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カテゴリ:神話・伝承・民俗
とうとう2009年になってしまった。もっとも、そうは言っても、時間に明確な区切りがあるわけではなし、地球が太陽の周りをぐるっと一周したというだけのことだが。
ヘシオドス 『神統記』 より
それを聞いた子供らの中から、末子のクロノスが進み出て母の願いを聞き入れ、一役買うことになる。すなわち、クロノスは母親の寝所に隠れて、父ウラノスが来るのを待ちうけ、親父殿がことに及ぼうとするところでとび出して、その大事なところを母に渡された鎌でちょん切ってしまうのである。 かのオイディプスもまた、「お前はおのれの子供によって亡き者にされる」 とのアポロンの神託を怖れた父によって捨てられるのだが、殺してくるよう命じられた家来の情けによって命は助けられ、めぐりめぐって別の王家で育てられることになる。 白雪姫もまた、「白雪姫はあなたより千倍も美しい」 との鏡の言葉に嫉妬した王妃(グリムの初版では継母ではなく実母ということだ)によって、森へと連れ出されるのだが、やはり同様に哀れに思った狩人により命を助けられ、小人らとともに森の中で暮らすことになる。 さて 「エディプス・コンプレックス」 理論で有名なフロイトは、『トーテムとタブー』 の中でこんなことを書いている。
いうまでもなく、このようなフロイトの主張はとうてい 「歴史的事実」 としての確認などできるものではない。また人間の 「社会形成」 に関する理論としてみれば、一種の社会契約論と言えなくもないが、説明があまりに空想的で心理主義に偏向しているのも確かだろう。 たしかに古い神話や伝承には、しばしば 「怖ろしい父」 や 「怖ろしい母」 といった形象が登場してくる。神話の場合には、そのような形象はおそらく人間の上にのしかかる、様々な抵抗しがたい力が擬人化されたものなのだろう。とはいえ、そういう怖ろしい力が 「怖ろしい父」 といった姿で表されたということには、それなりの根拠というのもあるのかもしれない。 第二次大戦中のヒトラーによる 「絶滅政策」 を生き延びた人々は、パレスチナへの「帰還」によって、2,000年ぶりに自前の国家を建設した。しかし、それはすでにそこに住んでいた人々を暴力で追い払い、彼らから土地と家を奪うことによる 「建国」 でもあった。 「建国」 前には、パレスチナ全体の1割にも満たない土地しか所有していなかったユダヤ人入植者による、パレスチナ全域の制圧によって実現したイスラエル 「建国」 は、現実にはパレスチナ人に対する旧ユーゴの内戦と同様の 「民族浄化」 によるものだ。当時の記録を読めば、イスラエルの 「建国」 が、単なる自衛を超えた 「テロ」 の力を借りたものであることは疑いようがない。 彼らの 「テロ」 と、その後のパレスチナ人による 「テロ」 との違いがあるとすれば、彼らのテロは 「国家建設」 という目的を果たし、その結果 「建国」 のための 「英雄的行為」 として正当化され認知されているということでしかあるまい。 かつて東欧の狭い 「ゲットー」 の中に押し込められていた人々の末裔は、いままた高い壁でパレスチナ人の居住区を取り囲み、新たな 「ゲットー」 を建設しようとしている。ただし、これは 「因果はめぐる」 という話ではない。 わずか360 平方キロという一都市ほどの広さしかない土地を軍事的に制圧するのは、むろん赤子の手をひねるよりも簡単なことだろう。だが、自国の周りに、自らの手で敵意と憎悪の壁をうず高く積み重ねていくのは、最悪の愚策でしかあるまい。それは、ゴヤが描いたサトゥルヌスのように、自らの手で自らの未来を食い尽くすことでしかないだろう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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