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カテゴリ:なんでもレヴュ~
アメリカ、特に私が住んでるような田舎では和書を入手するのは難しく、出会いがあったらラッキー、値段と好みが許容範囲ならとりあえず買っとけ!という感じです。アメリカのメルカリでもおそらく在住の日本人が古本をまとめて出品している事があり、澤村伊智という作者の、あらすじだけちょっと見て怖そうなシリーズ三冊を購入しました。
最初に「ししりばの家」を手に取り、あまりの面白さに予定してた家事をほっぽり出して(まぁいつもの事だけど)読み通してしまいました。あたりだ~! これは私だけかもしれないんだけど、ホラー系って本でも映画でも見てる時は面白いんだけど、ストーリーは一昨日の夢のようにさっぱり忘れてしまい(歳かなあ)、印象だけが残る感じ。霊的な事が日常とかけはなれているせいかな。 とはいえ「ししりば」はすごく斬新な感じがして、読み進めていても終わらないでほしい、もっと読んでいたいという高揚感が続くような楽し怖い本でした。つじつまも合うし、伏線的な物もきれいに拾われ、読後感も良かった。 んで、昨日最初の20ページくらいちょこちょこ読みながらも一気に読む時間が無かった「ぼぎわんが、来る」を読みながら寝ようと思ったのですが、読み切って朝になってしまいました。 音楽やらない人が、どうしてとある曲に感動を覚えたのかを説明しずらいように、どうしてこの人の作品が斬新に感じるのかも私には説明しずらいのですが…。まずタイトル。「ししりば」も「ぼぎわん」も、そしてまだ一冊読んでいない「ずうめ(の人形)」も。作中でも意味をなさない言葉がいくつか出てきますが、ただあいうえお表に鉛筆を倒して決めたようなランダムな言葉でもない。日本人が聞いて、なんとなく不吉なような、邪悪のような響き。同じ一見意味不明な音の並びだけど格好よく響くキラキラネームの真逆な感じ。 この何となく日本人の精神に響く不気味さがストーリーの根底を流れていて、だんだんそれが明確になっていく感じ。最初はとある新婚さんが子供を授かり、その子が2歳になるまでの一見普通の幸せそうなストーリー。もちろん要所要所で不気味な出来事や事件が起きるので読者が離れていく事もないだろう。 最初は絶対に家族を守ると誓うイクメンパパの奮闘記なんだけど、次の章になって奥さん目線になると、同じ話なのに全然違う視点に変わる。うち、子供いないけど、この夫婦に似てるなー!と思ってしまった…。既婚女性はみんな感じる事なのではないかな。 で、まあ、この家族のひずみが増して増して、おそろしい化け物に憑りつかれる羽目になる。化け物も一応誰が呼んだとか、弱点とか、接する時の対策とかが理論だてられていて、お化けだから何でもアリ!って感じでもないのが面白い。お祓いとかおまじないとか古来のお守りとか呪詛とか、そういうスピリチュアル小物みたいな興味深いアイテムもちりばめられ、これは創作なのか、私が知らない日本の文化なのかと思わずググってしまう事も多々。お化けは鏡と刃物を嫌うとか…。聞いたことあるような、無いような、という境目を捉え、描いて読者の興味をそそるのがすごいなと思いましたね。 お化けの存在自体も、昔の口減らしのための間引きや姥捨ての風習を引き合いに出して、そんな現実の悲劇の産物なのかそうでないのか、のグレイゾーンを大いに利用してリアリティを出している。かつ、お化けが電話してきて名前を呼ばれたり、亡くなった人と生前交わした覚えのある会話を再生されたり、単純な怖さもあります。リングみたいに 「あと3日~」 みたいな電話も怖いけど、単純に家族の名前を一人ずつ言われたりするのもこえー! んで、読み終わってからこの原作の映画があると知りまして、えー、大きな声では言えませんが、ネットで見れちゃったんですね。4年前に発表された「来る」という映画。仕事前にブックマークしといて帰ってきて見るまでむっちゃ楽しみだった~。 浦島太郎子なので最近の俳優とかの顔が同じに見える(笑)。妻夫木なにがしとか岡田准一とか、名前は何となく見るけど顔は全然知りませんでした。松たかこは知ってるけど、他の知ってる俳優はみんなおじさん、おばさん。もちろん昨日読んだばかりの本とは全然イメージ違いましたが、よく考えたら主役級姉妹の他にはありふれた感じの人物が多かったので違和感はそんなになかったかな。 映画では時間や表現の都合でいろいろ端折ったり、登場しない人を出したりするのはわかりますが、なにせ小説でのぼぎわんの考察がとても深かったので、映画では全然説明しないな、みんな(視聴者)はこんな展開でついていけるんか?と心配になってしまうほど。未熟で無気力な妹霊媒師がなぜ数時間で心変わりして家族に自ら入り込んだのか、なぜ助教授が家族に呪いをかけたのか(大学教授が呪詛とか信じるか??)、人やお守りを「噛んだ」のは何者なのか。一応論理的なお化けと書きましたが、映画の後半では手順も伏線も無く、化け物にとって邪魔そうな人達が事も無げにバタバタやられたりするのはホラー映画の死人ノルマの達成のためのやけくそ手段としか思えん... さすがに小説のざわざわ感は感じませんでしたが、最後に映画オリジナルの悪霊のお迎え&除霊の儀式は圧巻。これは映像でしか表現しきれないかな。神社仏閣の関係者がみたらぶっ倒れそうなシーンです。外国人が見たらエキゾチック・ジャッペーン!と言って喜びそうだけど。 どうなんだろ。やっぱ内面の葛藤とか夫婦のすき間とか、そんなうだうだした(でも物語には重要)闇を追っていたらリングや呪怨に続き世界から期待されるジャパニーズ・ホラーに応えられないので、しかたなく表面的な怖さ・斬新さを中心とした映画に仕上げた、という感じがしました。本ではホラー界のジミヘンのような革新さが感じられましたが、映画ではあんまりだったかな。 3冊目の「ずうめの人形」を読むのが楽しみ! P.S. この作者さん、文章中にも改行で不気味さをだしたりして遊び心があるのですが、タイトルでのコンマの使い方とかも味があると思います… …が、私はいつもこのタイトルを見ると、どーしても 「ぼぎわんが~~~、くー----るー----!」 と ザキヤマ読みになってしまうのです(涙)。 (やっぱCMやってる)。 PPS、今日読み始めて気づいたのですが、「ずうめの人形」ではなく、「ずうのめ人形」でした!失礼!ヘコリプター!言うてる幼稚園児かっ!? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2022.05.18 14:56:01
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