カテゴリ:ショートストーリー
*ショートストーリーはノンフィクション。
ベースやポイント的に 個人的な体験や気持ちがある場合もあり。 バックナンバーは「フリーページ」です。 「頼むから見捨てないでくれ」 散々酔っぱらって、帰途の道端でぽつりと奴が言った。 なんだか今夜は小さく見える奴の背中。 なんて返していいか わからないので そのわき腹におもいっきり パンチをしてみた。 「ぐぉっ」と倒れこんだのは 酔っ払いすぎなのか? 恥ずかしさにいたたまれないのか? まだ男の人がよくわからなかった頃は(今でもわからないし。 わかりたくもないのだが。) 好きな人ができて 相思相愛になれば 親から受けてきた愛情以上の なにか とてつもなく大きな優しいものに包まれるような世界が待って いるのだと 何の根拠もなく思っていた。 だけど、現実は どちらかというと 大きな外見に似合わない女々しさや、気弱さを、非力ながらなだめすかし 脅す、そんな感じだ。 「オトコってやつぁ、どうしてこうなんだああ」 と 酔いに任せて言い放ってみたら 「そんな情けないオトコ、見限ったらいいやんか」 15年来の親友は吐き捨てるように言う。 情熱に火照らされて、「自分のオトコ」だと思った男はそう簡単に 捨てることは難しい。 正直、1~2年つきあったオトコよりも10年、20年つきあってきた 女友達の人生における重要性は大きい。 持ちつ持たれつ、ギブ&テイクがはっきりとわかる。 でも、外では強がってるくせに 私だけに弱みを見せる男に弱いのだろう。 ホントは私でなくてもいいくせに、とか ひとりでも大丈夫でしょう?とか心ではつぶやきながら。 そうやって私を 「強い女」に仕立てるのは 正直 勘弁してほしい。 私だって 思うほど強くないのだ。 どんどん強いフリがうまくなって、だんだんキャパシティが広がっていくような 錯覚を覚える。 オトコたちは それでいいかもしれないが 女にだって泣きたい夜はあるのだ。 泣き顔を見せれるくらいの 隙があったっていいじゃないか。 仕方ないので 泣くときはひとり。 身体をふるわす嗚咽が漏れ聞こえないよう ふりしぼるようにぽたぽたと しずくを落とす。 泣くってことは一種 デトックスだから まだ涙が出るうちは大丈夫、 なんてへんてこなところで安心する私はやはりおかしいのだろうか? 明日も明後日も 1年先も 10年先も 一緒に歩いているのだろうか。 今は「つっぱりくん」の私が かわいく甘えられる時も来るかもしれない。 彼が倍くらい たくましくなって「お願いだから嫌いにならないでね」と 言えるかもしれない。 自分のことに一生懸命になりすぎると。知らず知らずに そばにいる人を傷つけてしまう。 彼がつらいときもあれば、私がダメダメなときもある。 それを許しあえたり 支えあえたりできれば、それは理想かもしれないけれど。 少女のころ 憧れていた恋愛のイメージとは 全く違うことにずいぶん前から 気づいてしまった。 それもありか、とよく言えば分別のある 悪く言えば あきらめのいいオトナになった。 ぐるぐる酔いがまわって ちょっと情けない彼の手をとって 歩いていこう。 夜空がなんだか透明、明日は晴れるに違いない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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