KAY←O －ノックアウト－

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• アージ２１１６やってみようと思います

  昨日はさわりを読んで、感想、コメントくださってありがとうございました。やっぱこんなマニアックなの、ドン引きかなーって思ってたんですけど、以外や以外、読んでみたいとおっしゃっていただいて、「驚い」て、そして涙が出るほど「嬉し」かったです。テーマは「ロボットの視点から見た人間、もしくは人間世界」そして「感情」です。ここでは「感情」はアージ君がシステムとして行動選択をするためのショートカットにすぎません。小難しいことも出てきますが、なるべく噛み砕いて説明出来ればなと思います。（ミツル。にその力量があるかは大問題なのだけど・・・）真名さんから質問いただきましたけど、ＢＬにするつもりです。ロボットってもしエッチするとしたら、何を考えるだろう？って日々にやけつつ妄想しちょります。うひひひひ。ちょっとププって笑えるようなそんなＢＬにできればなと願ってます（願ってるんかい）良ければお付き合いください。

  2006年06月12日

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• 管理人バトン

  高瀬Ringさんからバトン受け取りました。遅くなってすみません。「管理人の輪を作ろうバトン」※バトンを受け取った方は下記にHNの記載をお願い致します。 ・新空ちはら→佐和コウイチ→佐原→小祭→まめ→新空ちはら→佐和コウイチ→藤ちょこ→晴十ナツメグ→りっぷ→綾稀りお→冰雨あみる→東京→麻魔零→ちゃみ子→こえ→MINORI→結城のえる→麻宮もえ→立花遥→如月夜弥→うたげ→マチ→ニットウ→マソホ→リョウ→小雪→朝倉シゼ→夏吉→ヌマ→なおりん(*mm)→kaorin215→柊リンゴ→高瀬RING→ミツル。ちょっとたどってみたが、ここが限界。1.貴方のHNを教えてください　ミツル。です2.貴方のサイト名を教えてください　ＫＡＹ←Ｏ（ノックアウト）です3.いつからこのサイトを始めましたか　１１７日前だそうです4.管理人暦はどれくらいですか　１１７日です5.サイトのジャンルや属性について割りと詳しく教えてください　同人小説、ジャンル：大きく振りかぶって（アベミハ、ハナタジ）のはずが、オリジナルＢＬ小説に比重が傾きまくってます。属性？って何？6.訪問者様に是非行くべきだ！！と貴方がおすすめできるサイト様を必ず5つ書いてください。　行くべきだ？おすすめってことなら★おお振り系POSHBOYさまhttp://poshboy.sakura.ne.jp/index.htmここのスコアデータはすばらしい。大変ありがたい。おお振り記録函http://ofdatabox.hp.infoseek.co.jp/私ってデータに弱いのよね。こちらも素晴らしいデータベースをお持ちで。★オリジナル小説系LOVERA'S FIELDSさまhttp://ha5.seikyou.ne.jp/home/yokoxxx/index2.html休止中ですが、novel、diaryなどは読めます。めちゃめちゃはまりました。紅葉屋本舗さまhttp://www001.upp.so-net.ne.jp/momiji/index.html野球係オリジナルＢＬ小説「ダイアモンドスクランブル」大好きです。泉の底さまhttp://9yama.ojaru.jp/京山あつきセンセのページ。ただのファンです。野球系ＢＬ漫画あります（どんな球児好きやの、私）夏コミ行くとご本人に会えるかも。私は３回ほど会いました（笑あえて周りの人のページははずしました。私のページのおすすめからたどってくだされ。7.知り合いの管理人様に繋げるだけ繋いでくださいまだ回ってないのは・・・？？フジハル！たのむわ～。

