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カテゴリ:国際

 二日ほど晴天が続いたと思ったら、今日は雨である。いわゆる 「三寒四温」 であり、チーターの歌の文句を借りれば、「三歩進んで二歩下がる」 というところだろうか。間違っても 「一歩前進二歩後退」 であってはいけない。それでは、また冬に戻ってしまう。

 チベット問題は、いろいろなところで反響を呼んでいるようだ。なかには、「警察官等の制止に従わず暴れ続ける狂信者が射殺されるのは自業自得でしょう。」コメ欄参照 などと無理筋の中国擁護を言う馬鹿もいれば、今回の騒動で、まるで鬼の首でもとったかのようにはしゃいでいる嫌中馬鹿もいる。まったく、馬鹿と馬鹿の相関図といったところだ。

 問題は、一般の民衆に対する現在の中国の強権的な支配方法にある。今回のチベットの騒乱では、そのような現在の中国の支配方法の特質が集中的に表されたと見るべきだ。それは、けっしてチベットのような少数民族地域だけに限られることではあるまい。程度の差はあれ、現在の党や政府に対して批判的な人々に対しては、一様にとられているのではないか。

 また、この問題について、「中国の内政問題」 だなどと言って口を閉ざしている党もあるらしい(参照)。 ならば、かつてのインドネシアのスハルト政権による東ティモール弾圧も 「内政問題」 であるし、セルビアによるコソボのアルバニア系住民への弾圧も 「内政問題」 であろう。

 むろん、キング牧師が戦いを挑んだ、かつてのアメリカ国内での法制度的な黒人差別も、南アフリカのアパルトヘイトも 「内政問題」 であろう。いや、それどころか、ヒトラーによるユダヤ人弾圧だって、少なくともドイツ国内で行われていた限りでは、ドイツの 「内政問題」 だったわけだ。

 ようするに、差別的な政府による少数民族への差別や、独裁的な国家による反対派への抑圧は、すべて 「内政問題」 であり、したがって 「内政不干渉」 の原則からして、そのような政策を非難してはならないということになる。まったく、なんたる馬鹿げた万能の理屈だろうか。

 さらに、アメリカのイラク攻撃を支持した小泉首相に批判的な意見書を提出して、外務省を辞め、一躍名を上げた天木直人氏は、自分のブログで次のように書いている。


 中国にはそのような謀略につけ込まれる隙があるのだ。もし中国が反政府の動きを軍事力で押さえつけようとすれば、中国は国際非難の的になる。北京五輪にも影響が出るに違いない。

 イスラエルがどのような暴虐をガザで働いていても、このような報道がなされる事は決してない。国際的批判がイスラエルに向けられることはない。だからと言って、中国が軍事力で人民を押しつぶす事を認めるわけにはいかない。

(中略)

 中国の悪も、ロシアの悪も、米国軍事力の悪にくらべれば、まだ可愛いものかもしれない。開発途上国の独裁、非民主的国家の悪もそうだ。それにもかかわらず、これらの国の人民抑圧を容認できるものではない。世界の殆どの国が自らの軍事力によって苦しめられているのだ。

天木直人のブログ 

  
 いったい、この人はなにを言っているのだろう。いや、そもそもなにが言いたいのだろう。まったくもって、意味不明で支離滅裂な文章である。

 アメリカのイラク戦争やイスラエルのガザ侵攻に比べて、ロシアによるチェチェン戦争や中国による少数民族抑圧、スーダンによるダルフールの黒人系住民への弾圧などは、「まだ可愛いものかもしれない」 ということなのだろうか。

 では、その 「可愛さ」 とやらは、いったいなにをもって計るのだろうか。犠牲者の数によってなのか。だが、数で言えば、ダルフールの犠牲者のほうが、イスラエルのガザ侵攻による犠牲者よりもはるかに多いはずだ。94年にルワンダで起きた虐殺の犠牲者は、それをはるかに上回るものだ。

 そもそもあちこちの国家による抑圧の程度を、犠牲者の数だとかで、あっちは酷いが、こっちはまだ可愛いなどと言えるものでもあるまい。それは、人間を頭数で計り、一枡いくらで売買する思想と同じである。

 アメリカによる一極支配が、今日の世界で様々な矛盾を生んでいるのは事実だろう。だが、だからといって 「諸悪の根源はアメリカにあり」 とばかりに、ただアメリカばかりを批判し非難していればすむというものでもあるまい。試されているのは、そういう悪や抑圧の 「可愛さ」 とやらを計る、手前勝手な物差しのいいかげんさなのではないのか。

 かりにも外交官であった天木氏が、50年代、60年代のハンガリー動乱やチェコの改革に対するソ連の武力介入といった歴史的事実を知らないわけでもあるまい。当時もやはり、「謀略」 だとか 「反革命」、「分裂主義者」 だのといった言葉が投げつけられていたものだ。

 釜茹での刑に処せられた、かの大泥棒、石川五右衛門ではないが、まったくの話、「世に馬鹿者の種は尽きまじ」 という感慨を抱いていしまう今日この頃である。






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Last updated  2008.03.23 15:54:05
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