カテゴリ:音楽関係
この前はマンドチェロのことを少し書きましたがその後も夜毎あれこれと検索しては調べていて大いに認識違いをしていることが判ったのです。ほんとうはただ自分のための覚書で充分なのですが、マンドチェロについてのまとまった日本語の資料はいまのところあまり見当たらないようなのでいつかどなたかの役に立つかも知れないとも思いここにまとめておきます。
まず最初に、20年以上も執着してきたマンドチェロのことを今さらどうして騒ぎ立てているのかということから書きます。実は最近マンドチェロを手に入れることが出来そうな機会が相次いで二度もあったのです。しかし一方は取引交渉の面で、もう一方は価格の面で折り合いが付かず見送ることになったのです。まあそれでも楽器自体が非の打ち所も無いようなものであったとしたら相当なところまで目をつむったような気はしますが、楽器のコンディションや作りにも少し引っ掛かる点もあったのであえて見送ったというのが本当です。これほど思い入れている以上はこの際とことん満足のゆくものが欲しいというのが人情です。 先日書いたとおりに自分はマンドチェロなど現在ではほとんど使われもしないし作るひとも少ないのではないかと思っていました。制作家の方に特別に注文して作ってもらうことも考えましたがそれだってまとまったお金が必要です。それでどうせなら自分で作ってしまおうかという気になって、マンドチェロ自体の情報はほとんど見当たらないのでギターやマンドリンの製作関係のことをこつこつと調べていたのです。 今ではインターネットでそれなりの情報を見付けることも出来ますし、アメリカではビデオや本なども手に入るようです。実際に資料も充実しているマンドリンなどを手始めに試してみて経験を積めば、マンドチェロは極論すればギターサイズの大きなマンドリンそのものですから不器用な自分でも簡単なことではないとしてもそれでもなんとか作ることも出来ない訳ではないという気がします。 それで最初は日本語で書かれた楽器製作などに関するページを探して読んでいたのですが、やはりその先の資料に当たるとなると海外のサイトを見なくてはなりません。出来ない英語のサイトを沢山探して苦労して読んでみれば、さすがにマンドチェロは無理ですがマンドリンやギターならば本や工程を説明するビデオなどさえ手に入ることが判りました。楽器のための用材はもちろんのこと、アメリカはDIYの盛んな国だけあって半製品を集めた制作キットさえあるのでこれから手を付ければ複雑な曲線の多いマンドリンの構造も理解出来ます。最初は手持ちの国産マンドリンをばらして勉強しようかと思いましたが、しっかり学ぶにはどこか誤魔化し事の多そうなこれよりはこの本格的なキットのほうがさらに有用のような気がしますし、マンドリンが一本手に入るというのもこれはこれで魅力的です。 マンドチェロにしてもマンドリンにしても基本的なかたちは1920年代にGibson社によって作られたいかにもアールヌーボー調のものが今日の基準となっています。しばらくは話をマンドリンに絞りますがGibson自体も少しづつモデルチェンジをしていますし、多くのメーカーや作者もいろいろと作る中でヴァリエーションが産まれてはいます。マンドリンが主に使われるブルーグラス関係の音楽家がその始祖であるビル・モンロー氏の使っていたGibsonの1923製のモデルF5のサウンドを標準として受け入れたためにこのような現状がある訳です。 先に述べた自分のマンドリンはおそらく1970年代の国産で、本物の良い時代のGibsonをよく知らないままで写真かなにかから想像して作り上げたようなものす。安物のギターなどはベニア合板を張り合わせたようなものも少なくないので、それらからすると楽器の呈をなさないというような粗悪なものではありませんが厳しく言うならば様々な品物にもよくあるアジア製のちゃちなコピーものというようなものでもあり、作りも音も満足のゆくものではありません。 しかしこのようなおおまかにいえば同じかたちをしたF5スタイルのマンドリンがどうしてそれぞれ違う音色がするかといえば、それは用材の質と作りの正しさ以外には無いのです。 最初に材について言いますと例えば同じ大きさの、あるいは同じ重さでもいいのですが鉄の板と木の板を指先でこつこつと叩けば違う音がします。これは欅の板と杉の板で試してもやはり同じことで、材料にはそれぞれ固有の音があるということです。その振動数が音程を決めて、音色は素材固有の倍音成分の違いです。一枚板と合板や、生の木とよく乾いた木、あるいは正目と板目などそれぞれの条件によって響く音は違ってきます。マンドリンの音は弾いた弦の振動で木全体が共鳴し増幅されて出てくるものですから適切な素材が適切なマンドリンの音の条件である訳です。 次に構造です。一例をあげれば空のガラスコップを爪先で弾いて響く音は、その中に少しづつ水を入れてその容積を変えてやることによって音が変ってきます。このようにマンドリンの音域をより正しく響かすにはやはり適切な楽器の容積が決まってきます。また容積だけではなく楽器の部分それぞれによる板の使い分けなども大切なのは言うまでもありません。弦の響きはブリッジという部品によってボディーに伝わります。ここはいちばん堅い木である黒檀が使われており、ブリッジがまずは前面の柔らかい針葉樹系の板を響かせ、そしてこの振動を受けてこちらはやや堅い楓の木などが使われた裏板が音を跳ね返して前に音を出す訳です。板自体の厚みのバランスも肝心で、8本の強く張られた弦の張力に耐えるだけの充分な強度と同時に弦の振動を大きく増幅する響きのよさが大切なのです。いい楽器とそうでない楽器の違いは材がそれなりのものである以上は後はその適切な処理であって、相応の材料を手に入れるのは無理ではなさそうですから自分が楽器を作るとすれば正しい工作こそが肝になる訳です。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2006.09.02 22:25:15
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