  2006年06月11日

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• アージ２１１６：僕が生まれたわけ

  こんばんは。今日会議中に思いっきり眠りこけたミツル。です。（だって昨日はＦ１を今朝はカブトを見なくちゃいけなかったんだもん）気づけば５月２１日が最後の休みだった・・・（気づけよそして次の休みが７月１日だということを知る・・・ゆ、有給とろう。えーっと、そんなことはどうでもよくて、以下の文は新しい作品の冒頭部分なのですが、が！こんなん書いちゃって、わかるのか？説明不足でないか？どうなんだ？と？？なので、とりあえずテストのためのアップというか・・・読んでさっぱりわからない人、わかりませんと言ってくださいm(_ _)mこんな感じで暴走していいですか・・・？---アージ２１１６：僕が生まれた理由　僕だけが持っているデジタルな「感情」。　イチ－ゼロの世界で、僕は、数直線上にボコボコ空いた穴が埋められないまま自分がコントロールできなくなっていく。　ターゲットがピクリと動いた瞬間に、僕の中のコンピュータが彼の指先から足の先まで、次の瞬間の動きと角度の計算を始める。そして彼が銃を抜くより、いや、抜こうと考えるよりずっとずっと早く、計算を終えて行動に出る。彼は、銃に手を掛けたときには既に、僕の剣によって指を失っていた。そして自分の指が切断されたことに気づいた時には、既にその腕に電子ロックが掛かっていた。　「ぎゃぁぁぁぁぁ」　男が痛みを感じ始めた頃には、他のロボットたちによって拘束されていた。痛みと恐怖で眼球が飛び出るかと思うほど目を見開き、叫び続ける彼。他のロボットたちが表情を変えることなく淡々と作業を行なっている中、僕は自分の右手が「痛む」ような気がして、眉をしかめた。僕は「嫌な気分」になってその場から身を翻した。　僕の頭の中でも、彼らと同じようなコンピュータが高速で計算し続けている。　でも僕だけが違う・・・僕だけが。　前世紀、人はロボットを作るスキルを得て、街は高速化が進み、より高速に処理できる機能を持つロボットの生産が求められた。人間より遥かに速いスピードで計算することができるコンピュータ。そのコンピュータに、人間は生身ではとても太刀打ちできない。人間は自分たちの身を守るため、より優れた性能を持つコンピュータを開発し、それに自分たちを護衛させた。その社会現象は、犯罪者たちとそれらから身を守ろうとする者たちとの間で、より速い計算能力を持つロボット開発のイタチゴッコを引き起こした。　彼らはプログラムにしたがって命令を忠実に実行する。外れることはない。しかしどうしても運動能力が計算スピードに追いつかなかった。やがてロボットの行動速度を速めようとする者たちと、さらに高速に計算をすることで行動をカバーしようとする者たちとに枝分かれした。今世紀に入り、動きを速めるための研究に投資が集まり、競争が激化した。それにより、杜撰（ずさん）なロボット生産の暴走を懸念した政府は、憲法改正を余儀なくされ、ロボットに搭載する道具や機能の取締りが強化された。そのために行動を高速化する動きが頭打ちとなりつつあった。　そんな時代、世間の流行に流されることなく、１人の学者がひっそりと別路線でロボットの開発研究を行っていた。そして２１１６年、一体のロボットが作られた。それが僕、アージ２１１６。僕は、ある金持ちの家の坊ちゃんを護衛するために生まれた。　博士は僕に感情（ショートカット）を埋め込んだ。僕は他のロボットにはない６つの感情を持っている。「怖い」、「好き」、「嫌い」、「楽しい」、「悲しい」そして「怒り」。感情はある条件がそろうと、引き起こされる。僕はある感情が呼び起こされると、それにセットされた行動を自動的に取るようにプログラムされている。例えば「はじめてみるもの」、「自分より大きいもの」、「表情が動かないもの」、「赤外線を発するもの」など、僕や坊ちゃんの『危険を犯す物』の条件がリストとして用意されていて（さらに僕が経験したものをそのリストに書き加えていく）、目の前に起きている状況がそのリストに当てはまれば当てはまるほど、ヒット値が高くなる。その値が一定値を超えた時、僕の中に「怖い」という感情が呼び起こされる。「怖い」という感情が起きると、僕の行動選択は自動的に「原因を消す」か「原因から逃げる」の２つに絞られる。つまり僕は「怖い」と「感じる」ことで、考えうる他の多くの選択肢を無視して瞬時にその２つの選択肢に絞ることができるようになっているのだ。それから相手との距離、自分や坊ちゃんの身体状態などを計算して、どちらかを実行する。これら一連の流れを「ひとまとまり」にすることで計算する時間を格段に短くすることができるというわけだ。　僕は他のロボットにはないこの「感情」を「武器」に、坊ちゃんを守るために動い（いき）ている。

  2006年06月11日

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• 新しいお話の予定

  このところフリーページ、イラストなどにかまけて全然書いておりません。^^;今週末、来週は忙しいので、アップできるかわかりませんが、２作品作成予定です。【アージ２１１６】リンゴさんの「機械仕掛けのネジ」に触発されてロボットものです。１人の金持ち息子を護衛するために２１１６年に開発されたアンドロイド「アージ２１１６」と彼が護衛するぼっちゃんのお話です。かなりマニアックな話になりそうです(^^;;;なるべくわかりやすくを心がけますが、が！が！読者様を置いて暴走するかもしれません。うう・・・そうなったら「わかりません。」って言ってください（笑短めに終わらせる予定。（ミツル。の辞書に短くという言葉があるかどうか・・・）【期間限定の恋人】起きたら女の子が下着姿で横で寝てた！なんて漫画チックなことをやらかした平太（へーた）。その彼女（ルミ）から罰ゲームとして「今日最初に会う男子と１ヶ月つきあって私と同じ屈辱を味わいなさい。」と命令されてしまう。さてさて、へーたは誰とつきあうことになるのか・・・ルミはそれで気が晴れるのか・・・。とかいう話になる予定。こっちも短めに終わらせる予定。（ミツル。の辞書に・・・ryその前にやることやんないとね。あー、妄想がそのまま字になって口から吐き出されてきたら、どんなに時間が省けるか！（そんなことばっかり言ってますね・・・）

