『傷だらけの果実』読了
【送料無料】傷だらけの果実 [ 新堂冬樹 ]<内容紹介より>黒瀬裕二(33歳)、映画プロデューサー。自らの才能によって若くして芸能界でのしあがった男。ある日、映画のプレ・オーディションの席で会った女優の姿を見て、突如、「あの日の記憶」が蘇るー15年前、「緑」とともに駆け抜けた無茶苦茶な、しかし熱く、激しい、青春の記憶。サークルの新歓コンパの帰り道、新宿の路上で、裕二は大学のクラスメイト・菊池緑に出会った。緑はクラスの女の子に誘われ、初めてコンパとホストクラブに行ったこと、そこでいかに惨めな思いをしたかを切々と語る。それを聞きながら次第にイライラしてきた裕二は言い放つ。「お前、こうありたいって自分になるために、努力しているのかよ!?本気で変わりたいのなら、できるだけ早く、まずは50万を用意しろ。それがスタートだ。約束する。俺が、なりたいお前にしてやるよ」2週間後ー裕二の前に、50万円を握りしめた緑が立っていた。目指すは11月に大学で開催される学園祭のミスコン。そして待ち受ける、衝撃と感動のラスト。構想から3年ー著者が初めて大学を舞台に描いた、青春&狂気の極上エンターテインメント。 この作者の作品は、所謂、黒と白に分かれます。代表作と言われる作品は黒、それも真っ黒黒みたいで、怖くて読んでいないのですが、黒寄りの中途半端な作品はいくつか読んでいます。それでも、私にしたらかなりえげつない人間の嫌な部分をクローズアップしたような登場人物ばかりという印象です。一方、白新堂筆頭は、宝塚で舞台化もされた「忘れ雪」を含む純愛三部作。エロ甘、ご都合主義で読めないという人もいるでしょう、と言うくらいベタです。ちなみに、私は「忘れ雪」以外の二作は割と好きですの。 そんな中で、この作品はどちらとも言えず中途半端かと。普通そんな事まで言わないでしょう。という台詞を吐く(言うではなく、吐くがぴったり)、緑のクラスメイトの女子。裕福な家庭に育ち、両親の愛情を受けて育ってきたにもかかわらず、冴えない容姿の為にこれまで踏みつけられてきた緑は、自分を踏みつけにしてきた人達を見返すために、自分の身体を改造し続ける。緑に自分の姿を重ねるが故に、緑を道具、商品として世に送り出すことに固執する裕二。そこに、緑と裕二の押し隠した恋愛感情がからみあう。緑が整形手術を重ねてでも、綺麗になって周囲を見返そうとするストーリーは、昨年話題になった「ヘルタースケルター」を思い起こさせます。りりこ(ヘルタースケルターの主人公)も、手術後はこんな壮絶な痛みに耐えたのか。著者自身が、映画プロデューサーであることから窺える、今をときめくトップ芸能人達も、こういうプロセスを踏んで今があるのかも。と思えるところが一番説得力があるのかもしれません。でも、そうなると、芸能人を見る眼が変わってくるなぁ。そういった芸能界の裏側を垣間見たい、という方にはお薦め? 宝塚で舞台化された「忘れ雪」ストーリーはイマイチだけど、出演者はカッコイイ 忘れ雪 (DVD)