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カテゴリ:書評
放送大学で興味深い社会学の授業をしている先生の本。薄い新書なので楽に読めると思ったら、内容が濃くてずいぶん時間がかかってしまった。非常に良書だったと思う。
若者がなかなか親の家を出ず、結婚もせず、経済的にも社会的にも自立しないという現象を、社会経済的、心理的背景から解き明かしている。それも非常に納得性の高い記述が多い。 内容が濃いのでごく一部の要約しかできないけれども、たとえば晩婚化には、なかなか解消しない企業社会における男性中心主義が影を落としているという。長く働き続けても女性の地位も賃金も上がっていかないし、子供を持ちながら働くための社会的インフラも貧弱である。だから結婚して子供を持ったら女性は仕事をやめ、夫の収入に依存せざるをえない。すると、結婚したら夫だけの経済力で子供を産み育てなければならないという経済的プレッシャーから、男女ともに結婚に踏み切れない。むしろ親と暮らしていたほうが楽だ、ということになってしまうのだ。そして、この男性中心主義の結果、能力もやる気もある大多数の女性が、社会で活躍する場面を奪われ、消費や趣味の世界に追い込まれているという。もったいない話である。 莫大な教育費が親の負担としてかかっている現状も、若者の自立を妨げているという。EU諸国では、授業料減免や高い水準の奨学金を使って、学生が自分の負担で、熱心に授業に取り組んでいるらしい。超一流といわれる大学をいちおう出ている僕の実感としても、日本の大学生はあまりにも勉強しない。費用を親が出していることと無関係ではあるまい。いい成績を修めないと奨学金がもらえないようなシステムだったら、今以上に大学生は勉強するようになるだろう。莫大な費用を親が負担し、その結果当の学生がぜんぜん勉強しないのでは、壮大な社会的ムダである。日本ももっと奨学金制度を充実させて、学生が自分の負担で学ぶようにしたらいい。著者の主張に全面的に賛成だ。 ここのところ我ながら非常に読書量が増えている。疲れないように気をつけよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2005年07月27日 09時40分57秒
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