キモノで観劇・感激日記

新国立劇場で新演出Verの「トゥーランドット」を観る。新国立劇場2008年シーズン幕開けである♪

今回の演出では、前奏曲の前に、無言のプロローグとして、プッチーニ夫妻と召使の少女のフェスタでの様子が描かれている。

幕が開き、濃霧に覆われた舞台が晴れてくると、人々が現れ1920年代の祭りの広場に代わっていく。そして、狂言回しのピエロが３人現れ、人々に仮面を渡すと、夫婦はトゥーランドットとカラフに、召使の少女はリューに変身し、音楽が始まるのである。

町のフェスタにやってきた中国の仮面劇の一座が「トゥーランドット」を上演するといった趣ではじまる舞台は、どこかで観た風景・・・そう、オペラ「道化師」の世界のような雰囲気である。

プッチーニ最後の未完の大作である「トゥーランドット」は、彼が作曲したのが、３幕でリューが自害し、悲しみに包まれつつ静かに音楽を閉じるところまでで、結末にこだわったのか、果たして完成させることをプッチーニの心が拒んだのか彼の遺作となった。　　

ミラノ・スカラ座での初日に、プッチーニの親友でもあったトスカニーニは、「彼が、残したのはここまで」と言って、リューの死で指揮棒を置いたそうである。

現在は、弟子のアルファーノによる補足版により、華々しいはっぴぃエンドのフィナーレがつくようになったが、たまにリューの死で終わるバージョンも上演されることがある。

わたしのこだわりとしては、
１幕の最後、カラフがトゥーランドットと叫び、銅鑼を叩く場面は、絶対、カラフに叩いてほしいと思ったら叩いてくれたので、よかった。（実は、カラフが叩かない演出も何度か観たことがある）。
　
２幕目は、山車に乗って現れたトゥーランドット役のテオリンの好演によって、舞台が一挙に面白くなった。カラフとの謎ときから幕切れまで、二人の緊張感が客席にも伝わり、今まで観た中で、もっとも質素な宮殿場面でありながら、魅力的であったのは、テオリンの力によるところが大である。

３幕は有名なカラフの「誰も寝てはならぬ」で盛り上がり、リューの悲劇の運命のアリア「氷のような姫君」になるのだが、リューの浜田理恵は、楚々とした中に、カラフへの溢れるような情熱が押さえこまれ過ぎていていささか淡白なのが惜しまれた。

リューは、プッチーニの嫉妬深い妻にあらぬ疑いを掛けられ、スキャンダルの中で、自殺した十代の小間使いをモデルにしたそうである。演出的には、劇中劇の形態をとっているため、リューの死のところで劇中劇が終わり、その後のつながりに欠けるところが、ちょっと分かりづらかったかも知れない。
しかしながら、オペラ「トゥーランドット」は、何度聴いても、どんな演出でも傑作という名に値するすばらしさがる。

そして、オケの豊かな強弱と迫力、合唱団のすばらしさは、この作品に花を添えて、聴く者を圧倒していく・・観劇・感激！

トゥーランドット：イレーネ・テオリン
カラフ：ヴァルテル・フラッカーロ
リュー：浜田 理恵　　　　　　　　　　　　
ティムール：妻屋 秀和
皇帝アルトゥム：五郎部俊朗　　　　　　
ピン：萩原　潤
パン：経種 廉彦　　　　　　　　　　　
ポン：小貫 岩夫
官吏：青山　貴　　　　　　　　　　　　
マイム：ジーン・メニング

【作　曲】ジャコモ・プッチーニ　※フランコ・アルファーノが補筆
【台　本】ジュゼッペ・アダーミ＆レナート・シモーニ

【指　揮】アントネッロ・アッレマンディ
【演　出】ヘニング・ブロックハウス
【美術・衣裳】エツィオ・トフォルッティ
【照　明】ヘニング・ブロックハウス
【舞台監督】大澤　裕

【芸術監督】若杉　弘


本日のきもの：暑かったので胴抜きの染め絞り紬訪問着。帯は、この紬に毎度お馴染みの紅葉の袋帯、半衿も毎年同じで、この時期のコーディネートである。ということで、一昨年のアルバムより。