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まりことリンリン~♪

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2015.08.25
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昨日、シアタークリエで公演中の『貴婦人の訪問』を観てきました。
詳しい内容はほとんど知らず、HPにあるストーリーのみ読んでおきました。



それによると・・・
億万長者の未亡人となったクレア(涼風真世)が財政破綻寸前の故郷、ギュレン市に戻ってきた。人々は、かつての恋人アルフレッド(山口祐一郎)がクレアに財政援助を頼んでくれることを期待していた。そして、クレアを迎える晩餐会。大々的な市への援助を約束したクレアだったが、多額の寄付金と引き換えにある条件を提示する。それは―「アルフレッドの死」。
クレアの目的は?
そして、家族や友人が、アルフレッドに対して下した決断とは―(東宝HPより)

さて感想。
正直、登場人物の誰一人として、共感できる人がいませんでした。
強いて言えば、最も人間らしい煩悶をしていた校長のクラウスくらいでしょうか。
クレアとアルフレッドの妻マチルデも、部分的には気持ちが理解できるかな。
メインキャストはどなたも実力者ばかりで、一人一人見れば、皆さんハイレベル。
音楽も良いしコーラスも迫力あるのですが、作品としては好きになれない。
何というか、救いがないのですわ。

山口さん演じるアルフレッドについては、残念ながら全く共感できません。
どれだけ自己中心的な奴なんだ!
こんな奴とは絶対に結婚したくないわい!!と思いました。
なんでこんな役・・・って感じ。
財産目当てで雑貨屋の娘マチルデと結婚するため、妊娠中の恋人クレアを捨てる。
それも普通に(普通ってどんな?って聞かないで)捨てるのではなく、
お腹の子の認知を巡って法廷で偽証、しかも友人二人にも偽証させ、
クレアを羞恥のどん底に突き落とす。
更には納屋から突き落とし(ここはクレアとアルフレッドの見解に食い違いあり)、
子どもは流産、クレアは二度と子供が出来ない体になり足も不自由になる。
こんな過去があるにも関わらず、大富豪の未亡人となって何十年ぶりに街へ戻ってきたクレアに、
「僕が愛しているのは昔も今も君だけだ。妻を愛したことはない」
なんてぬけぬけとほざくんですよ。
どういうこと?どの面下げて言うんだい!!って思うじゃないですか。
更に、街の人々の人間性が変わってしまっても、変わらず彼を愛していた妻マチルデが
「私を愛してくれたことは一度もなかったっていうの?」と聞くのに対し、
嘘でもいいから「君もクレアもどちらも愛していた」くらい言えないの?
クレアに対する懺悔の気持ちもあるのかもしれませんが、あまりに思い遣りがないわ。
街から逃げ出そうとする時も、家族はほっぽって自分だけ逃げ出そうとするし。
死を目前に突き付けられ、追い詰められた状況下で、
他人(妻だけど)への思い遣りなんて持てないよ!ってところなんでしょうかね。
いずれにしても、全くいいとこ無しですわ。
アルフレッドに対してはキャラクター設定も納得いきませんでした。
若い頃のアルフレッドは生気に満ち溢れた感じがしましたが、
中年(壮年?)アルフレッドは動作も話し方も全く頼りなく、
どこでこんなキャラに変わったんだろうと思うくらい、同一人物とは思えなかった。
これは演出の問題なのかな。

クレア(涼風真世)は、ドスが効いた声と杖をついて不自由に歩く姿もあって、
アルフレッドより年配にも思えました。
ライトが当たると白髪にも見える金髪~銀髪なヘアのせいもあったかもしれません。
アルフレッドへの恨み憎しみ、でもまだ燻って消えない愛。
アルフレッドにそのまま寄り添ってしまうのか・・・
と思うとグッと頭をもたげて「死んでっ」と復讐神へと変貌。
本当はどうしたかったのか。
アルフレッドを初め、自分を陥れた街の人々に自分を思い出させ、
悔いて跪かせて、泣き縋らせたかったのか。
クレア自身も分からなかったかもしれない?
涼風さんは宝塚男役トップスターでしたが、私のイメージではあまり男男していなかった。
一番印象に残っているのが『ミー&マイガール』のジャッキーだからかもしれない。
でも今回はドスが効いた低い声で、元男役の良さが出ていました。
久々にカッコいい涼風さんを観ました。

アルフレッドの妻マチルデ(春野寿美礼)、こちらも世代は違えど元宝塚男役トップスター。
こちらは元男役ということを全く感じさせない、夫思いの優しい妻でした。
それだけに、最後の審判での変貌ぶりが怖かった。
直前までは普通の恰好だったのが、ついに街の人々のようにリッチなドレスに着替えて登場。
この時点で、彼女の決意が現れています。
しかし、最後の最後に意思表示をする直前の表情が怖い。
にっこりと、優しそうに、嬉しそうに、そして晴れやかに笑うんです。
そして、アルフレッドの有罪に対して、同意の手をピシッと挙げるんです。
最後まで信じていた夫に「一度も愛していたことはない」と突きつけられた真実。
これまでの結婚生活が、全て偽りの幸せだったと宣告を受けた彼女のアルフレッドへ復讐。
狂気のように泣き叫ぶのではなく、にっこり笑って復讐するところが怖い。

市長でありアルフレッドの友人マティアス(今井清隆)、
同じくアルフレッドの友人であり警察署長のゲルハルト(今拓哉)。
この二人は反吐が出るほど最低の男でした。
若き日に、アルフレッドに頼まれて、クレアを陥れる証言をしたのがこの二人。
にも関わらず「もう何十年もたっているんだ、そんなことは忘れているさ」なんて言ってのけ、
アルフレッドに「過去の罪であっても償わなければならない。偽証罪だ」
と言い放ち死に追いやる。
どの舌が言うの、その台詞!!
あなた達二人も全く同じでしょうが、恥を知れ恥を!!

唯一人間らしい判断力と罪悪感を持っていたのが、
アルフレッドの友人で校長のクラウス(石川禅)。
彼だけは、変貌していく街の人たちが間違っていると理解しているんですね。
変わりたくはない、変わってはいけないんだと自分に言い聞かせているけれど、
己も皆と同じ弱い人間で、いずれは悪の心に負けてアルフレッドを追い詰めるであろう。
そうなることが分かるからこそ、苦悩している。
彼が歌う「悪が勝つだろう」が一番共感出来て、素晴らしかった。

といった感じで、すっきりしないのですわ。
カーテンコールではかなりの方がスタンディング・オベーションでしたが、
どうしても私はそこまでの気持ちになれませんでした。

さて、涼風クレアを観ていて、誰かを連想させるなあと感じました。
それは、宝塚前宙組トップスター 凰稀かなめ。
私特に凰稀さんに思い入れはありません。
私のイメージでは、凰稀さんは明ではなく、陰かつ静な美しさの人なのです。
(といっても、トップになってから3作しか観ていない者のイメージですが)
『1789』のアントワネットに決まっているけれど、
そちらよりクレアの方がピッタリ嵌る気がするのです。
勿論、あと20年くらい経ったら・・・ですけれど。





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最終更新日  2015.08.25 22:06:48
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