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カテゴリ:歴史学全般
大阪府池田市の古江古墳(6世紀に造られた直径約13メートルの円墳)が、NTTドコモ関西による携帯電話基地局の鉄塔新設工事によって破壊されてしまいました。
遺跡破壊は、日常的に繰り返されているとはいえ、ドコモ関西は、文化財保護法で定められた届け出をせずに工事に着工したということですから、許しがたい行為です。 現場で工事した下請業者も、石室をもつ横穴式の古墳の存在にまったく気づかなかったというのもおかしな話です。 遺跡は、一度破壊したら、二度ともとには戻りません そのうえ古江古墳は、1976年に発見されて以来、詳細な調査はおこなわれなかったといいますから、これで古江古墳の解明は、永遠にできなくなってしまいました。 それはまた、地域の歴史を解明するための大切な手かがりが失われたことを意味します。 もちろん、調査がすめば、壊してもよいというわけではありません。 さらに言えば、発掘も破壊につながる行為ですから、調査の態勢が整うまでは何もしないことがベストなのです。 世間には、発掘のニュースばかりが大きく取り上げられますが、その陰では多くの遺跡が破壊されています。 破壊(開発)するためにやむおえず急いで発掘調査をしているというのが、現状なのです。 今回のケースも、届出をしていれば、これほど大きな問題にもならず、やがては調査後に破壊されることになったでしょう。 しかし、今回は、その調査すら、できませんでした。 ドコモ関西は、「行政の指導に基づき原状復帰に努めていく」といいますが、未調査の古墳の大半を破壊しておきながら、どのように原状を回復をするというのでしょうか。 「皆様方に大変なご迷惑と多大なご心配をおかけいたしましたことを深くお詫び申し上げます。」と言って謝罪すればすむ問題ではありません。 文化財というものが、どのようなものなのか、ドコモ関西は、その重要性をきちんと認識していないのでしょう(もっとも認識不足はドコモ関西に限りませんが)。 なお、ドコモ関西の謝罪文は、以下のとおりです。 http://www.docomo-kansai.co.jp/announce/00322zum/ それにしても、古江古墳は、地元でもあまり知られていない古墳だったようです。 工事着工を強くとめられなかった背景には、こうした問題もあったのでしょう。 何度かこのブログでも発言してきましたが、地域の方々の理解・愛情なしに、文化財は守れません。 また、文化財の指定を受けていないからといって、価値がないというものでもありません。 人々の生きたあかしを示す歴史資料は、どれもが地域にとっては、かけがのない大切な文化財なのです。 日本列島の歴史は、そうした地域の歴史の集合体です。 京都や鎌倉だけが、歴史の舞台ではありません。 源義経のような有名人だけが歴史の主人公ではありません。 みなさんの地域にも豊かな歴史があり、そのひとつひとつが日本列島でくりひろげられた歴史と密接にリンクしています。 今回の事件を契機に、いま一度、みなさんの住む町や村の身近な歴史に眼をむけてください。 これまで気づかなかった、新しい発見にきっと出会えるはずです。 そのことが、地域に残る歴史資料を守りぬく、大きな原動力にもなるのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2005.06.19 17:42:33
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