  2006年06月09日

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• 検索サイト登録しました

  【フリーページ進捗報告】架月真名さんに教えていただいた検索サイトに先ほど登録してきました。真名さん本当にありがとうございました。イラスト１枚（番外編じゃないです^^;）とバナーアップしました。バナーは自分で撮った空に文字入れしただけというシンプルなもの。200*80で作品を表現するって凄い難しいですよね。【日常】今日は師匠の５７回目の誕生日でした。私の師匠は女性ですが、ばりばりできる女です。ダイエットしてるって言うので、豆腐チーズケーキをあげました。師匠の師匠が１月に亡くなって、沈んでたんですが、師匠の師匠の奥さんが今日いらっしゃって、なんだか師匠の師匠がお祝いに来てくれたみたい♪って喜んでました。師匠の師匠は７０歳で亡くなったのですが、うちらの世界には大打撃でした。途方にくれた人は多かったようです。現にうちの師匠はしばらく働けんかった。今師匠が死んでしまったら・・・うちらは生きて行かれないなぁ。こんなんじゃいかんとは思うのですが、ミツル。は遊びたいがゆえに、責任を負う仕事をひたすら避けてます。もうちょっと、あと１０年、いや、あと５年は遊ばせて～。お願い師匠、ずっとずっと長生きしてミツル。を遊ばせてくれ。（親不孝者）

  2006年06月08日

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• フリーページ公開

  遅くなりましたぁ！一応文は一通り移動しました。始めのほう、ちょろーっとイラストとか入ってますが、気のせいです（笑ってか、何？あの大仏頭。描いてて楽しくなっちゃったですよ？しかし後で気付いた・・・バイクで来てるんじゃん。メットかぶってんじゃん。orz彼の頭は形状記憶（by プロディア）でできているということで！番外編にエッチシーン追加しました。あ、ごめんなさい、マモちんの方じゃないです（笑よかったら行ってやってください。そしてリンクバグ、文字バグなどありましたらご連絡をばよろしゅう。フリーページの君が思うほど・・・こちらから

  2006年06月07日

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• フリーページ進行状況２

  ただいま番外編にエッチシーン挿入中です（笑そういえば、フリーページ作る際には書くとか言っていたのを思い出しました。イラストは疲れたのでまた今度（はやっアップした後、密かにこっそりちょっとずつ挿入していくって言うのもありかなと、１人でニシシシと笑っております。あ、ちょっと変態気味ですか。いい加減アキラたちにすがってないで新しい話を書いていきたいとも思いますよ。でもフリーページに話を書いていったら、ブログには何を書いたらいいんだろう・・・うーむ。

  2006年06月06日

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• フリーページ進行状況

  今日で終わってしまうはずだったフリーページ作成は全然終わってないです。なぜなら、イラストに夢中になっている自分がいること・・・どうしても気に入らない回を手直ししたいんだけど、気に入らない回だからなかなか思うように書けない。ってこりゃ、文章の問題じゃなく構成の問題か・・・？根本から見直し？いや、それはもう無理。ってなわけで、今週も引き続き・・・。だけど、今週末から来週いっぱい掛けてやらなきゃいけないことが山のようにあるわけで、やりたいことをやるためには、お仕事というかやらなくちゃいけないことをきっちりやらなきゃいけないわけですよ。やりたいことだけやっていたい。（いや、やらなきゃいけないことも、基本的にはやりたいことのはずなんだけど・・・）ああどうして１日は２４時間なんだ！もっとくれ・・・。時間を貯金したら利子をつけて返してくれ、灰色の男たちよ。とか愚痴行ってる間にやれ。よし、やる。

