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カテゴリ:国際
連日の激しい日射と高温のせいか、このところ大気がきわめて不安定のようで、午後になると魔王のような黒雲がむくむくとわきあがり、雷もゴロゴロと呻りだして、にわか雨が降りだす。どうやら、空の上で龍と虎による激しい戦いがおこなわれているようだ。 今回の衝突は、どうやらロシアとグルジア、それに南北オセチア4者によって締結された過去の協定を一方的に無視した、グルジア側の挑発が原因のようだが、自分から挑発しておきながら、「平和の祭典」 と称されるオリンピックの時期に、まさかロシアが全面的な武力行動に出るとは予測していなかったのだろうか。だとしたら、ずいぶんと考えが甘かったといわざるを得ない。 グルジアとロシアの間には、アブハジアの問題もある。ロシア自身が、チェチェンの問題を抱えていることは言うまでもない。コーカサス地域には、そのほかにも、ナゴルノ=カラバフをめぐる、旧ソ連の構成国どうしであったアゼルバイジャンとアルメニアの対立もある。 旧ユーゴスラビア内の問題は、どうやらいちおうの解決を見せているようだが、こちらはカスピ海沿岸の油田の問題や、地域の安定化と安全保障をめぐる大国ロシアの利害が直接に絡んでいるだけに、そう簡単には解決しそうもない。 ユーゴ問題もそうだったが、こういう問題の背景には、かつての 「社会主義」 共同体の崩壊に伴って自立性を高めた、この地域の多くの小国家内でのナショナリズムの台頭と、それに対抗する少数民族側の反発があり、そこへロシアやアメリカ、EUなどの利害が絡んで問題をさらに複雑化させている。 古い話になるが、かつてレーニンと、ポーランド出身でのちにドイツに移住し、ドイツ革命の過程で殺されたユダヤ系革命家であるローザ=ルクセンブルグの間で、「民族問題」 をめぐる論争が起きたことがある。 大ロシア主義的な民族排外主義を強く批判して、少数民族の 「自決権」 を擁護したレーニンに対して、ローザは民族の利害よりもプロレタリアートの利害を優先させるべきだという原則論を主張したわけだが、同時に彼女は、レーニンの言うような 「民族自決権」 は、多数の小民族が狭小な場所にひしめき合っているような地域には現実的に適用不可能であることも指摘している。
ローザ=ルクセンブルク 『民族問題と自治』 より
とはいえ、ローザもまた民族問題の複雑さと、その解決の困難さを指摘しただけで、解決へいたる道筋を提起しえたわけではない。「民族の利害よりも階級の利害を!」 という彼女の国際主義的な原則論が、歴史と文化の共有 (それは、しばしば幻想的なものでもあるが) にもとづいたナショナリズムの強さを過小評価したものであったことは、今さら指摘するまでもないことだろう。 ところで、グルジアはいうまでもなく、ヨシフ・ジュガシビリ、すなわちスターリンの出身地でもある。 エリツィンによるソビエトの解体後に成立した、CIS (独立国家共同体) という緩やかな国家連合は、すでにほぼ有名無実化しているようだが、一党独裁時代をそのまま引きずったような各国の小独裁者らの政治的思惑と、アメリカやEU、中国などの利害も絡み合って、結局は失敗に終わったというべきだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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