カテゴリ:ショートストーリー
残業が続き 休日出勤を数えることにも 嫌気がさしてきて
もはや ヤケクソ気味に毎日を送っていたある日、 深夜にポストを覗いたら 寿マークの封筒を見つけた。 2年前にお別れをした彼の結婚式の案内だ。 ”お前よりも大事だと想うコができてしまったので もう 一緒にいることはできない。 別れて欲しい。” 薄々 妖しいヤツの行動に いっちょ前に オンナの カンってやつが働いていた。だが証拠がないことから 「気のせいかも」と自分をなだめていたのも事実。 だけど そんなふうに面と向かってあっさり言われてしまうと 何も言い返せなくなった。 昔から 強い主張と 整然とした物言いには弱いのだ。 私には 彼と同じくらい気になるオトコこそ いなかったが 仕事の面白さやのりはじめた交友関係を広げることに プライオリティが高く 彼のことはいつしか よくて3番目になっていた。 きっとバチが当たったんだ と反省はしたけれど 恋ラブラブ期の 真っ只中にいるフレッシュな(見えない)彼女にタイマンを張り 奪い返すほどの情熱もなく、あっけないほど 物分りのいいオンナになった。 自分でもあきれるくらいの清々しさで 微笑みながら別れたのだった。 よくなじんだTシャツを失くしてしまったような寂しさは 思っていたより 時折 私の心を痛めつけた。 映画は一人で観にいける、けれど観た後、同じ感覚のヒトと話がしたいと 思うとき。 時間も気にしないで、言葉を選ぶという神経を使わない飲み方をしたいとき。 とてつもない孤独な場所があるのだということが 身にしみてわかってしまった。 何人かの新しい恋人を出会い、ときめいたり、喧嘩したり、ほっこりしたり。 また インターバルだな、そう思っていた矢先の招待状だった。 昔のオンナを結婚式に呼ぶヤツってどうよ? 寂しいような 誇らしいような感じ??? 別れてから 1度だけ 街で彼を見かけたことがある。 多分 待ち合わせなのだろう。珈琲ショップのテラス席で 文庫本を広げ、2~3頁めくるごとに 腕時計を眺めていた。 声はかけなかった。 「あなたと会わなくなって さみしいよ」といってしまいそうだからなのか 意地悪なことばを 投げかけてしまいそうだったからなのか。 ”あぁ このヒトとおつきあいしてたんだな” その事実だけを 舌の上でころがして ちょっとなつかしくしんみりしただけ。 明日は休日出勤をやめて ドレスを買いにでかけよう。 幸せいっぱいな2人に負けないような ゴージャスなドレスを手に入れるために。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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