きらびやかな店内をうっとりと歩いている私は制服姿だ。恐らく休憩中だろう。透明店内バックを持っている。SHOPに戻ると先輩と後輩が話し込んで いる。話題は会社に提出する賃貸契約書等の書類についてだ。もう春かぁ~と思う。私は間もなく引っ越しだ。先輩はどんな所に住んでるんですか?後輩がキラ キラ目を輝かせて聞いて来た。先輩は笑っている。うち?風呂なしだよえぇーっ?お風呂ないんですかぁーっ?
大丈夫ですかぁー?彼氏とか支障ないですかぁー?
女子としてどうなんですかぁー?
実際私は風呂なしアパートを転々としていた。
理由は安いから、そして銭湯通いが好きだから。
段ボールが積み上がった部屋に戻ると、次の部屋を想像した。
実はまだ決めかねている。候補は2つ。
明日休みを取って、もう一度内覧に行く。
1つは山手線内にあるとは思えない牧歌的な土地にあった。
近くに銭湯はないが、裏手に町営の無料温泉が湧いている。
もう1つの物件は目の前が海。銭湯も酒屋も近い。
重ねて言うが風呂なしだ。
高大な土地に立つ不似合いな木造のアパートには、
農学部の学生が多い。なるほど、駐輪場にコンバイン。
大家さんも兼業農家であった。部屋を見せてもらうと
なかなかよい。1Fなので土間もある。うっとりしていると
ネズミが出て来た。…ねずみかぁ、と思っていると、
今度はねずみが大挙して土間を横断している!!!
ちょっと無理かも…(=_=;)魅力的だったが断念。
気を取り直して品川方面に向かった。
次の物件はオーシャンビュー。部屋と同じ広さのウッドデッキが砂浜に突き出ていて、砂落としの簡単なシャワーが付いているという。わくわくする。
8畳間の広い和室の障子を開けると、そこはもう、ワイハ!
ハイビスカスにサーフィン、トロピカルジュースな光景が広がる。
慣れない景色に興奮していると、不動産屋が
あ、部屋間違えました。隣ですお客さま、と案内する。
はいはい、と不動産屋に付いて隣の部屋に入って行くと、
友達のゴーちゃんと○梅がいた。あれ?どーしたの?と聞くと。
私達、ここ住む。と笑顔。
いやいや、私契約しようと思って来てるンだけど…不動産屋を睨む。不動産屋は、お友達なら是非ご一緒にどうぞ!と逃げて行った。
○梅は結婚式の時の写真なんぞを飾りだした。
ねぇねぇ、旦那と家族はどうすんのよ、と私。
○梅は夕方帰ってくるよと満面の笑顔で答えた。
この部屋もダメか…と夕日の綺麗な渚を眺めながらため息をつく。