  2006年06月04日

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• 今朝考えたこと

  毎日ただただ書きたいことを書き殴っているわけだけど、つねづね疑問に思っていたことがあって、それは、時間を掛けてじっくり書いた方が、いいものができるのか？ってこと。つまり以下のような法則が成り立つのかってこと思いの丈をぶちまけるかのように書き殴る＝量は増えるがいいものはできないじっくり時間を掛けて書く＝量は少ないが質のいいものができるでもやっぱり練習とか訓練って言葉があるように、繰り返してやっていくうちに上手くなっていくという考え方もあるわけですよ。書かなくちゃ上手くならないっていうこともよくいわれるわけですよ。で、最近「書きたがる脳」という本をチラ見しました（※読んでません）ハイパーグラフィアっていう書かずにはいられないっていう状態があって、それは脳に損傷を受けることでおきてしまうこともあるし、精神的なことで起きることもあるという状態なんだけど、そういう状態の人が決して駄文ばっかり生み出すわけではない。アイザックアシモフは死ぬまでに４７７冊の本を書き残したけど、量と質は両立している。書きなぐることは決して駄文ばかりを生み出すわけではない。（質と量を両立させるにはセンスが必要だとか、生まれ持った能力が必要とは言いたくない。努力が適切なベクトルを向いていれば誰でもできるはず。と思いたい。）けど、私はただただ書きなぐっているだけでは上達しないだろうなぁとも思っている。上達するにはリフレクション、反省が必要だとも思う。頭の中の妄想はものすごくでかい。それを文字と言う媒介で表現する。それは近似であってそのものではない。いかに近似できるか。そこにはいろいろな知識が必要で、自分の文を分析するスキルも必要だと思う。第１に人間っていうのは、人はどういう表現をどうとらえるのか、どういう状況でどういう言葉を選ぶとどう受け取られるのかという分析、知識が必要になるし、第２に自分が今書きなぐった文章がそれに沿っているかという分析スキルが必要になる。そして第３に自分がそれらをどれだけ適切にできているのかと言うメタ認知スキルが必要なわけだ。で、それらが上手く適合したときに、素晴らしい作品が仕上がるかって言うと・・・そうでもない。そこが不思議なところ。D.A.ノーマンがエモーショナルデザインと言う本を書きたくなる気持ちは良く分かる。人間って感情的な側面が大きいので、感情的に捕らえる部分も大きいのだ。じゃあ、感情的に書き殴ったって良いじゃないか・・・繰り返し。なんてことを、朝一番に考えていたら遅刻した。

  2006年06月02日

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• えいち・てー・えむ・える

  たった・・・たったこれだけやるのに二日かかっちゃった・・・ソフトないんで、全部直打ちしたら、まちがってるところがわからないことわからないこと。ソース見ないでね・・・汚いからorz君が思うほど僕は君のこと好きじゃない

