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カテゴリ:政治
辞任した久間前大臣の後任に小池元環境相が抜擢されたということで、ひょっとしてと思ったのだけど、案の定のような展開になりつつある。 どうやら1年近い休養で、前首相ふたたび元気を回復したようである。もっとも、後任の現首相のあぶなっかしい迷走ぶりを見ていたら、こりゃほっとけんわいと思うのも当然ではある。なにしろ、現首相は前首相のお気に入りであり、事実上のご指名だったわけだから。 純ちゃん人気はまだまだ健在のようで、選挙が始まればたぶん今の首相よりも、各地からの応援要請で引っ張りだこになるだろう。場合によっては、再登板を求める声もでてくるかもしれない。実際、かりに選挙で与党が負けた場合、だれがあとを継ぐかというと、麻生氏をはじめ、みな帯に短したすきに長しの感がぬぐえない。 小泉という人は、客観的に見れば中曽根以来の長期政権を実現し、中曽根以来の政治的指導力を発揮してそれなりの 「実績」 をあげた首相ということになるのだろうが、この人の本質はマキアベリストというところにあるように思う。そういえば、中曽根というひとにも 「風見鶏」 というありがたくないあだ名がついていた時期があったのだが。 マキアベリストというと、あまりいいイメージはないが、これは悪口で言っているのではない。本物のマキアベリストというのは、たんなる無原則的な政治屋や自己保身だけの利権屋とはちがう。自分にとっての究極的な目的のためには、妥協や策謀、場合によっては裏切りはもちろん、一か八かのような大きな賭けさえも辞さないような人間のことをマキアベリストと言うのだ。 実際、マキアベリストにとって一番重要なことは、なによりもまずマキアベリストであることを見抜かれないことなのである。権謀術数というものは、見透かされてしまってはおしまいである。であるから、本物のマキアベリストというものは、そう簡単に誰もがなれるものではない。 神聖ローマ帝国内の一領邦国家にすぎなかったプロシアをヨーロッパの強国の一つに育て上げたフリードリヒ大王という人は、若い頃に 「反マキアベリ論」 という本を書いているそうだが、国王になってからはロシアやフランス、オーストリアといった強国を相手にマキアベリストとしての権謀術数を駆使しながら、自国の国際的地位を少しづつ引き上げていったのである。 中曽根にしても小泉にしても、けっして政界の主流を歩いてきた人ではない。主流派にたてつく傍流でありながら、同時に権力の頂点を目指すという野心をけっして諦めないことによって、機を見るに敏なマキアベリストとしての能力を磨いていったのだろう。 いずれにしても、現代はある程度の国民の支持がなければ内閣の存続も覚束ぬ時代であるから、かりに与党が大敗し首相が退陣に追い込まれたとしても、森政権が誕生したときのように、少数の実力者同士の取引だけで後任が決まるというようなことは、よほどのことがないかぎりないだろう。 いや、というよりも、いまの自民党が抱える最大の問題は、選挙でいくら負けたとしても、現首相を引きずりおろし自分が取って代わろうというだけの力を持った人間が誰もいないというところにあるように思える。寝業師というか策士というか、党という小さなコップの中での実力者はいても、国民一般に広く訴えるだけの力を持った政治家が一人も見当たらないのである。 結局のところ、後釜がいなければ、今度の選挙でいくら負けても安倍政権は当面は安泰ということになる。選挙結果についての最近の発言を聞くと、首相自身、どうやらそのあたりのことを見透かした上で、高をくくっているようにもみえる。これも、いささか困った話である。 となると、状況次第では、まだまだ根強い人気を保っている小泉再登板というのも、けっしてありえない話のように思えてくる。すでに、そのような声があちこちでちらほらと囁かれだしているようである。その場合、一番の問題は本人のやる気ということになるだろうか。 ただし、前首相の応援にもかかわらず、大敗したとなれば話はもっと複雑になるかもしれない。それに、忘れてもらっては困るが、そもそも小泉氏には、自分の内閣時代に安倍氏を引き立てて、今の地位にまで押し上げてきた責任もあるわけだし。 純ちゃんは自民党の派閥の実質的な解体で名を上げたわけだが、実際にはそのために自民党の活力が低下し、頭数ばかりの有象無象はそろっていても、総裁を狙うだけの野心と力を持った人間が党内から一人もいなくなったというのが実情のように見える。 失言で防衛大臣を辞任した久間氏が所属している旧竹下派や、亡くなった宮沢氏が率いていた宏池会などは、その最たるものである。どこの派閥を見ても、番頭や小言じいさんばかりで、肝心の大旦那がいないのである。ということは、「自民党をぶっ壊す」 といった純ちゃんの大見得は、皮肉にもまんざら嘘ではなかったということになるのかもしれない。 しかし、前首相が選挙の顔みたいなことになると、首相の顔は丸つぶれである。現にすでに首相のポスターだとか、演説テープだとかは、ぜんぜん人気がないという話もちらほらと耳にするのだが。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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