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カテゴリ:書物
「リンゴが教えてくれたこと」という本を読みました。
青森県の故郷でリンゴの栽培を中心とした農業に従事している木村秋則氏が綴った作品です。 これまで多くのリンゴ栽培農家が農薬と肥料に頼った生産を続けていましたが、これらの化学薬品の被害にあっているご自身の家族の姿を見て、「何とかして現状の農薬・化学肥料漬けのリンゴを栽培するのではなく、安心で美味しいリンゴを作りたい!」という思いで、無農薬・無肥料のリンゴ栽培を始めるのです。 ご近所の同業者達からは村八分状態となり、「木村は頭がおかしくなった」と揶揄されながらも、自分が信じる道を貫くために、勉強と実験を重ねて無農薬・無肥料のリンゴ栽培にチャレンジし続ける木村氏。 収穫もない年が続き、経済的に限界を迎えながら、黙って応援してくれるご家族。 そしてチャレンジを始めて6年目のある夜、思いもかけない大きな気づきが木村氏に舞い降ります。 遂に責任を取って死ぬ覚悟でロープをもって山の奥深くに入っていった木村氏の前に現れた、立派な実生のドングリの木。 こんな山奥で農薬も肥料もないのに、これほどまでに見事な枝ぶりやみずみずしい葉を茂らせているのはなぜか? 自殺をする予定で入ったその山奥で氏は、自然のサイクルで創られた母なる土が全ての恵みに繋がる答えだ、と気づくのです。 「そうだ、この土を作ればいい」と信じて、山や自然が当たり前のように繰り返している土作り(落ち葉や枯れ枝が朽ち、それを微生物が分解し土を作る)をリンゴ畑に応用し始めます。そしてその過程は、これまでの農業では当たり前に行われていた耕土や栽培の方法と真逆のプロセスでした。 これまで常識とされていた栽培方法や耕土に対する固定概念を取り払い、自然の声に耳を傾け、リンゴや作物の気持ちになって土作り、畑作りを続けた結果、チャレンジしてから10年目、遂に無農薬・無肥料状態にした木村氏のリンゴ畑が満開のリンゴの花で埋め尽くされたのでした。 木村氏とリンゴ畑・木との深い関わりと根気強く続けた対話の軌跡から、我々は学べることがとても沢山あるように思います。それは親子や夫婦の関係であったり、会社の人間関係だったり、自分が目指す仕事への取組み方に繋がるように思えてならないのです。またそれは今の社会のあり方や政治にもいえるのかもしれません。 一般的に日本経済を樹木に当てはめると、まず中央に太い幹(首都)があり、そこから枝(地方都市)や葉(町や村)が伸びている、と考えがちです。しかし、本当は発想が逆で、実は末端の葉っぱ(町・村)がデンプンを作り、枝(地方都市)を通して幹(首都)を育て支えているのだ、と氏は強調するのです。 どのような立場にいるかたが読んでも、我が身に置き換えて考える機会に恵まれる一冊ではないでしょうか。折を見て、読み返したい本の一冊に出会いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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