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好奇心は放浪中!

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2006年11月13日
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オケとベートーヴェンの話を書きかけていたのですが、先日本屋で面白いNHKのテキストを購入し、その放映が今日の夜だというので、ご紹介を兼ねて差し替えることにしました。
その番組とは、教育テレビの月曜日午後10:25-10:50で放映されている「知るを楽しむ」というシリーズで、10月と11月のテーマは「ギョッとする江戸の絵画」になります。タイトルからしてユニークですね^-^

ココで気付いた方もいらっしゃると思いますが、10月からスタートしていたので、実はもう残り3回しかないのです。テキストを読みながら、「あ~、もっと早く気がついていれば良かった~!」と後悔したものの、まだ3回は見れるので今日からはしっかり録画しておく予定。
興味を持たれた方はぜひぜひごらん下さい。また、テキストも発売中ですので、まずは店頭で試し読み(または立ち読みとも言うですな^ ^;)されてはいかがでしょうか。

テキストの表紙はコチラです。表紙からしておどろおどろしいですよねえ。

この人この世界(2006年10月ー11月)


先生は美術史家の辻惟雄という方で、以前から型破りでアバンギャルド(前衛)な芸術家に興味を持たれていたらしく、『奇想の系譜』(1669年)という本の中でもすでに伊藤若冲などを取り上げて、高く評価していたそうです。その時はあまり反応がなかったそうでしたが、今や若冲は大人気の画家ですから、時代が変わったのか先生に先見の明があったのか、その両方かもしれませんね。


さて、辻さんは全8回のシリーズで、以下の江戸時代の画家をクローズアップしています。

第1回 血染めの衝撃~岩佐又兵衛(1578~1650)

スゴイです、のっけから”血染め”ときました。巻頭のカラーページの絵、「山中常盤物語絵巻」には確かに、地面を血に染めて絶命している侍女、白い胸からとめどなく血を流し(その血は着物に伝わり床にまであふれています)、苦悩にあえぐ常盤御前(源義経の母)。絵とはいえ、容赦のないその描写には確かに「ギョッ」と思考停止させられるものがあります。
本物を目にした辻さんたちは、「弁当の握り飯にサケの切り身が入っていて、その赤い身が『山中常盤』の場面を連想させて、のどを通らなかったほど」だったそうですから、ナマの衝撃ははるかにすさまじいのでしょう。見たいような、見たくないような……。いや正直いって、見たくない気持ちの方が強いかなあ^ ^;牛若(義経のこと)が母の仇を取るシーンでは、もう残虐ゲームも真っ青の殺しっぷり。血のにおいまでただよってきそうな感じ……。

しかしこの”血染めの衝撃”にはちゃんと土台があるのです。
作者の岩佐又兵衛という人は、織田信長に仕えていた荒木村重の子として生まれましたが、のちにお父さんが信長に逆らったため、一族郎党や近親者など多くの者が見せしめとして殺されてしまいました。その中で、幼子の又兵衛は乳母に助けられて生き延びたと言いますから、人生のスタート地点ですでに彼は、血の記憶と結び付けられてしまった感があります。

戦国時代の血なまぐさい強烈な記憶と、江戸時代の到来がもたらした絵画の新しい世界は、又兵衛の絵に多様性とリアリティーを与え、今も人々を「ギョッ」とさせる原動力になっているんでしょうね~。


第2回 身もだえする巨木~狩野山雪(1590~1651)

せっかくでかい樹を襖いっぱいに描いているのに、全然伸びやかじゃない……「老梅図襖絵」を一見して浮かんだ感想です。何せ木の曲がり方がハンパじゃない。直角、直角、また直角、細い枝になっても飽きずに直角。まさに「身もだえ」している感じ。
家に飾れることになっても、そのあまりの窮屈さ、不自然さに気詰まりしてしまいそうです。
あと、テキストをごらんになる際には、ぜひ37ページの「寒山拾得図(かんざんじつとくず」を開いていただきたいですね~。二人の男(?)の、これ以上ないという位の気味悪い笑顔は、忘れようたって忘れられません。
かりに1億円もらって引き取ってくれと言われても(もちろん絶対に言われないけど^ ^;)、ダッシュして逃げますね、うん!


第3回 「自己流」の迫力~白隠(1685~1768)

本職禅僧、副業絵描き…というワケではありませんが、禅の道に日々まい進しつつ、自由奔放な楽しい絵をたくさん残している”禅の中興の祖”の白隠さんです。今風に言えば「ヘタウマ」ってところでしょうか?
特に達磨さんの絵は、色んなバリエーションがありながらも、結局は目玉がぎょろりとしたオモロイ顔になっているのが何か微笑ましいです。頭でっかちの観音さんも、これまた可愛いんですよねえ。これは欲しいな。


第4回 奇想天外の仙人たち~曾我蕭白(1730~1781)

こちらの「群仙図屏風」、めでたく(?)「家にゼッタイ置いておきたくない絵」ナンバー1に輝きました。じゃあさっきの山雪の「寒山拾得図(かんざんじつとくず」はええんかい?と聞かれたら、言葉に詰まりますが……究極の選択をすれば、まだ「寒山~」の方がマシと答えておきます^ ^;
何せグロいです。さらには悪趣味です。美女はいるものの、西王母にいたっては目が中央に寄っちゃって、どこ見てるのか分からない。うつろな目で怖いです。ご本人自体気持ち悪い蝦蟇(がま)仙人は、背後に白い爬虫類みたいな生き物を背負いながら、なぜか美女に耳かきしてもらってます。ワケが分かりません。子どもに囲まれている(しかもこの子どももビミョーに可愛くない…)隠者さんは、着物の胸元が破れたようにはだけているにも構いなし、すっごくアブナイ人にしか見えません。
これは布団に入りながら読んでいましたが、そのまま枕元に置いていたらきっと悪夢を見そうだったので、仕方なく別室に片付けました。それ位整合性のまったくない、摩訶不思議な絵です。


第5回 絵にしか描けない美しさ~伊藤若冲

浦島太郎の歌に、「絵にも描けない美しさ♪」という一節がありましたが、若冲の場合は、絵にしか描けない美しさ、つまり写実するだけでは表現しきれない独特の美があふれているそうです。
辻さんは、「実在の物以上に不思議な美しさをもって我々の目の前に迫ってくるこの世ならざる美の世界、いわば写実と幻想が織りなす不思議な世界」と述べられていて、その素晴らしさ、不思議さをあらためて実感しました。
しかし一方で若冲は、洒脱でユーモアあふれる絵も残しておりまして、今回のテキストではそれが見れたのも嬉しかったです♪それにしても返す返す惜しいのは、テレビでこうした絵を見たかったなあ……テキストじゃ白黒なのも多いんですよね。


ではココからが、今日以降の放送予定になります。

第6回 猛獣戯画~長沢蘆雪(11月13日)

第7回 天才は爆発する~葛飾北斎(11月20日)

第8回 機知+滑稽・風刺の心~歌川国芳(11月27日)



中でも葛飾北斎の爆発するような絵には笑えました。辻さんのおっしゃる通り、この爆発の感じってギャグマンガを連想させます。北斎サイコー!


では今回はこれにて★







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最終更新日  2006年11月13日 12時14分46秒
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