新国立劇場 中劇場で本日千秋楽だった中山優馬 主演『ドリアン・グレイの肖像』を観てきました。
この公演は、大阪、福岡と回り、9月にまた東京に戻ってくる、
しかも各会場2日から長くて一週間という忙しい公演です。
出演者もスタッフさんも大変だろうなあ。
公演に先立ち、原作を読んでおいたので(よろしければ感想はこちら)、内容はバッチリです。
舞台道具はいたってシンプルですが、ドリアンの肖像画が想像以上の大きさでビックリ。
しかも胸像ではなく、ほぼ顔のみで、口をあけて笑っているのも意外でした。
美術館で観るような、ちょっと取り澄ました感じの肖像画を想像していたのですから。
原作でヘンリーとドリアンが散歩する森も、一枚の絵に木が数本描かれていました。
場末のドラッグ酒場や劇場も、肖像画を隠し、小物を置く程度。
大きい劇場での公演にしては、本当にシンプルですが、
その分、肖像画が変化していく様子が全面的に強調されていたように思います。
どうやってあんな変化を出しているのだろうと思ったところ、
プログラムによると「ダブルフェイス・トランスルーセントドロップ」という手法だそう。
継ぎ目のない布地の表と裏から別な絵を描き、証明の当て方で変化を出しているとのこと。
なるほど、凄い効果的な演出でした。
お芝居はといえば、原作を読んで自分なりのキャラクター設定が出来ていたため、
えーこのキャラちょっと違うでしょ、と思うところがありました。
そこは解釈の違いなので構わない。
皆さん熱演されていました。
ただ、申し訳ないのですが、どうしても受け入れがたいシーンもありました。
ここに書くと苦情殺到するかもしれないので(って読者そんなにいないけど)
書きませんけれどね。
また、第2幕は全体的に、話の運びが駆け足になっていました。
シヴィルの弟ジェームズの死に方も原作とは異なって(原作通りだとシーンが増える)いました。
ドリアン:中山優馬
彫りが深く日本人離れした面立ちは、美貌のドリアンにぴったりでした。
若さを前面に出した登場シーンから、己の若さと美しさに目覚め傲慢になっていく。
心ならずも自分が原因となってシヴィルを死に追いやった悔い、
バジルを殺害してしまい、どんどん精神不安定になり退廃的、狂気的になっていく様を
大変熱演されていました。
ヘンリー:徳山秀典
全く存じ上げない方で、一切色眼鏡無しで観ることができたと思います。
長くて皮肉屋で小難しいことばかり言う、技術的に大変な役だと思いますが、
滑舌よく演じられていました。
私が描いているヘンリーよりもずっとエネルギッシュな感じではありました。
ドリアンやバジルに、結構ガンガン押しで行くんですね。
原作を読んで私の中で出来上がっていたヘンリー像は、もっと飄々とした皮肉屋なのです。
大分イメージと違うヘンリーではありましたが、それはそれで面白かった。
バジル:金すんら
この方、劇団四季に長く在籍されていたので、多分何度か観ていると思います。
でも四季での役柄とは大分違うタイプのキャラクターなので、新鮮でした。
あのはっきりと喋る台詞回しは、四季独特のものが出ているのか、
バジルとしての解釈なのかどっち?
この役は原作者のオスカー・ワイルド自身とも思える役で、
芸術を愛しているが為、また私的なドリアンへの愛も含んでいるかのような役。
個人的にはもう少し柔らかい話し方でもいいように思いました。
シヴィル:舞羽美海
待ってました!みみちゃん
宝塚退団後の舞台としては、これまでにも何本か出演されていますが、
残念ながら私は観られなかったので、退団後の生みみちゃん初観劇です。
原作を読んだ時から、この役はみみちゃんにピッタリだ!と思っていました。
天才的女優で、原作では17歳だったはず。
劇中劇でシェークスピア作品のヒロインを幾つも演じていますが、
やっぱり水を得た魚といった感じです。
女優としての芝居をしている時の声音と、初恋を知った17歳のシヴィルの時の声音。
可愛らしら、愛らしさは宝塚時代となんら変わりなく、
且つ舞台育ちの貫禄がありました。
台詞回しの発声が良い。
出番は、ほぼ一幕目だけでしたが、存在感がありました。
ジェームズ:仲田拡輝
この方も全く存じ上げず(ジャニーズJr.とのことですが、私そちら方面疎いので)
真っ新な気持ちからの感想です。
良い意味で裏切られました!
「ストプレをやってみたいと思っていた」とプログラムに書いてありましたが、
発声が良く、舞台向きの方だと思います。
姉思いで、カッとなりやすい性格の若者~中年オヤジまでを好演していました。
久しぶりにみみちゃんを観て、ルンルンの気分で帰ってきました。
この舞台を観て、11月の『ダンス・オブ・ヴァンパイア』が益々楽しみになりました!