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カテゴリ:政治

 最近、いろいろと腹が立ったもので、あちこちのサイトに乱入して、年がいもなくいささか暴れてしまいました。このようなことは、まことにあってはならないことでありまして、二度といたしませんので、ご迷惑をかけた方々には、心よりお詫び申し上げます。

 さてと、まあ分かったことは、「陰謀論」 などを信奉している方々は、きわめてナイーブな人が多いということであり、そもそもまともな議論などできる人ではないということである。それは、最初からある程度、予期していたことではあったのだが。

 魯迅というと、「水に落ちた犬は叩け!」 という言葉が有名だが、その真意は、清朝の崩壊と共和国の誕生によって、一時的に死んだふりをしている古い勢力がまた蘇ってこないように、徹底的に叩き潰せ! というぐらいの意味だろう。なにも、ただキャンキャン吠えるだけの子犬まで、皆でよってたかってぼこぼこにしろ、というような意味ではあるまい。

 先日、「今年の漢字」 ということで 「偽」 の一字が発表された。まことにそのとおりだが、食品の 「偽装表示」 だとか、大毅君の実力の 「偽装表示」 などは、それほどたいした問題ではない。なんといっても、最大の偽装表示は、前首相のおでこにはっついていた、製品性能の 「偽装表示」 なのである。

 前首相の健在中 (失礼、まだ生きてた) には、「国民投票法」 の成立によって、「改憲」 を目指す動きが何十年ぶりかに活発化し、あちらこちらで憲法論議がかまびすしかった。改憲派の 「憲法論議」 はあまりにお粗末で、しかも拙速だったので、それがいちおう頓挫したことはめでたいことである。

 ただ、その中で少し気になったことがある。それは、いわゆる 「護憲派」 の中に、復古主義的な憲法改正を警戒するあまりに、ただ改正のハードルを高くすることのみを主張しているかに見える人々がいたことである。その方々が、現在の憲法を完全無欠で、今後ともいかなる改正も必要ではないと考えているのなら、それはそれでよろしい。

 しかし、そうでないとすれば、改憲のハードルをやたらと高くすることは、今の憲法の復古主義的な 「改正」 ではなく、時代に応じた新しい人権の規定を盛り込むことなど、自らの望むほうへと改正することをも困難にすることを意味する。

 実際のはなし、現実にいま問題となっている 「生活保護」 の基準引き下げの問題や、「ワーキングプア」 などの問題で明らかになっていることは、25条の生存権や27条、28条に定める労働者の権利など、憲法で定められている権利が、きわめておろそかにされつつあるということだろう。

 そこで、明らかになっていることは、現在の憲法が、政府与党、行政、一部の財界などによって、非常に軽く扱われているということだ。むろん、そのように憲法の規範性が非常に弱まっていることには、長年政権を握ってきた保守政党が一番の責任を負うべきものであることはいうまでもない。

 たとえば、憲法は理念=理想を掲げるものであって、必ずしも現実とあっていなくともよい、というようなことを言う人もいる。憲法には、その国の政治理念が掲げられるという意味では、そのとおりである。事実、アメリカの憲法にしてもフランスの憲法にしても、そのような側面は多少なりとも持っている。しかし、そのような主張には、いささか居直りじみたところがありはしまいか。

 憲法に掲げられた 「理念」 というものは、少なくともその国の政治勢力を含めた、大多数の国民によって共有されているのでなければ、意味がない。そうでなければ、それはただの 「空文句」 でしかない。いかなる理想主義的な憲法であれ、その国の国民の意識や現実とあまりに懸け離れてしまえば、最終的には憲法そのものが軽んじられ、その全体が粗末に扱われるといったことも起きかねない。

 両大戦間のワイマール共和国時代に、いわゆるワイマール憲法がたどった運命が、まさしくそのようなものだった。当時、ワイマール憲法は、世界で最も民主的な憲法だと言われたものだが、そのような憲法も、その出生の秘密を巡って、左右両翼から 「正当性」 に終始異議が唱えられる中では、ヒトラーとナチスの台頭を抑える役目など果たしようがなかった。

 どちらも一部であるとはいえ、「改憲派」 は 「護憲派」 を 「反日分子」 と呼び、「護憲派」 は 「改憲派」 を 「好戦主義者」 などと決め付けて、互いに罵りあっているような状況は、左右を問わず、この国がいまだに政治的に未熟であることを象徴している。「改憲」 を主張する人にも、様々な人がおり、様々な内容があり、その理由もいろいろなのである。

 おそらく、理性的な 「改憲派」 の主張の根拠には、憲法と現実があまりに乖離しすぎた場合、憲法そのもの、憲法の全体が軽んじられ、おろそかにされていくことになりはしないか、という危惧もあるのだろう。

 9条のなし崩し的な 「解釈改憲」 が進められてきたことには、賛成・反対はともかくとして、それなりの根拠がある。自衛隊を完全に廃止して、その創設以前のような憲法と現実の完全な整合性を取り戻すことなどには、現実性もなければ、多くの国民の支持も得られないだろう。

 だとすれば、国家の最高法規としての憲法の重みを取り戻すためには、現在の憲法を一定程度、現実にあわせて修正することも必要なのではないのか。上のような危惧は、けっして根拠がないわけではないし、このような主張も理論的に言う限りでは、合理性がないわけではない。

 憲法の 「正当性」 の問題にしても、そうである。問題なのは、60年も前の憲法制定の過程や、制定当時の状況といった過去のことではない。現にいま、現憲法の 「正当性」 を疑う人々や、政治勢力が多数存在しているという現実が問題なのだ。そこでは、ただ過去をほじくり返したり、理屈ばかりを言っていてもしょうがない。結局、憲法の 「正当性」 とは、歴史の問題でも理論の問題でもなく、今現在の国民による明示・黙示の承認という、今現在の問題なのだから。

 現在の憲法が、事実上あまりに長い間不問に付されてきた結果、このような状況が生じてきたのだとすれば、「国民投票」 によってその正当性を問うということは、けっして意味のないことではない。安倍内閣のもとで成立した 「国民投票法」 に、様々な問題があることは否定しないが、その逆に、ただただハードルを高くすることで、「改正」 を困難にすることだけを目指すのは、現憲法の 「正当性」 をめぐる問題を、根本的に解決することにはならないだろう。

 さてと、仕事に戻らねば






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Last updated  2007.12.27 09:14:03
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