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中世武士団をあるく 安芸国小早川領の復元

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2005.08.26
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カテゴリ:歴史学全般
先日、ある石屋さんのブログに目がとまりました。
そこには、「石造品」のタイトルで、宝篋印塔1基、宝篋印塔の笠2基、一石五輪塔3基の写真が掲載され、なんと「とあるルートから仕入れた」ものです、という書き込みがなされていたのです。

石屋さんは、ブログのなかで「室町後期から江戸時代前期あたりの石造品です」と紹介されていましたが、形からみて、いずれも江戸時代前半の石塔のようです。

いったい、どこから、どのような方法で入手したのでしょうか。
宝篋印塔の笠の特徴がみな同じところを見ると、石屋さんの住む中部・東海地方の、とある場所から一括して購入したもののようです。

ブログには、続けて「風化や苔のついている姿は、時代を感じさせ、小さな庭に置いておくと何ともいえない侘びた雰囲気が出てきます」とも記されています。
石屋さんにしてみれば、これは庭石として売れると思われて仕入れたのでしょう。

しかし、こうした石塔は、これまで私のブログでなんども強調したように、地域の歴史を調べるうえで大切な歴史資料であり、文化財です。
それを、もともと建っていた土地から切り離しては、「時代を感じ」ることもできません。

それどころか、業者を通して転売されてしまえば、所在は不明となり、二度と、この石塔から地域の歴史を読み解くことはできなくなります。

このように、石塔の転売は、地域の歴史の一コマを奪う行為でもあるのです。

先日(7月10日)、このブログでも紹介した竹原市東野の浄光庵跡も、石塔が残っていたから、その歴史が復元できました。
もし、その石塔が流失していたら、浄光庵の周辺の歴史は、まったくわからなかったでしょう。

残念ながら、中世や近世の石塔は、いまでもさまざまな形で転売されています。

多くは、持ち主が処分に困って売却したものですが、密かに夜中にトラックで墓地などに乗り付け、数人で盗んでいくという悪質な事例もあります。

このため、私のブログでは、人目がつかない場所にある貴重な石塔については、場所を特定されないように、詳しい説明は避けています。

もちろん、多くの石屋さんは、正規の手続きで仕入れています。
しかし、それならばなおさらのこと、本来は、どのような場所にあったものなのか、少なくともそのぐらいの記録をとって、売却していただきたいものです。

また、石塔を売却するかたのなかには、うちの墓地にあったものなのだから、売るのは自由だと考えるかたもいらっしゃいます。

しかし、たとえそのかたの墓地にあった石塔だとしても、その家の祖先の墓とは限りません。
むしろ、いま残る石塔は、現在の土地や墓地の持ち主のかたとは、関係がないことのほうが多いのです。

たとえば、ある旧家がつぶれて(つぶれる理由としては家族が絶えた、借金で村を出たなどさまざまな理由が考えられます)空き家になると、そのあとに入った新しい家は、古くからある墓地を自分の家の墓地として再利用します。
このため、時代がたつにつれて、昔からあった石塔も、いつのまにか自分の祖先の墓として伝えられていくようになります。

また、村のなかに散在していた石塔を、寺や神社、あるいは墓地に集めることは、ふつうにおこなわれています。

ときには、意図的に、みずからの家を由緒ある家だと主張するために、ほかの場所にあった石塔を自分の墓地に持ってきて、我が家は武士の祖先だと誇ることもあります(武士が偉いわけではないのですが、日本には武士が偉いと思っている人がまだたくさんいます)。

そればかりか、自分の家の墓をある武将の墓にしたてあげ、町の文化財に指定させてしまったという悪質な事例すらあります(これでは歴史の偽造です)。

このように石塔は、最初に建てられた場所に、いまもそのままあることは少ないのですが、それでも重たい石を遠くまで運ぶことは難しく、たとえ移動したとしても、村のなかを大きく出ることは、あまりありません。

また、あの石塔は、どこどこからここに移したといった伝承が村のなかで語られていることも多く、たとえ移動していても、もとの位置は、ある程度は予測できます。

しかし、現在のように、業者によって転売されたら、もう所在の確認はできません。

その意味で、売却するかたも、購入する業者のかたも、地域の歴史を読み解く大切な文化財を売買しているということを、そのことで地域の歴史を解明する手かがりを奪っているということを、もっと強く認識していただきたいのです。

そしてなによりも、石塔は、その土地に関わる人物の墓であり、供養塔である、つまり信仰の対象であったことも忘れないでいただきたいのです。

石塔の転売は、地域の歴史と文化財を破壊する行為です。
ただちにやめてください。

また地域のかたがたは、村のなかに残る石塔が、たとえ一部分であったとしても、中世、その土地に確かに生きた人がいたという大切なあかしとして、これかも大事に守り続けてください。

よろしくお願いいたします。





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最終更新日  2005.08.26 17:17:49



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