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カテゴリ:政治

  報道によれば、いまや民主党は300議席を超える勢いなのだそうだ。小泉旋風が吹いた前回の選挙では自民党が三分の二を超える議席を獲得したが、ちょうどそれと反対の現象がいま起ころうとしている。

 基礎票がある程度拮抗した条件下では、全体の1割にも満たぬ票が全国規模であっちからこっちへ動いただけで、まったく違った結果が生まれる。小選挙区制の導入は1994年の公職選挙法改正によるもので、実際の選挙としては1996年の第41回選挙以来五回目ということになるが、これで自民党も民主党も、どちらも小選挙区制の恐ろしさを身をもって体験したことになる。このことは、はたして今後の政局にどのような影響を及ぼすことになるだろうか。

 今回、自民党に大きな逆風が吹いている最大の理由は、いうまでもなく、小泉退陣後の安倍・福田と相次いだ政権の投げ出しであり、その後の政権の、あっちに行ったりこっちに行ったりと、まるで定まらなかった舵取りにある。これを一言で言うならば、与党としての自民党の 「責任力」 に対する不信ということになる。

 それにしても、前回の選挙で登場した 「小泉チルドレン」 に入れ替わるようにして、今回もまた多数の新人議員が登場することになる。これは 「鳩山チルドレン」 というべきか、それとも 「小沢チルドレン」 ということになるのか、まだよく分からないが、いささか危惧を感じるところではある。

 ただ、たった1回の風で得た大量議席に胡坐をかき、勘違いして好き勝手なことをしていると、次の選挙でひどい目にあうよというのが、前回の選挙以来のひとつの教訓ではあるだろう。それは忘れてもらいたくない。とはいえ、民主党内ではおそらく大量の新人議員の囲い込みをめぐって、熾烈な党内闘争が繰り広げられることになるかもしれない。もっとも、その大半はすでにどこかのグループのひもがついてはいるのだろうが。

 16年前に細川政権が誕生したときは、河野洋平が下野した党の総裁になり、その後の新進党結成をめぐる連立与党のごたごたの隙をつき、社会党の村山富市を担ぎ出すことで復権に成功した。しかし、今の自民党に、そのうち総理の座につけるという確実なあてもないままに、自分から進んで汚れ仕事を引き受けようというだけの覚悟のある人間がはたしているのだろうか。自民党がかかえている病根は、前回よりも確実に深いと言わざるを得ない。

 いずれにしろ、政治家の世代交代と政界の流動化が、一気に加速することだけは間違いあるまい。それがいい方向に行くか、おかしな方向にいくかは、もちろんあらかじめどうこう言える問題ではない。だが、あちらこちらで酒に酔って醜態をさらした政治家や、ピントのずれた時代錯誤なイデオロギーを振り回してばかりというような政治家には、今回の選挙で落ちたなら、次があるなどといわず、このさいすっぱりと足を洗ってもらいたい。それがなによりもこの国のためである。

 小選挙区制とは、いわば選挙区ごとに候補者が党の代表として争う選挙である。中選挙区ならば、大政党の場合、複数の候補者が立てるので、あの人よりもこの人という党内での選択も可能だが、小選挙区ではそうもいかない。だから、実際の選挙だけでなく、候補者選考の過程もひじょうに重要だということになる。したがって有権者にとっては、選挙前の党による候補者選考の過程に介入することも必要になるだろう。そうでなければ、国民はただ備え付けのメニューをあてがわれるだけのお客さんということになってしまう。

 本来ならば、候補者選考の過程には、地域地域での党員や党の支持者の意見だとか、有権者の動向などが反映されることが望ましいのだが、現状は必ずしもそうなっていない。そもそも、日本の政党は、ほとんどが近代政党としての組織の体をなしていないし、逆に組織された政党のほうには、非民主的な上意下達のうえに、内側に閉じこもり外に開こうとしない傾向がある。

 小泉旋風は劇薬のようなもので、その効き目におぼれたことが、その後の自民党の首をしめることになった。党の代表というものはむろん大事だが、その個人的人気という、いささかあやふやな即効性のみを期待して、これに頼ることは、法で禁止された危険な薬物に手を出すようなことであって、やっぱり誉められることではない。

 そもそも、幹部や将来を期待されていた(?)中堅議員を含めて、大量の前議員の落選が予想され、いったい誰が国会に戻ってこられるか分からないという状況では、選挙後の党の体制がどうなるかもさっぱり分からない。党内の小派閥などは消滅してしまうかもしれないし、そうでなくとも幹部クラスの落選によって、実質的に派閥として機能しなくなるようなところも生まれるだろう。

 言うまでもなく、麻生がこのまま党総裁の座にいすわり続けられるはずはない。だれが当選しようが、だれが落選しようが、歴史的な大敗によって、これまでの党内の幹部・中堅クラスの発言力が大きく減退し、当選回数による年功序列的な党内体制が動揺することも、間違いないだろう。

 政界の勢力図が大きく様変わりすれば、民主党にとっても自民党にとっても、党内の流動化が生じるのは必至である。とりわけ逆風を受ける側にとっては、選挙後の体制がどうなるかさっぱり見当がつかないというのも、これまた小選挙区制の恐ろしさということになるだろう。むろん、いまはみな自分のことで精一杯で、そんなことを考える余裕などないだろうが。






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Last updated  2009.08.28 19:11:40
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