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カテゴリ:宝塚・観劇・鑑賞etc.
昨日、シアタークリエで公演中の『貴婦人の訪問』を観てきました。
詳しい内容はほとんど知らず、HPにあるストーリーのみ読んでおきました。 それによると・・・ 億万長者の未亡人となったクレア(涼風真世)が財政破綻寸前の故郷、ギュレン市に戻ってきた。人々は、かつての恋人アルフレッド(山口祐一郎)がクレアに財政援助を頼んでくれることを期待していた。そして、クレアを迎える晩餐会。大々的な市への援助を約束したクレアだったが、多額の寄付金と引き換えにある条件を提示する。それは―「アルフレッドの死」。 クレアの目的は? そして、家族や友人が、アルフレッドに対して下した決断とは―(東宝HPより) さて感想。 正直、登場人物の誰一人として、共感できる人がいませんでした。 強いて言えば、最も人間らしい煩悶をしていた校長のクラウスくらいでしょうか。 クレアとアルフレッドの妻マチルデも、部分的には気持ちが理解できるかな。 メインキャストはどなたも実力者ばかりで、一人一人見れば、皆さんハイレベル。 音楽も良いしコーラスも迫力あるのですが、作品としては好きになれない。 何というか、救いがないのですわ。 山口さん演じるアルフレッドについては、残念ながら全く共感できません。 どれだけ自己中心的な奴なんだ! こんな奴とは絶対に結婚したくないわい!!と思いました。 なんでこんな役・・・って感じ。 財産目当てで雑貨屋の娘マチルデと結婚するため、妊娠中の恋人クレアを捨てる。 それも普通に(普通ってどんな?って聞かないで)捨てるのではなく、 お腹の子の認知を巡って法廷で偽証、しかも友人二人にも偽証させ、 クレアを羞恥のどん底に突き落とす。 更には納屋から突き落とし(ここはクレアとアルフレッドの見解に食い違いあり)、 子どもは流産、クレアは二度と子供が出来ない体になり足も不自由になる。 こんな過去があるにも関わらず、大富豪の未亡人となって何十年ぶりに街へ戻ってきたクレアに、 「僕が愛しているのは昔も今も君だけだ。妻を愛したことはない」 なんてぬけぬけとほざくんですよ。 どういうこと?どの面下げて言うんだい!!って思うじゃないですか。 更に、街の人々の人間性が変わってしまっても、変わらず彼を愛していた妻マチルデが 「私を愛してくれたことは一度もなかったっていうの?」と聞くのに対し、 嘘でもいいから「君もクレアもどちらも愛していた」くらい言えないの? クレアに対する懺悔の気持ちもあるのかもしれませんが、あまりに思い遣りがないわ。 街から逃げ出そうとする時も、家族はほっぽって自分だけ逃げ出そうとするし。 死を目前に突き付けられ、追い詰められた状況下で、 他人(妻だけど)への思い遣りなんて持てないよ!ってところなんでしょうかね。 いずれにしても、全くいいとこ無しですわ。 アルフレッドに対してはキャラクター設定も納得いきませんでした。 若い頃のアルフレッドは生気に満ち溢れた感じがしましたが、 中年(壮年?)アルフレッドは動作も話し方も全く頼りなく、 どこでこんなキャラに変わったんだろうと思うくらい、同一人物とは思えなかった。 これは演出の問題なのかな。 クレア(涼風真世)は、ドスが効いた声と杖をついて不自由に歩く姿もあって、 アルフレッドより年配にも思えました。 ライトが当たると白髪にも見える金髪~銀髪なヘアのせいもあったかもしれません。 アルフレッドへの恨み憎しみ、でもまだ燻って消えない愛。 アルフレッドにそのまま寄り添ってしまうのか・・・ と思うとグッと頭をもたげて「死んでっ」と復讐神へと変貌。 本当はどうしたかったのか。 アルフレッドを初め、自分を陥れた街の人々に自分を思い出させ、 悔いて跪かせて、泣き縋らせたかったのか。 クレア自身も分からなかったかもしれない? 涼風さんは宝塚男役トップスターでしたが、私のイメージではあまり男男していなかった。 一番印象に残っているのが『ミー&マイガール』のジャッキーだからかもしれない。 でも今回はドスが効いた低い声で、元男役の良さが出ていました。 久々にカッコいい涼風さんを観ました。 アルフレッドの妻マチルデ(春野寿美礼)、こちらも世代は違えど元宝塚男役トップスター。 こちらは元男役ということを全く感じさせない、夫思いの優しい妻でした。 それだけに、最後の審判での変貌ぶりが怖かった。 直前までは普通の恰好だったのが、ついに街の人々のようにリッチなドレスに着替えて登場。 この時点で、彼女の決意が現れています。 しかし、最後の最後に意思表示をする直前の表情が怖い。 にっこりと、優しそうに、嬉しそうに、そして晴れやかに笑うんです。 そして、アルフレッドの有罪に対して、同意の手をピシッと挙げるんです。 最後まで信じていた夫に「一度も愛していたことはない」と突きつけられた真実。 これまでの結婚生活が、全て偽りの幸せだったと宣告を受けた彼女のアルフレッドへ復讐。 狂気のように泣き叫ぶのではなく、にっこり笑って復讐するところが怖い。 市長でありアルフレッドの友人マティアス(今井清隆)、 同じくアルフレッドの友人であり警察署長のゲルハルト(今拓哉)。 この二人は反吐が出るほど最低の男でした。 若き日に、アルフレッドに頼まれて、クレアを陥れる証言をしたのがこの二人。 にも関わらず「もう何十年もたっているんだ、そんなことは忘れているさ」なんて言ってのけ、 アルフレッドに「過去の罪であっても償わなければならない。偽証罪だ」 と言い放ち死に追いやる。 どの舌が言うの、その台詞!! あなた達二人も全く同じでしょうが、恥を知れ恥を!! 唯一人間らしい判断力と罪悪感を持っていたのが、 アルフレッドの友人で校長のクラウス(石川禅)。 彼だけは、変貌していく街の人たちが間違っていると理解しているんですね。 変わりたくはない、変わってはいけないんだと自分に言い聞かせているけれど、 己も皆と同じ弱い人間で、いずれは悪の心に負けてアルフレッドを追い詰めるであろう。 そうなることが分かるからこそ、苦悩している。 彼が歌う「悪が勝つだろう」が一番共感出来て、素晴らしかった。 といった感じで、すっきりしないのですわ。 カーテンコールではかなりの方がスタンディング・オベーションでしたが、 どうしても私はそこまでの気持ちになれませんでした。 さて、涼風クレアを観ていて、誰かを連想させるなあと感じました。 それは、宝塚前宙組トップスター 凰稀かなめ。 私特に凰稀さんに思い入れはありません。 私のイメージでは、凰稀さんは明ではなく、陰かつ静な美しさの人なのです。 (といっても、トップになってから3作しか観ていない者のイメージですが) 『1789』のアントワネットに決まっているけれど、 そちらよりクレアの方がピッタリ嵌る気がするのです。 勿論、あと20年くらい経ったら・・・ですけれど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015.08.25 22:06:48
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