシアが静かに100ドル紙幣の束をテーブルの中央に置くとケントに向かい、 「2000ドルよ。全部ブラック(100ドルチップ)でちょうだい」 ケントはピットボスを呼び、金額と両替した黒いチップの枚数を確認させて、シンシアの手元で5枚ずつを重ねた4つのタワーにして彼女に笑顔で、 "Two thousand dollars. Thank you. Good luck." シンシア、ケントとカレン。三つ巴のバトルが始まった。 最終回へつづく お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
August 22, 2011 10:32:13 PM
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