Could Be Home #1
毎年11月の第1日曜日にニューヨーク・シティ・マラソンが開催される。私の友人知人も多くが参加するのでもしやスクリーンにその雄姿が映し出されるのではとライブ中継にかじりつくも、まあ当然のことながら街並みばかりを楽しむ結果となった。すっかり北海道に夢中で忘れていたが、ずいぶんとニューヨークに帰っておらず、昨夜はランナーたちに流されていく景色をぼんやり見ながら久しぶりに胸がきゅんとした。普段はスーパードライな夫も「ああ、帰りたい」とつぶやいていた。けれどこの町に来て、ここで過ごす時間が長くなってホームシックに苦しんでいたかというと意外なほどにない。これはいつまでもNY気分の私自身にも問題があろうがそれだけでなく、どうやら北米や北欧などに似たところがいっぱいで違和感を感じることがないようなのだ。そのひとつは、やはり雄大なる景観だ。広い北米大陸の中にいると、ニューヨークでさえ30分もドライブすれば写真のような風景に出会うことができる。イギリスへ行った時に目にした野原も、まるでそのままここへ移してきたかのようにそっくりだ。雨の後に太陽が輝き始めると何度でも姿を現す二重の虹や、前後左右どこを見ても怒りを落としている激しい稲妻や、身体をすっぽりと埋め尽くす雪。新鮮なようで、実は馴染みのある景色が私をニューヨークを離れた寂しさから解き放ってくれていた。そして4度目の11月。ここを故郷にしてもいいかも、と思い始めている。あ、そういえば広くておおらかで優しい自然をさして気に留めない人々の心根も、なんだか欧米人のそれに似ているような気がする。