2007~再び花子と
旦那様と一緒に、赤ちゃんの亡骸を受け取りに行った。白い箱を受け取り、とても軽く感じた。 火葬場で最後のお別れをする。灰になったわが子は、説明されても解らないくらい小さかった。つまんだら、崩れそうだった。 火葬場を出ると、水色の雲ひとつない綺麗な空だった。形容しがたい、綺麗な水色の空。今日、初めて見上げた空。 トンボがたくさん、たくさん、飛んでいた。これから、トンボを見る度、きっと私は思い出す。この子と、この子が教えてくれた事を。 お寺で、お経をあげて頂いた。旦那様と義母、そして、花子。読経の間、開け放たれたこの場所に、トンボが迷い込んできた。 とても小さな骨壷に納められたわが子。旦那様は「光」と名前を付けた。毎朝出勤の前に、光の前でお線香を焚き、手を合わせる。これが、雪子と3人の日課になった。雪子は、ちょこんと正座して、小さな手を合わせる。「ひかるちゃんが、ありがとうって。」と、言う。 義母には、随分助けられた。光を身籠ってから、そして亡くしてから。火葬した日、桔梗の花を供えてくれた。美しい紫の花を、小さなミルク瓶にさして。光を想って、ミルク瓶にしてくれたのだ。そして、お線香を焚いて下さった。お盆には、お菓子をお供えして下さった。義母の深い思いに感謝した。 暫くは、毎晩涙が出た。光の為に、買い集めたものを、まだ見る事が出来ない。何かにつけ、思い出した。長い時間を要しなければ、解決する事はできないのでしょうね。 以前の毎日に、少しずつ戻りました。花子の毎日に、ため息をついていました。ですが、感情のままに怒り付ける事は、しなくなりました。花子と向き合って話す努力をしています。 ある日、花子と話していて、光の話になりました。 母さんはね。光を妊娠したことがとても嬉しかった。光の超音波の画像を最初に見た時涙がでたの。それ位、嬉しかった。あ~、早く会いたいって。思ってた。でも、居なくなってしまった。とても、辛くて、一緒に死んでしまいたいとも思った。そして、そんな時にも、言う事を聞いてくれない花子が憎らしかった。もう、花子の親なんか出来ない。花子の顔も、見たくないって。思ってた。花子が、ばあちゃんに、「母さんが怖い。」って、言ったでしょう。あの頃よ。あの頃、そう思ってた。だけど、母さんは間違ってた。光に教えてもらったの。この世に生まれた全ての命に、大事な意味があること。だから、花子が生まれて、母さんの子供になった事にも大事な意味があるって。もう、一回。がんばろうって。花子を、ちゃんと育てようって。そう、教えてもらったの。母さんもまだまだで、怒りすぎたり、言いすぎたりすると思うけど失敗も、一杯すると思うけど、がんばるから。母さんは、厳しいけど。それが母さんのやり方よ。親は、子供の為に一生懸命なの。好き勝手させて、まともな子供に育つとは思っていない。他人様は、だれも教えてくれない。こんちくしょうって、思われてもいいの。厳しくしても、花子の為になると思ってる。いつか花子が人の親になって、母さんが言った事が、解ってくれたらいいの。 花子は、私に、とてつもなく冷たくされた頃を思い出し納得してくれた。そう、思う。 いくら話しても、親の気持ちなど子供に理解させるのは、まだまだ難しいでしょう。ですが、私達の言う事が、間違いでない事を自分たちの為であった事を一つ一つ理解させるために、繰り返しが必要なのですね。 そう、親にとって子供は幾つになっても、子供なのです。 そこに、血のつながりなど必要ないと、思いたい。 ************花子の全てを、丸ごと受け止めるほど私は、まだ人間が出来ていません。 これからも、いろんな感情が浮き沈みしながらやっていくと思います。 継母だけど、花子の親です。それも子育て、ですよね。