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テーマ:お勧めの本(7403)
カテゴリ:本
子供の頃、アメリカが憧れの対象だった。ハリウッド、西海岸、フリスビー、スケートボードまた東海岸、ニューヨーク、ソーホー、ヤンキース、マジソンスクエアガーデン・・・その中でもアメリカの象徴のような写真紙「LIFE」があった。当時一ヶ月以内だと返品出来るキャンペーンをしていた「Best of LIFE」を見つけて早速注文した。届いた分厚く大きな本を開いてアメリカを味わった。その中で目を惹いたものの中に日本人の学生が社会党の委員長をさした瞬間があった。
カシアス内藤を追ったドキュメンタリーの「一瞬の夏」がらみで沢木耕太郎の他の作品を探してる時に「テロルの決算」がその事を題材にしてると知った時に心の中にかすかに残ってた写真が飛び出してきた。突進された衝撃でめがねがずり落ちて両手で諌めようとするしぐさをとる恰幅のいい男に学生服にウインドブレーカーを着て左手で水平に定めた短刀でもういちど刺そうとする右翼青年。 そのころ労働者の権利獲得しようとデモやストライキの頻発する時代だった。今にも日本も社会主義・共産主義者たちの革命が起こるような雰囲気があった。純粋な礼儀正しい優しい青年「山口二矢(おとや)」は左寄りになる国を憂う気持ちから右翼の行動隊として活躍していた。口先ばかりの右翼連中に失望し一人で行動を起こす。青年は純粋さからゆえ物事の一面からしか理解出来ていなかった。 命を奪われた社会党委員長「浅沼稲次郎」は、本来人に恨まれるひとではない。人間機関車と呼ばれ「沼さん」の愛称で呼ばれた。さほど理論家でない彼は自分の体や生活を省みず、世の中を良くする為に同行の記者さえ根をあげる様な連日の演説行脚を続ける。浅沼自身は大衆の中で戦うことが至福の日々だった。本人の意思とはかけ離れ右派と左派の確執に翻弄されながら党の書記長を続けて行く内その人柄、ひたむきさからなくてはならない存在に変わっていく。2度目の中国訪問の発言「米帝国主義は日中共通の敵」発言により中国で評価を得、大歓迎を受ける。その事が国内のマスコミ、右翼の批判の大合唱に晒される。本人の真意は素朴に「世の中を良くする為」であり、心ならずも協力し中国の民衆に被害を与えた戦争の反省からだった。本来の意図からはなれ事が一人歩きする。右翼にとって今まで社会党員にしては近い存在だった浅沼が裏切り者に写るようになる。右翼の連中からの打倒するなら社会党だ、叩くのなら浅沼だの声、一面しか見切れない二矢がいた。周りの者は口には出すが本当に叩かなければならないとは思ってなかった。とはいえ二矢も数人に絞った中で誰でも良かった。二矢の家ではたまたま長年とってた新聞をたまたま毎日に代えていた。そして毎日新聞にのみその三党首演説会の告知があった。決行日が決まった。二矢は当日たまたま用事が出来、演説会の時間に遅れた。遅れたことで面通しのための公安の連中はすでに会場内に入っていた。また公安の注意は既に入場していた右翼団体に注がれており、既に2回構成員が壇上に乱入しビラを配り取り押さえられていた。そのため警備の陣形が崩れた。警備の連中の心にまたビラまきかと隙が出来た。背広を新しくしたためいつもなら浅沼自身を刃物から防いだであろう分厚い手帳がその日はなかった。偶然がたまたま重なり合ってその事件へとどんどん道を拓いていく。まるでそのテロが必然の事のように・・・ 短くまとめようもないくらい細かく調べ上げてある。係わった人々の一行一行のコメントから山口二矢、浅沼稲次郎という人物を浮かびあがらせている。長い時間をかけて書上げただけのことはある。人それぞれの人生があり人に影響を受け、与え、複雑に道を辿って一つ所で交わった。心に残る一冊だ。 「LIFE」が届いて中に写ってるアメリカに興奮していたがその当時自分で払える金額ではなく泣く泣く一ヶ月以内に返品した。今考えるとひどい子供だ(^^ゞ 10年ぐらい前たまたま探してた本の隣に見つけて英語版を手に入れた。 で今そのページを開いてる。不思議な縁だ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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