  2006年06月01日

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• 一度きりの代役

  フリーページができないので、日記にて更新。番外編その２、かな。さて、誰の話でしょうか。---　「・・・渡辺さんですか？」　目印の経済誌を持って、約束の場所でそわそわしている僕に、彼の方から声をかけてきた。　「サトル・・・君？」　想像したよりずっと大人びた雰囲気を佇ませて、彼はニッコリと笑った。プロフィールだと２２歳だということだったけど、２８の僕とそんなに変わらないんじゃないかと思えた。モミアゲから頬にかけて生やされた髭がきちんと手入れされている辺りが、大人のおしゃれって感じを演出していた。　「行きましょうか。」　行く方向を指差されて、僕は急に怖気づいた。背中を嫌な汗が伝った。足が動かなかった。　「あ・・・えっと。」　彼は行きかけた足を止め、振り返ると、僕を観察するように見た。僕は来たことを後悔した。　「おなか、すきませんか？ご飯、食べに行きましょう。」　彼はクルリと反転すると、僕の肩をぽんと叩いて、当初の目的とは反対側に向かって歩き出した。僕はあわてて後を追った。　彼は近くにあったファミリーレストランに入った。ウェイトレスに促され窓際の席に向かい合って座った。　「僕のおごりなんだから、遠慮せずにもっといい店にしたらいいのに。」　運ばれてきた水を口に運びながら、僕はメニューを見て言った。彼はもう一つあるメニューは見ずに、僕が開いたメニューをさかさまにみながらそれに答えた。　「メニューは多いほうが良いんですよ。」　それから椅子に背中を持たれかけると、水を飲んだ。　「もう決まったのかい？」　多いほうが良いという割に、メニューはあまり見なかった。彼は上目遣いに僕を見るとニッと人の悪い笑みを浮かべた。　「渡辺さん選んでくださいよ。俺の分も。」　ええ？僕は声を上げて驚いた。会って間もない人の好みなんてわからないよ。僕は真剣にメニューを見た。彼は僕が選んでいる間中、頬杖をついて笑って見ていた。　『とろくさいなぁ、かせよ。俺が決めてやる』　いつもだったら、とっくに決められているはずだ。僕はメニューを見ながらぼんやりと思いに耽ってしまった。カリッと彼が氷を噛む音で我に返った。　「ご、ごめん。やっぱり君が決めてよ。」　僕はメニューを手渡そうとした。彼はその手を止めると、メニューを再びテーブルの上に開いた。　「今朝、何食べました？」　彼はクイッと眼鏡を上げるしぐさをした。しかし眼鏡を掛けてないことに気づいて、照れ隠しに後頭部をかいた。普段は眼鏡なのだろう。コンタクトはめったにしないのかもしれない。僕はくすっと笑った。　「サトル君は何を食べたの？」　僕がそう尋ねると、彼はふわりと柔らかく笑った。まるでそう答えるのが正解であるように。そういえば、僕はこんな風にあいつに尋ねることもしなかったな・・・。　「俺は今朝パスタでした。なのでパスタ以外がいいです。」　僕は彼の言葉に頷いた。　「僕は純和風だったから、なんでもいいな。間を取って中華にしようか。」　僕の提案に彼はニッコリと笑う。僕はウェイトレスを呼ぶと、中華系のものをいくつか頼んだ。　「飲み物はどうしよう。中華でそろえて、ジャスミンティーなんてどうかな？嫌いじゃない？」　彼がいいですね。と言ってまたニッコリと笑う。僕は嬉しくなった。こんな風に相手に何かしてあげようと考えて、喜んでもらうなんて何年ぶりだろう。いつも嫌われたくないとしか考えてなかった気がする。　またぼんやりとしてしまった僕に、彼は優しく微笑んだ。　食事が終わり、僕の心はすっかり打ち解けていた。もう逆方向に足がすくむことはなかった。むしろ自然と足が向いた。　これがプロの仕事なのかと、僕はただただ感心した。　彼についてホテルの部屋に入った。のんびり食事をしてしまったせいで、残りの時間が少なくなっていた。彼は僕の上着を脱がせ、ハンガーに掛けた。その時、ポケットからライターがコトリと落ちた。　「長いこと使ってらっしゃるんですね。」　シルバーのライターはところどころ黒ずんで、年季が感じられた。もう、１０年にもなるのか。僕はそうだねと答えると、無理に笑って見せた。彼は僕の顔を見て、そっとそれをポケットに戻した。　僕たちは服を脱いですぐにバスルームに入った。人に身体を洗われる行為はとても恥ずかしかったが、絶えず彼が話しかけてくれたおかげで何とか耐えられた。身体を拭いてベッドに横たわる。すぐに彼もベッドに入ってきた。　「渡辺さんは、どういうのが好きです？」　どういう？僕はそんなこと聞かれたことがなくて、びっくりして目を見開いた。あいつはいつも僕を乱暴に抱いた。僕はそうされるのが好きなのだと言われたので、そうなんだと思うことにしていた。　「わからない・・・。」　僕は本当にその行為が好きだったんだろうか。考えたこともなくて、戸惑った。　「そうか、じゃあ探そう。」　彼はそんな僕を見て、頬を撫でると、首筋に唇を寄せてきた。くすぐったくて身を捩る。彼が全身に手を這わせる。僕は目を瞑り、それを素直に受けた。彼がする行為一つ一つに、僕は自分をさらけ出した。彼は僕の反応を一つ一つ確かめながらことを進めた。　僕は今までにない優しさと快楽を味わった。短い時間だったけど、充実した時間だった。　彼は済ませた後、ポケットから新しいタバコを出した。紙を剥いて一本取り出す。　―――アメリカンスピリッツ。あいつと同じタバコだった。　「渡辺さん、火、貸してよ。」　僕は上着のポケットからライターを取って火をつける。あいつも終わると必ずタバコを吸った。彼の姿があいつとダブル。　「・・・タバコ、吸うんだ。」　僕は揺ら揺らと天井に上がっていくタバコの煙を眺めた。　「いや、吸わないよ。」　彼はフゥッと勢いよく煙を吐き出すと、灰皿にタバコを押し付けた。　「渡辺さんが、吸ってほしそうだったからさ。オプションだよ。」　彼はそういうと、残りのタバコの箱を僕の手に握らせた。僕はびっくりして彼を見つめた。　―――どうしてわかったんだろう・・・。　「本当は、タバコ、嫌いなんだ。」　僕はつぶやいた途端、涙が止まらなくなってしまった。なぜ僕は１０年もすがって生きてきたのだろう。嫌われることを恐れて、自分を殺してまで。今わかった。いや、本当はずっとわかっていたのに目を瞑っていたのかもしれない。あいつは僕を愛してはいない。僕も、あいつのことを愛してない。　「これ、受け取ってくれ。」　僕は今日の料金と一緒にシルバーのライターを手渡した。彼は笑ってそれを受け取ってくれた。　「ありがとう。」　僕は心からそう言った。　僕はあいつと別れて１人で生きていく決心をした。　後日、改めてお礼を言いたくて、もう一度同じ店で彼を指名した。　「渡辺さん？」　声を掛けられて振り返る。しかし、振り向いた先には見知らぬ少年が立っていた。　「あれ？えっと、サトル君を・・・」　少年は始めキョトンとしていたが、ああ、という顔をした。　「マモルかぁ・・・っとと、えっと、その、彼は一度だけ緊急で俺の代役をやってもらっただけなので、実は、違うんです。すみません。」　プロ、じゃ、ないのか。僕は笑いが込み上げてきた。少年は腹を抱えて笑う僕を見て、嫌だったら指名変えますけど顔を傾けた。　「いや、いいよ。行こうか。」　僕は少年の背中に手を掛けると、新しいライターでタバコに火をつけた。---人物紹介と言ってもここでは１人しか出てこないけど・・・。

