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鏡の国の落としあな

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2008.10.21
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カテゴリ:日本の古典文学

中学だか、高校の国語の授業で、習った古典文学に、伊勢物語というのがありました。そのなかの筒井筒というのは、みなさんも習ったことあると、おもいます。

この話は能楽のなかにも、井筒という題でとられています。

以下、雰囲気を壊さないために、原文のまま書きますね。

 

 昔、田舎わたらひしける人の子ども、井のもとにいでて遊びけるを、おとなになりにければ、
男も女も恥ぢかはしてありけれど、男はこの女をこそ得めと思う。
女はこの男をと思ひつつ、親のあはすれども、聞かでなむありける。さて、この隣の男のもとより、かくなむ、

  筒井筒 井筒にかけし まろがたけ 過ぎにけらしな 妹見ざるまに

女、返し、

  くらべこし 振り分け髪も 肩過ぎぬ 君ならずして たれかあぐべき

など言ひ言ひて、つひに本意のごとくあひにけり。
 さて、年ごろ経るほどに、女、親なく、たよりなくなるままに、もろともにいふかひなくてあらむやはとて、
河内の国高安の郡に、いき通ふ所いできにけり。
さりけれど、このもとの女、あしと思へるけしきもなくて、いだしやりければ、
男、異心ありてかかるにやあらむと、思ひ疑ひて、前栽の中に隠れゐて、河内へいぬる顔にて見れば、
この女、いとよう化粧じて、うちながめて、

  風吹けば 沖つ白波 たつた山 夜半にや君が ひとり越ゆらむ

とよみけるを聞きて、限りなくかなしと思ひて、河内へもいかずなりにけり。
 まれまれかの高安に来てみれば、初めこそ心にくくもつくりけれ、
今はうちとけて、手づからいひがひ取りて、笥子のうつはものに盛りけるを見て、
心うがりていかずなりにけり。さりければ、かの女、大和の方を見やりて、

  君があたり 見つつを居らむ 生駒山 雲な隠しそ 雨は降るとも

と言ひて見いだすに、からうじて、大和人、「来む。」と言へり。喜びて待つに、たびたび過ぎぬれば、

  君来むと 言ひし夜ごとに 過ぎぬれば 頼まぬものの 恋ひつつぞ経る

と言ひけれど、男住まずなりにけり。

 

ノートかなり大ざっぱなあらすじえんぴつ

幼馴染の二人が年頃になって、相思相愛で男のほうからプロポーズし、結婚します。

女のほうは、そのうち両親に死なれてしまい、貧乏になってしまったので、男のほうは、この女と貧乏暮らしをするのはイヤだ、と他に通いどころができてしまいます。

さて、男がその別の女のところへ通おうとすると、妻は不審がる様子もなく送りだすので、男は妻は浮気をしてるのではないかと疑い、隠れて様子をみます。

妻は化粧口紅をし、しみじみと、夫の身を案じる歌を詠みます。それを聞いて、妻をいとおしく思った男は、河内の女のところへは出かけないで、残ります。

いっぽう、河内の女はうちとけて馴れ馴れしくなったからと、男は嫌がり、女のほうから何度も、あなたを待ってるわ~という歌をよこされるのですが、そのうち行くから、といういい加減な返事をします。

私はあなたをそれでも待ってるわ~という健気な歌涙ぽろりを女はよこすのですが、結局男はこの河内の女を捨ててしまいます。

・・・・・という話ですが、

      これを初めて読んだ、当時10代の私は怒りまくり怒ってる爆弾

当時の時代背景でいけば、男が女のもとへ通う、通い婚、妻の両親が娘の夫の生活の面倒をみてたのです。だから両親を失くした女、というものは、ヒジョウにあわれです。

今ならそういうときこそ、夫が妻の面倒を・・・ですが、当時は違うのですね。後宮に入った女御が、親をなくすと後ろ盾をなくすことになり、羽をもがれた鳥同然だったというわけですから(例えば、中宮定子)。

その昔、娘の親は婿の靴を抱いて寝た、というくらいですから。(なるべく自分の娘のもとにとどまって欲しい、という願いから)

現代の感覚でいけば、この男、甲斐性も責任感もなくヒジョウに情けない、加えて自分勝手。こんな情けない男に振り回される女2人は、かなりミジメどくろ

私は今の時代に生まれ育った人間なので、この話を読んだ時は、腹が立ったのを覚えてます。

でも当時はこれが普通だったのだ、というのなら、本当、私は今の時代に生まれててよかった~うっしっし雫

一夫多妻制のためにツライ思いをした女性で有名なのは、

       嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は

            いかに久しき ものとかは知る

という歌を詠んだ、蜻蛉日記の作者、右大将道綱の母。

逆に妻が多くの恋を繰り返すために(男がするのはよくても、女がするのはイカンということかいムカッ)、離婚に至ったケースもあるんですけど(和泉式部)。

最後にその和泉式部の歌を百人一首に出てない歌のなかから、一首、紹介します。

 

         夢にだにみであかしつる暁の

            恋こそ恋のかぎりなりけれ






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Last updated  2008.10.21 19:52:17



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