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カテゴリ:政治
元ペルー大統領アルベルト・フジモリ氏が国民新党から参院選挙に出馬するそうだ。へえー たしか、この方ペルーに戻ろうとして途中のチリで逮捕されたはず。今はどうなっているかというと、自宅軟禁下にあって、ペルー政府からの引き渡し要求に対し、チリの最高検事がペルーの要請に応じるよう最高裁に勧告したばかりなのだそうだ。 鳩山さんの話によれば、フジモリ氏側から民主党にも出馬の打診があったらしい。民主党に断られたフジモリ氏が国民新党に話を持ちかけたのか、それとも噂を聞いた国民新党のほうから誘いをかけたのか、さてどっちでしょう。 フジモリ氏はペルーで生れペルーで育った日系二世であるが、誕生したとき(1938年)にご両親がリマの日本大使館に出生届を提出して、日本国籍留保の意思を表明したので、その時点からペルーと日本の両方の国籍を有する二重国籍者になっていたのだそうだ。であるから、法的には立候補の資格はあるらしい。 以前、野暮用で役所に行ったとき、二重国籍者に対するほとんど恫喝めいたポスターを見て、ひえーと思ったものだが、現行の国籍法によれば、次のようになっている。 (1) 昭和60年1月1日以後(改正国籍法の施行後)に重国籍となった日本国民
(2) 昭和60年1月1日前(改正国籍法の施行前)から重国籍となっている日本国民
ようするに、二重国籍を今後は基本的に認めないというのが、現在の日本政府の立場のようである。この問題については、最近民主党の岩国哲人議員が国会で国際的な潮流に反しているという指摘をしているが、まったくそのとおりだと思う。ちなみに、この国籍選択に関する国籍法改正が行われたのは1984年、中曽根内閣のときである。 グアンタナモに拘留されていたパキスタン系イギリス人の青年の証言をもとにした映画があったが(残念ながら見てません)、あの場合は、彼らがイギリス国籍を持っていたことが最後には幸いしたのだろう。 先進国というか、国際的な発言力の強い国の国籍を持っていることは、その当人にとっては利益になる。そのおかげで、おかしな国での不当な処遇から解放されたり、免れたりしたような人は、世界中にかなりいるはずだ。 もっとも、オーストラリアで麻薬トラブルに巻き込まれて、15年の刑を受け現在も服役中という人の話などを聞くと、海外で不当な目にあっている日本国民に対して、日本政府がどれだけ真摯な対応をしてくれるかも少々疑問なのではあるが。 いずれにしても、国籍が複数あることは、救済と保護を求める対象と手段もそれだけ増えるということであり、個人にとっては利益になることだ。ヨーロッパでニ重国籍を認める国が増えてきた背景には、そういう考え方があるものと思われる。 いっぽう、二重国籍を禁止しようとする国の論理は、外交問題に発展しかねないような厄介なこと、面倒なことにはなるだけ関わりたくないということなのだろう。まさか、二重国籍者は 「愛国心」 に欠けるから駄目だというような理屈では、いくらなんでもないだろう (ただし、議員の中にはそんなことをいう者がいるかもしれない)。 簡単にいえば、外国に移住したり外国人と結婚したりして、最終的に外国籍を選択した者に対しては、明日からはあなたは日本国民じゃありません、はい、さようなら、今後、あなたが外国でトラブルにあっても日本国にはいっさい係わりありませんから、そのおつもりで、ということだ。 つまり、そこで優先されているものは、個人の利益ではなく 「国益」 だということだ。日本政府はこの国籍選択条項のおかげで、今後ますます増えると予想される国際結婚や海外移住により、将来に起こるかもしれないトラブルから解放され、面倒が減った、やれやれときっと胸をなでおろしたことだろう。 袖ふれあうも他生の縁という諺もあるのに、なんというか、ずいぶん薄情なお国である。まあ、ドミニカ移民や中国残留孤児、北朝鮮に渡った日本人妻などの問題を見れば、これも今に始まったことではないけれど。 フジモリ氏の場合も、二重国籍のおかげで日本滞在を認められたのだから、二重国籍はりっぱに彼の利益になっていたわけだ。国民新党といっても、亀ちゃんと綿さんの顔ぐらいしか、思い浮かばないのだが、この問題についての党としての見解はどうなっているのだろう。 二重国籍の問題は大半の国民にとっては、関係のない話かもしれない。でも、こういう薄情なお国は、「生粋」 の日本国民に対してもやっぱり薄情なのではないかと思うのだが。
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