ぷちぷち短編小説『地雷』
何かと直ぐ首を突っ込む。突っ込んでしまう。これは、性分、自ら突っ込んで行く。 地雷が、たくさん転がっている中。分かっていても突っ込んで行く。 自分では、避けているつもり。地雷の方向に自ら向かう。向かって行ってしまう。 今日、何しようかと思い、携帯に手をやる。 携帯をイジリながら、来たメールに素早く指を動かし返事を返して行った。 この頃メールに、はまっている。その中に同姓のメル友もいる。高校1年生は多感な時期であり、真剣に悩みの相談を受け、答えて、何度か危機を救った。 お姉さんの為なら、なんでもやると可愛いこと言ってくれている。 自分の事として、身内の事として対応している。自分で言うのもなんなだが面倒見のよさは天下一品である。 そしてメル友の繋がり中に、水野がいた。何度かメールのやりとりを行って、一度お茶しようという事になり、会おうと言うことになった。会う際に分からないと行けないと、自らの写メを送って来た。これなら、遠くからみても、彼だと気づくだろう特徴ある顔だった。 自ら地雷に向かって事を、この時は、微塵も感じなかった。 コーヒーとカフェオレを頼んだ。私は、コーヒーである。コーヒーより、カフェオレが好きだと言うので理由を聞く。コーヒーは、苦すぎて嫌いだ。マイルドにしたカフェオレの方が好きだと言った。 レギュラーコーヒーにほぼ同量の暖めたミルクを入れたものらしい。カフェオレのレと言うのはフランス語でミルクの事と博学ぶりを自慢していた。要約するとミルク入りコーヒーと言った所だろうか。 どうも、あまり好きになれないタイプだ。そう感じたのは、気のせいなのか。言い方や伝え方、表情が、私にはどうも、合わないそんな感じがした。 自分と付き合わないかと言う。自分と付き合うと、これだけのメリットがあると、力説していた。それならと、ちょっと面白がり、カマをかけて、ちょっと色仕掛けでその気にさせ、聞いていくと、その中に、不正資金を得る手段があると、胸のポケット辺りを叩いていた。 そしてお酒をたっぷり飲まされ、無理やり、ホテルに連れ込まれ、半ばレイプまがいなことで関係を持った。 自分の事も、その不正資金を得る手段の事も許せなかった。 水野は、刑事であり。その道のプロである。へまはしない。「貴様が何と言っても聞いてくれないぞ。こちらの方が1枚上手だからな、その事をよくわきまえとけ」 警察という国家権力を盾にするのは大嫌いだ。今回の事も合意の上だと言うだろうし、今の証拠がないのを言っても誰も聞いてくれない。 私らの力の無さを実感した。せめて、今持っている所持品に何か手がかりがあるハズなのに、と悔しがった。それも叶わぬ思いだった。 拳を震わせながら、「正義は、何時かは勝つから」 そう言う捨て台詞を絞り出して去るのが精一杯だった。 翌々日の新聞に記事が載っていた。 県警は20日までに、電車内で高校1年の女子生徒(15)の下半身を触ったとして、同県警署員を県迷惑防止条例違反の現行犯で逮捕したと発表した。 逮捕されたのは、同県警、捜査第一課水野厚志警部補(46)。水野警部補は「満員電車で、女子生徒と体が触れて、ムズムズしてやった」と容疑を認めた。 県警監察官室によると、水野警部補は19日午後7時半過ぎ、電車内で、女子生徒のスカートの中に手を入れ、下半身を触った。水野警部補は女子生徒に手首をつかまれ、次の駅で県警署員引き渡され、その場で逮捕された。水野警部補は帰宅途中、酒は飲んでいなかった。 所持品から、不審物も見つかっており、さらに余罪がないか厳しく追求して行く。 持つべきものは、友だと、携帯をギュッと握り締めた。<おわり>