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カテゴリ:政治

 報道によると、麻生内閣がついに誕生したとのことである。初代の伊藤博文内閣から数えて内閣としては92代目、総理大臣としては59人目ということになる。地元福岡としては、戦前の広田弘毅内閣以来、70年ぶりの総理誕生ということで盛り上がっているらしい。「らしい」 というのは、半径2kmの範囲だけで暮らしている者としては、ちっともそのような盛り上がりが感じられないからである。

 発表された閣僚名簿によれば、8年前に急死した小渕恵三元総理の次女である小渕優子衆院議員が、34歳という戦後最年少の年齢で入閣をはたしたそうだ。少子化担当大臣ということで、消費者行政担当相の野田聖子とあわせて二人の女性大臣ということになるが、それなりの実績と主張を持つ野田に比べれば、こちらの入閣はいかにも、という感じである。

 ほかには中川昭一や鳩山邦夫など、ありゃありゃまたか、というような面々ばかりである。数々の失言で内閣の足を引っ張ってばかりいた鳩山弟は、福田康夫による内閣改造でせっかく首になったのに、また大臣に戻すとはいったいどういう了見なのだろう。いくらお友達だからといって、自分で自分の首を絞めるような人事をしてはまずいのではないだろうか。

 ちょうど一年前に書いた、不思議の国 「日本」 という記事への追記で、福田・麻生両氏による総裁選の結果について、次のように書いた。

 総裁選で、麻生氏が200票近い票を得たのは、予想以上の善戦であった。選挙当日、自民党本部前には若者を中心にした「麻生応援団」が登場したり、党員投票では、麻生氏のほうが福田氏をわずかながら上回っていたという報道もある。

 ただ、これは福田氏が旧来の自民党的なものを代表しているように見えるところからの福田氏への反発や、福田で選挙が戦えるのだろうかという不安感が一部に存在したことの結果のように思える。

 小泉流の「劇場型政治」に幻惑された者らは、「キャラが立った」麻生氏に、「夢よ、もう一度」とばかりに、小泉型政治家の登場の夢を託したのだろう。

 しかし、麻生太郎というキャラクターには、どうも小泉のような大衆性が欠けているようだし、政治的嗅覚もいまひとつのように思える。基盤となる自己の派閥の弱さもあるが、どこかマイナー感が抜けないところが麻生氏の決定的な弱点だろう。

 麻生が福田康夫に惨敗してからわずか1年しか経っていないが、この一年間でとくに麻生が政治的な実力をつけたとも、彼の株がとくに上がったとも思えない。この結果は、ただ、たんに福田が勝手にこけて、麻生に鉢が回ってきたというだけのことだ。

 というより、小泉退陣後の一年ごとに続いた、安倍、福田、そして今回の麻生の総理・総裁就任とは、戦争で言えば、大隊長が戦死し、さらにその次の隊長代理も、その次の代行も、と次々と戦死して、やむなくなんの経験も実力もない未熟者がただ順々にトップに押し出されてきたもののように見える。

 昨年、あれほど麻生に対する不信と反発を顕わにしていた連中は、いったいどういうわけで、今回は麻生支持に回ったのだろうか。現在の自民党は、どうやらまともな政見も見識も持たず、政権維持という目先のことしか考えぬ、ただの烏合の衆と化しているようだ。

 総裁選で二番手に付けたのは、予想どおり麻生よりも年上の与謝野馨だったが、このことはもはや、自民党には、次代を担うべき人材が完全に払底したということを象徴しているようにも思える。

 小池以下の三名は、今回総裁選に名乗りをあげたことで、「総裁候補」 として認知され、いずれ待っていさえすれば、自分にもそのうちに番が回ってくるぐらいに思っているのだろうか。だとすれば、それはあまりに甘い考えというものだろう。

 そもそも小池や石原を推した当選回数の少ない 「若手」 議員など、次の選挙ではどうなるかも分からない連中ばかりではないのだろうか。そのような議員の支持や票など、いくら集めたとしてもほとんど意味はあるまい。

 なんとも言えない、緊張感に欠けた茶番の選挙だった。小泉政治によって始まった自民党の解体と崩壊は、もはや止まるところを知らない最終段階へとはいったと言うべきなのだろう。いずれ、総選挙が行われることは確実だが、麻生内閣誕生で、現在の自民党に対する逆風がはたしてやむかどうかはきわめて不明である。それに、いずれにしても、それで参議院での与野党逆転という状況が変わるわけでもない。

 いうまでもないことだが、現在の衆参両院の 「ねじれ現象」 を解消する、もっとも手っ取り早い方法は、民主党が総選挙で勝利することだ。与党が 「ねじれ」 による政治の手詰まりを強調すればするほど、ならば総選挙で民主党に勝たせて、政権を取らせてみてはどうだ、という話にもなりかねまい。

 麻生自身は、ワンマン宰相と言われた祖父を気取っているのか、いかにも自信満々、おれはやるぞ、といった顔をしているが、とうてい長持ちするとは思えない。たとえ、総選挙をなんとか乗り切ったとしても、いずれ党内の不協和が噴き出すのも時間の問題だろう。

 とりあえずは、鳩山総務大臣に、また前のように 「友だちの友だちはアルカイダ」 だとか 「秘書時代にペンタゴンから飯をおごってもらった」 といった失言・迷言の類を期待したいところである。それにしても、この残暑はいったいいつまで続くのざんしょ。






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Last updated  2008.11.07 02:18:27
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