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カテゴリ:書評
著者はサラリーマンから経営学者に転進した人。アカデミズムの世界ではなかなか認められなくて、あちこちの大学で非常勤講師をして苦労して食いつないでいるみたい。しかし、経営学を学んだ立場から、職場のメンタルヘルスについて興味を持っている僕にしたら、これはとても重要な先行研究だ。職場のメンタルヘルスについて研究している人は産業医や精神科医ばかりで、経営学者でこういうことをやっている人を見かけたのは初めてだ。で、この本から、経営学の切り口からでも研究できる可能性を感じて勇気づけられた。
過労死、過労自殺という形で、死にいたるまで働く人は、強制的に働かされているのか?それとも自発的な意思によるものなのか? 過労死・過労自殺者の多くは、頼まれるといやと言えず、職場の仲間や顧客、取引先への責任をほとんど無限なものとして背負い込んでしまう「メランコリー親和型気質」(これ、僕もあてはまる)である。 一方、彼らが働く日本の職場では、アメリカの職場のような明確な職務分担がなくて、わざとあいまいな分担しか定めないことでメンバーの積極的な協業を促そうとしている。 すると、メランコリー親和型気質の人は職場のルールに守られることなく、どこまでも仕事を抱え込んでつぶれていく・・・ 対策としては、個々人が、もっと仕事に対して限定的にかかわること、私的な空間や家庭をかえりみよう、と結ばれている。 メランコリー親和型気質、というのは精神医学の言葉。いっぽう、「日本の職場」を分析した部分では、経営学者らしく、職場についての先行研究を豊富に引用して分析してあった。一見関係なさそうな精神医学と経営学を融合して、本を一冊つむぎだすことができるんだな!と、かなり感心。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年07月27日 09時41分12秒
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