  2006年05月31日

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• 夏コミ当選しました

  夏コミ当選しました。８月１１日（金）１日目　東６ホール　セ０６ａ　KAY←O（ノックアウト）です。おお振りスペースにいます。オリジナル小説＋漫画本も出しますので、遊びに来てください。（おそらく変な格好してると思いますが・・・）んじゃ、今から３日目受かった友だちとお祝い夕食会に行ってきます。

  2006年05月30日

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• フリーページの構造

  が、やっとちょっとずつわかってきたぞ。２階層までしかないのね。うむうむ。あとはhtml埋め込めばいいんだ。URLのルールもわかりました。よし、なんとか今週中にできそう。イラストもつけられるといいなぁ。なんて野望も抱いてみたり。おや、画像が500KBまでOKになってる。ををを！まあでかいの表示させても迷惑なだけなんだけどさ～。

  2006年05月29日

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• フリーページ

  今日フリーページ作るつもりだったんだけど、昨日呑み過ぎてダウンしてました。久々にやっちゃったなー。連載終わって浮かれちゃってたんだな、きっと。今週かけてちょこまか整備して行こうと思います。m(_ _)m

  2006年05月28日

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• おうちバトン

  架月真名さんからバトンいただきました。『おうちバトン』１.実家ですか？独り暮らしですか？1996年から１人暮らしです。うわっ。もう10年じゃん！ぎゃほっ。3月に4件目になる今の部屋に引っ越してきました。実家は1000キロ離れた海の向こう。２.部屋に写真はありますか？　　　　　ありますよ。地元の友だちとか実家の猫とか妹とかブルーマンと一緒の写真とか吉井和哉とかマイケルJフォックスとか。ってか、なんで写真なんだろう？３.部屋に何か掛けてありますか？あります。スヌーピーの時計と、いちごの小物入れと鏡。４.ぬいぐるみはありますか？あります。ペンギンが２体とふくろうとクリスマスソングを歌って踊るハムスターとステュアートリトルかな。ペンギンの３体目は仕事場にいたりする。仕事場の天井からまんぼうが２体ぶらさがってるな。５.部屋にある機械は？機械！自作パソ（計算機兼オーディオ兼テレビ兼プレーヤー兼小説育成マシーン）、シンセ、コーヒーメーカー、８年ぶりの！エアコン、ゴミ吸ってるのが見える掃除機、照明、アイロン、ミシン、電話機。あとはキッチンに冷蔵庫、レンジ、ガスコンロ（機械？）風呂場に洗濯機とドライヤーと体重計６.部屋で「これだけは人に負けない」というものは？冷蔵庫、洗濯機、レンジ、シンセ、コーヒーメーカーが10年間無事なこと。ベッドにカーテンがついてるとこ(笑)今はずしちゃってるけど。結構増えてしまったゴスロリ服イチゴグッズ。今年はイチゴを育てたりもしてる。　　　　　　　７.寝る時必ず周りに置く物は？　　　　　明日着る服（朝は頭が働かないので考えられない。）目覚ましは周りじゃなくて、遠くに（笑周りに置くっていうより、周りに増える！　　８.部屋は片付いてる？　　　　　・・・時もある。９.次に回す五人誰がまわってないんだろう。柊りんごさん。小物とかがかわいいんじゃないかと勝手に予想。よっぴとの共同生活にも興味津々ｗ高瀬Ringさん。ファンタジックなお話を書く彼女のお部屋が気になります。ユウ’さん。かぶとむしの幼虫を育てていらっしゃるようで。素敵なおねぃさまの存在も気になります。フジタハルさん。0歳児の部屋！ってどんなんか知りたいかも・・・。西峰さん。会社のお引越しで忙しそうなので、もし、お暇があれば！よろしくです！

