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テーマ:最近観た映画。(40130)
カテゴリ:あの戦争を考える
12日土曜日、封切られてすぐに観に行ってきました。
「神風特別攻撃隊」を知ったのは10数年前、 母の故郷である鹿児島県川辺郡知覧町へ行ったとき知覧特攻平和会館を訪れたのがきっかけでしたが、初めに「往路の燃料と爆弾を積み操縦しながら自ら敵に体当りするのよ」と母から聞き「えぇ?」と驚き恐怖を感じたのを憶えています。当時私は二十歳そこそこ、平和ボケしまくりの世間知らず。歴史で戦争のことは学んだはずですが世界大戦に至るまでの経緯もよくわかっておらず、「世界戦争=広島・長崎への原爆投下」と自分の中での戦争の括りは非常に狭く偏ったものでした。 ただ、歴史に興味がなかった私でも大戦の悲劇について知る機会はありました。小学校の図書館には「ヒロシマ・ナガサキ」という原爆の被害を写真で綴った本があり、背中一面に大やけどを負った女性のカラー写真や焼け焦げて縮れた子供が仰向けで亡くなっている白黒写真が載っていて図書の時間には生徒たちの間で話題になりました。私もそうでしたが小学校中学年程度の子供たちは皆、本を開くのさえ恐れていました。他に「ガラスのうさぎ」や「はだしのゲン」を読み、要するに一般市民の悲劇を知る機会はあったのですが兵士たちに関する児童書はあまり無かったように思うのです。 母のふるさとである知覧の町は、里帰りした母が私を産みそのまま出生届を出した地でもあります。だから私の戸籍には知覧町の名が載っています。少なからず所縁があるのに少年飛行兵たちの悲しい事実を知らずに過ごしてきたことをその時恥じたのでした。この美しく小さな、箱庭のような知覧の町からたくさんの若い命が飛び立ち南の海で散っていったこと。平和会館内の遺影や血染めの遺品は衝撃的であり私と殆ど年齢が変わらない彼らの確固たる信念と清らかな心に驚愕しました。そこらじゅうに悲しみと慈愛が渦巻いており、会館を後にするとき私はひどく落ち込んだ気持ちになったものでした。 時は流れて今年4月、千鳥ヶ淵に桜を観にいったときに千鳥ケ淵戦没者墓苑と靖国神社へお参りし、遊就館(境内にある軍事博物館)を初めて訪れました。靖国そして遊就館については様々な捉え方がありますが、戦犯合祀、軍国主義等の問題は永遠に解決しないように思えます。私たちは「靖国で会おう」と約束し死んでいった人たちの魂を慰霊する目的で訪れました。 遊就館では少し前に話題になった映画「硫黄島からの手紙」の影響でしょう、陸軍中将栗林忠道についての一角が賑っていました。私は様々な遺品・展示品を順にみていったのですが、花嫁を迎えることなく逝ってしまった我が子を想う母から「日本一美しい花嫁人形を」と本当に綺麗なお人形が奉ってあるところで、堪らず泣いてしまいました。手前には木彫りの小さな母熊と小熊が飾られており、その素朴な熊の置物からは母親の優しい気持ちが沢山溢れているように感じられたのです。 それから人間魚雷「回天」に搭乗した方が亡くなる前に自宅でひっそり吹き込んでいた肉声。その心の声はあまりにも辛く最後まで聴くことができませんでした。 あらためて戦禍の悲しみに直面した私たちは「知覧を舞台にした映画が公開されるから観てみてね」という母からメールがあったとき「必ず観にいくからね」と返事をしました。 「俺は、君のためにこそ死ににいく」 この作品は多くの特攻隊員を息子のように世話し見送った鳥濱トメさん(岸惠子)が語りべとなり進行していきます。構成などは一切気になりませんでした。とにかく少年飛行兵たちの物語に夢中でした。馬鹿かと思われるかも知れませんが私は始まって1分もしないうちに泣いてしまいました。キャストが映し出され「この人たちが死んでしまうんだ」と思うと実際に知覧や靖国で目の当たりにした若者たちが否応なしに重なります。特に有名な「おばちゃん 俺はホタルになってここへ戻ってくるよ」というシーンでは俳優さんがハマリ役で、「俺が死んだら皆俺のこと忘れてしまうんだ」とトメさんに切々と語り今にも泣き出しそうな表情には私も堪えきれませんでした。そんな彼らの特攻シーンは本当に辛く、途中で「もうやめて欲しい」と本気で思いました。 歳を重ねるごとに他人の苦しみや悲しみを理解できるようになってきました。 戦後に生まれ、日本が世界唯一の原爆被爆国であったとしても昔むかしの話だと、現在おこなわれている戦争はどこか遠い国での出来ごとだと曖昧でおぼろげなところで認識をするのは本当に恥ずべきことと感じるようになりました。 史実は史観によって変わってきます。けれど一つも無駄にできない命が数え切れないほど失われてきた事実は「事実」です。その命には必ず悲しみの念があり物語があります。 私たちは世界平和にむけて長い長い道のりを歩んでいかなければなりません。人類が繁栄する限りずっとです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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