国外退去処分が確定した群馬県高崎市のイラン人、アミネ・カリルさん(43)一家は26日、ただひとり残留が認められた長女マリアムさん(18)を残し、イランに帰国する。マリアムさんは保育士になるという夢の実現に向けて短大に通い始めた。一家は25日、娘が暮らす部屋で最後の夜を過ごした。
自宅で荷物整理を済ませたアミネさんは「初めて来たとき、景色のきれいなところだと思った。大好きな高崎を離れるのはつらい」と語った。
アミネさんは90年5月に短期滞在ビザで入国し、翌年には妻と長女も来日した。来日後に次女シャザデさん(10)が生まれた。00年6月に国外退去処分を受け、在留を求めて提訴したが、昨年10月、最高裁で退去処分が確定した。
asahi.com より
むろん、家族が一時期離れて生活すること自体は、必ずしも珍しいことではない。今の時代、娘や息子が海外への留学などによって親元を離れることもよくあることではある。きっと、この一家もそういうふうに自らに言い聞かせることで、この事実を受け入れ次に向かって歩み出そうとしているのだろうと思う。
しかし、言うまでもないことだが、自らの意思でそういう行動を取ることと、ある国家の意思によってそのような行動を強制されることとは全然別のことである。法務省は長女に在留特別許可を与えたが、その気になれば家族全員に対して同様の許可を与えることはできたはずである。
確かに、不法滞在は犯罪であろう。しかし、この一家は日本滞在中になにか日本の社会や日本の国家になにか害になるようなことを犯したのだろうか。少なくとも報道で知る限り、そのような事実は何一つ出ていないように思われる。彼らよりも凶悪な犯罪を犯した日本人は、それこそ掃いて捨てるほどいるだろう。
明らかなことは、この家族が日本を愛し、日本人を愛していたということだけである。国際社会において尊敬される「美しい国」を目指すというのならば、そのように自分たちに本来縁もゆかりもない国を愛してくれた外国人の家族に対しては、むしろ感謝し賞賛すべきではないかとすら思う。
この措置を決定した長勢という男は、先日「性道徳、貞操義務が崩れる」などという訳の分からぬ理屈で民法772条の300日規定の見直しを求める与党内の動きを封殺した男である。
こんな時代錯誤の阿呆な発言に対して、自公の女性議員からは反発する声すら聞こえてこないというのもずいぶんと不思議な話であるが(そもそも、議員立法の権利は政府に干渉されるものではなかろう)、長女1人の在留を認めて、それがなにかさも人道的な措置であるかのような顔だけはしてもらいたくないものだ。
長崎市長が射殺されたことよりも、自分や自分の秘書の名誉のほうが大事であると言いたげな首相を見ても、自分の夫人が関わっている北朝鮮による拉致被害者の国際支援を求める運動にどうみても悪影響を及ぼすとしか思えぬ下らぬ発言を行った中山成彬という男を見ても、アメリカの庇護の下での長い「平和ボケ」に他の誰よりもどっぷりとつかってきたのは、この連中自身のように思える。
「政治家のレベルはその国の国民のレベルの反映である」という言葉は甘受せざるを得ないが、日本が世界有数の経済大国となっているにもかかわらず、この国の政治家は相変わらず田舎芝居のようなことばかりをやっているようだ。