  2006年05月27日

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• 俺が思うよりずっと

  　３部作最後、アキラ視点です。一応これで全部。長らくのお付き合い感謝です！！ ---　俺はケイが合コンをしているはずの居酒屋の前にバイクを止めると、居酒屋の入り口に正面を向いてバイクに横掛けした。　はやる気持ちを抑えるために、スローテンポのバラードを口ずさむ。　１５分ほど経っただろうか、居酒屋の引き戸が開いて、ケイが出てきた。オッと思って声を掛けようと腰を浮かせたとき、後ろに何か引っ付いているのが見えた。　「お、お願い帰らせて」　女をずるずる引きずったまま困ったように眉を寄せている。（ニシハラのことだから、年上のお姉さんにからかわれて、ちょっと困った顔しながら俯いちゃったりして、かわい～とか言われて、私絶対この子うちに連れて帰る～なんて言われて、ことわりきれずに持って帰られちゃったりするんだろうなぁ。）　マモルのセリフが思い出された。　「お前は預言者か。」　俺は思わずここにはいないマモルに突っ込みを入れてから、ケイに声を掛けた。　「ケイ」　俺が呼ぶと、ケイは顔を上げて、目を細めてこっちを確認した。俺だと気づいた途端、パッと顔を輝かせ、腰の位置で絡んでいる女の手を引っぺがすと、駆け寄ってきた。ワンコロみたいだ。俺は思わず笑ってしまった。　「アキラさん、どうしたの？」　不思議そうに見上げてくる。俺はケイにヘルメットを手渡すと迎えに来たと言って、後ろに乗るように促した。なぜかこのワンコロは耳まで真っ赤になって、おずおずとバックシートにまたがった。　俺は市街を離れ、ケイの家を通り過ぎ、隣街の市街地までバイクを走らせた。ケイがきょろきょろと周りの様子を伺うたびに、俺の背中にヘルメットが当たる。３０分ほど走った先のアパートの前でバイクを止めた。ケイの手を取ってバイクから降ろす。　「ここ、どこ？」　ケイはさほど心配している様子は見せずに、ヘルメットを脱ぎながら俺に聞いてきた。　「俺んち」　俺はヘルメットをバイクのハンドルに掛けると階段を上がった。ケイが後ろをついてくる。鍵を開けて中に促すと、ケイはおじゃましますと小声で言ってから上がった。適当に座っててというと、ケイはベッドの上にちょこんと座って鞄を下ろした。俺は冷蔵庫の中から、苦いビールと甘いチューハイを取り出すと、苦い方をまずケイに渡して横に座った。　「結構飲んできたの？」　甘い方のプルタブを開けると、ケイの手の中で握られていた苦い方と取り替えてもう一度プルタブを開ける。ケイはそんなに。と答えてからありがとうと言ってチューハイを一口飲んだ。　「じゃあ酔ってないんだ。何杯飲んだ？」　俺はももに肘をつけて前かがみになると、ケイの顔を覗いた。ケイは何杯飲んだか思い出そうと天井を見上げた。俺は反った首筋を見て思わずケイのシャツの襟元を捲った。　「なんだこれ」　ケイは驚いてチューハイをこぼしそうになった。　「な、なに？」　見えないところを見ようとがんばって顔を動かす。俺はそこを指で撫でると教えてやった。　「キスマーク」　ケイはみるみる赤くなって手で口を覆った。　「あ、あの、あの、僕・・・あ。」　俺はキスマークの位置に唇を当てると、そこを強く吸った。微かだった跡がくっきりとついた。　「これでよし。」　俺が笑って見せると、ケイは耳まで真っ赤になって首筋に手を当てた。　「ね、それちょうだい。」　　俺はビールを床に置いて、ベッドの上に片足を上げると、完全にケイの方を向いてチューハイの缶を指差した。ケイは片手を首筋に当てたまま、それを差し出した。　「違う、違う」　首をかしげるケイの唇を指でトントンと叩くと、自分の唇を指差した。ケイは一瞬キョトンとしたが、その意図がわかると真っ赤になってうつむいた。上目遣いに様子を見てくるケイに、ニッコリと笑いかける。ケイはハアと息を吐くと、うつむいたままチューハイを口に含んだ。それから目をギュッと瞑って顔を上げる。俺はその唇を吸った。　---コクリ。　ケイの喉がなった。　「ぷ。」　俺は思わず吹き出した。ケイもつられて笑う。自分で飲んじゃったよ。笑いながらベッドに倒れ込んだ。　「コンパでもこういうこと、した？」　俺がコンパの話を再び持ち出すと、笑っていたケイの顔が再び曇った。俺はケイの手から缶を取ると、ビールの横に置いた。それからケイの頬を手の甲で優しく撫でる。　　「なあ、もう無理して合コンとか行かなくていいから。」　ケイは一瞬驚いて見上げてきたが、目を伏せて首を振った。　「無理とか、してない。」　俺はいじらしくなって、ケイの鼻先に音を立ててキスをした。　「じゃあなんで彼女にお持ち帰りされなかったの？