歌舞伎座二月は「中村屋!」17代目中村勘三郎二十三回忌追善興行
今月の歌舞伎座は当代の勘三郎さんのお父上、17代目中村勘三郎二十三回忌追善興行でギネスにも載った803もの役柄を演じた役者である先代縁の演目がかかっています。18代目が口上でも言った通り、幅広い役をこなしたからこそ、ひと月の公演をバラエティに富んだ演目で飾ることができたわけです。これは先代はもとより、それを今演じてみせる当代もどちらとも素晴らしいからに他なりません。2階のロビーには先代の舞台写真がたくさん飾られていました。17代目の写真を見ながら、ついつい、あ、これは勧九郎さんで観た!あ、これは勘太郎君で観たわ、なんて見方になっちゃう。「檻」は変わった題名で、観たこともないんだけど、中村屋さんの本を読んでいると、しばしば登場するので一番興味アリ。最後の舞台となった「俊寛」、そして、下駄タップの「高坏(たかつき)」当代勘三郎さんは勘太郎君にソックリだと思ったら、この「俊寛」で共演した時の勧九郎さんは七之助君に似てるんで、またビックリ!親子なので当たり前といえば、当たり前ですが…これはお嬢さんの波乃久里子さんと「爪王」を演じた時のもの。今回の「爪王」では久里子さんが演じた鷹の役を七之助さんが演じます。以前、「私の役をみんな取っちゃうのね」とにらまれたって話を思い出しました。「あ、まただわ」ってまたオカンムリ(心では嬉しくてもね)かしらと写真を見ながら(*^-^)胡蝶蘭もたくさん飾ってありました。緑が珍しいな!と思ったら笑福亭鶴瓶さんからでした。今日はウレシイことに最前列、3階だけどね。お値段と観え方のバランスから言ったら、(コスパ)いちばん良い席です!ちなみに1階、2階は最前列からけっこう後ろのほうまでも20000円。その後ろの数列が15000円です。3階は前の方が6000円。さらにその後ろが3000円ってな具合。さて、七之助君が鷹を彌十郎さんが鷹匠を演じる「爪王」作物を荒らす悪い狐を退治すべく戦いを挑み、最初は敗れるのもの二度目の挑戦を仕掛けるという物語を舞踊にしています。どんなふうに?どちらかというと舞踊の時間は身が入らない私ですが、鷹の七之助君、赤狐の勘太郎君ともども見応えアリ!浅草の「将門」の二人は、イマイチだったんだけど、(私にとってはね)これを観たら、やっぱり二人は力があるなって思いました。幕が開いて、白い着物の美しい娘の七君をみて、今まで鷹匠と鷹に抱いていたイメージがガラリと変わってしまっった。ヤンチャ坊主と厳しいお父さんのように思っていたけれど、プライドが高い美しい娘と名コーチのように見えた。他の人の言うことは聞かないけれど、尊敬するコーチの言うことなら、って。彌十郎さんの優しい声はいつもながら大好きですが、鷹を慈しんで育てている様子がとってもいいです。これは「豆まき」の日にご覧になったお友達も「慈愛に満ちた鷹匠です。」とメールをくれました。鷹の足が可愛いの。人と違うのを踊りで見せるのって難しいと思うけど魅せてくれました。そして戦いのシーン。スッポンに勘太郎君が飛び込むところを目の当たりにしたかと思えば、(ありがたいことに最前列はちょこっと覗き込むだけでスッポンのところまで見える。もちろん、うしろの人の迷惑を考えて一瞬だけにして、すぐ背中を背もたれに戻すけどね)舞台奥では七君の鷹「吹雪」が落ちた!この二人は若さと巧さで、こういう時もちっとも減速しないでバン!って思いっきりがよくて気持ちいい!理屈じゃなくて、観ていて快感です。平成中村座の「忠臣蔵」の殺陣でも感じたけれど、兄弟だからかしら、スピード感と呼吸は物心つく前から一緒に舞台に立っている人の強みなのかな。鷹匠に頼みに来る庄屋さんの錦之助さん。1月の切られ与三の時は鳶頭の金五郎、涼しげな二枚目と思っていたけれど実(じつ)のある人がピッタリだなってウレシイ発見です。想像以上だった「爪王」一つ文句を言わせてもらえば、赤狐だから勘太郎君、白じゃなくて赤い着物が良かったのに…朝一番の演目にふさわしく、これで目も頭もシャキ!さ、楽しみにしてた勘三郎さんの「俊寛」終わって廊下に出たら「幸四郎より地味だったわね」の声が聞こえた。幸四郎さんは幸四郎さんで良かったけれど、私は勘三郎さんの「俊寛」好きだな。「俊寛」の本来のイメージからすると幸四郎さんが合ってると思うけど。僧でありながら、傲慢な人だと書かれているそういう猛々しさは幸四郎さんのほうがね。勘三郎さんのは、鬼界ヶ島に流されているうちに、都での暮らしぶりを悔いて、変わっていったような今こそ仏に仕える身、って風な静さ、深さがいいなー。「末来で!」は心して聞きましたよ。先代から当代へのメッセージだった思い入れのある言葉なので。お昼は、ダッシュして、ロビーの辰之助さんの写真の前へ。そこで、食べるのが常ですが、今月は、その下の写真、十七代目に注目しなくちゃね。このメガネのお写真、久里子さんに「役者らしくない」と言われたので「久里子が言うなら撮り直そう」とおっしゃったそうです。そうして、代わりのメガネを必死で選んでいると、今度は久里子さんが「これいい写真じゃない。これでいいわよ。お葬式に使えるし」ということで撮り直さなかったという逸話が「中村屋三代記 小日向の家」に載ってます。ここだけ抜き書きすると、波乃久里子さん、タダのわがままに見えちゃうかな。ちゃんと読んでいただくと、父と娘の絆を感じる個所、多々。長くなったので「口上」「ぢいさん ばあさん」は、またの機会に。1階、ロビーに名題昇進の写真があったので、近寄って見たら澤村國久さん。おお、名古屋の平成中村座、試演会の時浮世又平の女房おとくを熱演していた、あのお方!おめでとうございます!あの時は優しげな女房だったけど、ご本人はキリリ男前!ああ、もうあとわずかの 歌舞伎座です。