物わかりのいい野党などいらない
民主党代表選について。最後に長妻さんについても触れておこう。代表選で3位に終わった長妻さんだが、やはり代表選に出るということ自体、政治家としての序列を高めることになる。岡田新体制での「代表代行」の座を得た。岡田新代表が長妻さんを起用したのは、党内左派取り込みのためだ。「二度目の代表」岡田さんのしたたかさなのだろう。だが、長妻さんには、それはそれで重要な役割がある。長妻さんには、かつて「消えた年金」問題で第一次安倍内閣を追い詰めた「野党としての攻撃力」を復活させてほしいのだ。安倍政権になってから、野党が大人しくなっている。それは、議席が激減して「自民一強」となったからだけではない。野党のほとんどが政権担当経験を持ち、政権運営の現実の厳しさを知ってしまったために、「なんでも反対」と言いにくくなったこともある。しかし、現実を知ったから政府・与党への攻撃が鈍るというのは、次元が低い。政権交代が何度も起こって、政権担当の経験も豊富な英国の野党は、徹底的に政府を批判する。基本的に二大政党制の英国議会では、与党が常に過半数を持っているので、法律をすべて通せる。だから、与野党が法案を巡って「妥協」することはない。野党は、裏交渉での妥協を狙わない。表舞台の議会で徹底的に与党を批判して次の選挙に勝ち政権を取ることで、政策を実現しようとする。日本ではなかなか根付かない首相と野党党首による「党首討論」も毎週水曜日に必ず行われる。そこで首相を論破しようと、徹底的に政策を検証し、問題点を追求しようとする積み重ねが、政策立案能力を鍛えることになり、野党の政権への道となっている。私は、政府与党に是々非々で対応する「責任ある野党」という言葉が好きではない。甘えにしか聞こえないからだ。野党は徹底的に反対するのが仕事だ。政府・与党の政策を徹底的に検証して、問題点を追及し続けることが、現実的な政策立案の第一歩である。「物わかりのいい野党」などいらない。レベルの高い批判能力を磨くことが、野党の役割であり、それが将来政権を担うことにもつながる。そして、それは長妻氏の役割であろうと思う。それでは、またね。