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 イラン情勢がたいへんのようだ。先週に行われた大統領選挙では、保守派とされる現職のアフマディネジャド大統領が約65%、改革派と言われるムサビ元首相が約32%というほぼ2対1の大差で、現職大統領の再選ということになったのだが、敗れたムサビ支持派が選挙の不正を訴えて各地で抗議行動を広げている。

 首都テヘランでは、ムサビ支持派による数万規模の無許可デモが行われている。すでに死者も出ているらしいが、これは、ちょうど30年前に起きた、パーレビ王朝が倒された革命以来、最大の反政府運動ということになる。30年というのは、出生率の高い国なら、国民の半分以上が入れ替わるぐらいの長さになるだろう。フランス革命後の混乱が、ナポレオンの敗北で終息したのも、蜂起からほぼ30年後のことである。

 振り返ってみると、イラン革命が起きた1979年というのは、国際的な大事件の相次いだ年であった。1月には、カンボジアのポルポトを支援する中国が、ベトナムに対し懲罰と称して戦争をしかけ、7月には中米のニカラグアで独裁者のソモサ政権が倒れた。10月には韓国の朴正煕大統領が側近の部下に射殺され、12月にはソビエトによるアフガニスタン侵攻が始まった。

 朴正煕暗殺事件のときは、たしかある障害者団体がやっていた街頭カンパの支援に引っ張り出されていたような記憶がある(違うかもしれない)。ただし、その知らせを聞いたのがどういう経緯だったのか、詳しいことは思い出せない。ひょっとすると、号外でも出たのかもしれない。

 その年というのは、本来なら大学を卒業する予定だったのだが、諸般の事情により翌年までお預けになってしまった。早い話、ろくに講義に出ていなかったから、卒業のための単位が足りなかったというだけのことなのだが。

 前年に、京都大学の同学会が主催した集会があって、そこでの集会後のデモでお巡りさんになぐられて、気がついたらどこかの病院に寝かされていた。そのときは一週間で退院したのだが、帰ってきてもどうも目の調子がおかしい。左右の視線がきちんとあわない。それで、地元の病院で見てもらったところ、右目の眼球の下の骨が折れているという話だった。

 結局、手術をして、まあよくはなったのだが、病院から出てきてみると、今度はまわりの連中と話があわない。中越戦争で、中国を支持しベトナムを非難するビラを出したり、ソ連を「白くま」と呼んで非難するビラを出したりと、まるでいっぱしの政治党派のような活動を始めていて、およよと思ってしまった。

 そのへんのことには、いろいろと裏があったのだが、こんなバカな連中と一緒にやれるか、ということで足を洗った。ぼこりあいにこそならなかったけれど、気まずい別れであった。当時すでに、カンボジアの虐殺のニュースもちらほらと流れていたのだが、そういった現地の事情も知らずに、ようもまあそんなことが気軽に言えるよな、と感心したのを覚えている。

 その連中が、今どこでなにをしているのかは、ほとんど知らない。学生時代には、青やら赤やら、あちこちにいろいろと知り合いもいたのだけれど、その連中ともほとんど付き合いはない。ただ、一度だけ、地元のニュースで、行政相手のつまらぬ事件の容疑者として、ちょっと知っていた者の名前が出てきたことがあって、おいおい、お前、まだそんなことをやっているのかよ、と呆れてしまった。

 その当時、それから10年後にソビエトが解体し、鉄のカーテンで仕切られた 「社会主義圏」 なるものがいっせいに崩壊してしまうとは、いったい誰が予想していただろうか。まことに、十年先は闇である。今から考えれば、当時のアフガンやアンゴラでの無理な膨張政策と、アメリカとの軍拡競争が、彼ら自身の首を絞めたということなのだろうが。

 話は変わるが、社会において不利な立場にある少数者や、いろいろな理由で自らは声をあげにくい人らを支援し擁護することは、むろん否定されるべきことではない。しかし、その場合に真っ先に考えられねばならないのは、なによりも当事者であるその人たちの立場であり、利益でなければならない。

 「日の丸」 反対だの、天皇制反対、ファシズムがどうのという主張がしたければ、そういう運動とは切り離して、自らの責任ですればよい。たとえ、その主張に一定の正当性があろうと、それとこれとは別の問題だ。それを混同するのは、少数者の権利擁護という社会運動に、政治的な主張を持ち込むことであり、そういう人たちを、自らの政治的主張のために利用していることにすぎない。それが分からぬというのであれば、君らは、自分らが支援しているつもりの人たちの利益を本当に考えているのか、という話になる。

 ベスト電器の不正ダイレクトメール事件から始まった、自称 「障害者団体」 の認可をめぐる問題は、郵便会社職員の逮捕から、とうとう厚労省の官僚逮捕というところにまで発展した。事件の背後には、政治家の関与もささやかれているが、この事件というのもよく分からない。そもそも、地検の特捜がわざわざ出張るほどの問題なのだろうか。

 問題の 「第三種郵便物」 というのは、障害者団体向けの郵便物割引制度のことだが、連れ合いが持っている古いパンフ類を内緒で引っ掻き回していたら、「社会福祉事業団体 日本脳性マヒ者協会 全国青い芝の会総連合会」 という団体が発行していた、ぺらぺらの機関誌がでてきた。これには、ちゃんと裏側に 「第三種郵便物認可」 と印刷してあるから、不正ではない。

 くしくも、これも1979年の発行で、「故横塚晃一会長追悼号」 と題されていた。横塚さんというのは、青い芝の会の指導者で、その世界では伝説的人物といってもいい人だが、生前に会ったことはない。ただし、副会長だった横田弘という人は、全国大会で一度だけ顔を見たことがある。当時、福岡の会長を務めていたN氏に、お前ついて来いと言われて、しかたなくついていったのだが、そのときの大会がどこで行われたのかは、とんと思い出せぬ。なにしろ、30年も前のことであるから。

 そういえば、先日、地元のニュースでこのN氏の姿が流れたのだが、顔は変わらぬが、頭のほうはすっかり悲惨なことになっていた。やっぱり、昔の仲間だとか友人などというものには、あまり会わないほうがよさそうである。お前、誰だよ、とかいう話になりそうだし。紅顔の美少年もいまいずこ、というのでは、笑い話にもならない。

 若いということは、多かれ少なかれ、愚かさや未熟さと同義である。思い返すなら、自分も、いろいろと愚かなことをしたものである。とても人様のことをあれこれと言えた義理ではない。ただ、自分の愚かさが自分に返ってくるのはしかたないとしても、関係のない人様の足を引っ張ったり、迷惑をかけぬぐらいの注意は必要だろう。






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Last updated  2009.06.20 00:46:26
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