嫌がってたように見えたけど？」　ケイは首を横に何度も振ると、手で顔を覆ってスンと鼻をならした。　「ごめんなさい。」　小さく謝るケイが可哀想で、愛しくて、俺は堪らず抱きしめた。　「謝るのは俺のほうだ。ごめん、ケイ。ごめん。」　ケイが俺の胸の中でしゃくりあげる。俺は身体を離して涙目にキスをする。　「もう無理しなくていいから。」　ケイが首を振る。俺はケイの顔を両手で挟んで首を振れなくする。　「いいんだ、もう。俺のこと、好きじゃない振りとか、もうしなくていい。」　額にキスをすると、首を触れなくなったケイは目を伏せて唇を噛みしめた。　「もう、お前のこと手放したくないんだ。誰にもやりたくない。」　途端にケイの顔がゆがむ。　「うそ。」　俺は噛みしめた跡がついた唇にキスをする。　「ホント。」　ケイがまたスンと鼻を鳴らした。　「もう、嘘つかなくていいの？」　「うん、ごめんな」　ケイが話すたびに、顔中に啄ばむようなキスを落とす。　「でも、僕、すっごい我侭なこと言っちゃうかもしれない。」　「いいよ」　「ずっと一緒にいてほしいとか言っちゃうかもしれない。」　「いいよ、ずっと一緒にいよう。」　「アキラさんのこと、独り占めしたいって思っちゃうかもしれない！」　「俺も、ケイのこと独り占めしたい。」　「アキラさ・・・」　もう何でもよかった。俺はケイの唇を塞いだ。　自分の部屋に他人を入れたのは初めてだった。初めて招き入れた自分のテリトリー。そこで俺はケイを抱く。　もう何度も肌を触れ合わせてきたのに、初めて触れるみたいにどきどきした。触るたびにケイが震えて泣く。　「もう泣くな。」　そう言って何度も涙をふき取るけれど、　「好き」　言えなかった言葉を口にしてケイはまた涙を流す。　俺はケイを抱き起こすと、向き合った格好で腰を揺らした。少しでも離れたくなくて、深く深く口づける。　「好き・・・ぅん・・・んっ」　突き上げられて、キスの合間にケイの声が漏れる。首に回された腕に力が入る。　「アキラさ・・・やっ・・・ん」　名前を呼ばれるたびに、俺はピッチを早める。　「ケイ、ケイ、好きだ」　「僕、も・・・好き。」　何度も何度も気持ちを伝え合う。言うたびに、どんどん気持ちが溢れてくる。こんな感情があったなんて。ケイの中を満たしたくて、奥まで突き上げる。　「あっ、あっ、ん、あ・・・」　ケイが振り落とされまいと必死でしがみついてくる。　「アキラさん、アキラさん」　俺もしっかりと腰を支えて、思いの丈をぶちまける。　「いやあああ」　内側を締め付けられて、俺もケイの中に放った。　俺は何だかもったいなくて、抜かずにしばらく抱きしめていた。ケイも俺の肩や胸に顔を擦り付けてくる。　「ケイ」　俺はケイの髪を撫でながらずっと考えていたことを口にした。　「本当に俺なんかが相手でいいのかな。」　ケイは抱きしめられながら、顔を上げた。　「どうして・・・？」　顎を引いて、見つめると、また泣きそうな顔をした。俺はあわてて頭を抱いた。　「いや、そういう意味じゃなくて、その・・・教授と、その」　俺が教授の名前を出すと、ケイは腕を外して驚いたように俺を見上げた。　「教授？」　俺は目を見開いているケイの顔を両手で包み込むと、視線を落とした。　「お前、教授に面倒みてもらってるんだろ？その、生活費、とか学費とか。それって、つまり、その、そういう・・・」　俺がもぞもぞ言っていると、ケイは突然笑い出した。　「あははは、ああおかしい。アキラさん、僕が教授と援交でもしてるとでも思ってたんだ。」　小悪魔のような顔で見上げられて、俺は急に恥ずかしくなった。　「だって、通帳が・・・」　ケイは俺の手を取ると、手錠の傷が残る手首にキスをした。　「そうか、それがヤマサキ先輩に握られた秘密だったんだね。」　ケイはうつむいて、ごめんなさいとつぶやいた。俺は、顔を上げさせると、なんでもないよと言うように唇を重ねた。　「・・・教授は、僕を引き取ってくれた父さんの弟なんだ。つまり僕の叔父さん。」　叔父さん・・・？俺が、ポカンと余りに情けない顔をしていたのか、ケイはくすくすと笑った。　「親戚だってわかったら、また贔屓だとか騒がれるでしょう？だから内緒にしてたんだ。」　ケイはごめんねと言って顔を傾けた。　「・・・俺、ケイにこんなことしてるってばれたら、卒業できないかも。」　俺はサーッと血の気が引いた。　「大丈夫、きっとかわいい甥っ子の幸せを応援してくれるよ。」　ケイは俺の首に腕を絡めると、唇を寄せた。　俺は教授を敵に回してもこの手離したくないと思うほど、ケイのことが好きだということを実感させられながら、そう耳元にささやいた。　俺は俺が思っていたよりずっとお前のことが好き。---君が思うよりずっと人物紹介 

  2006年05月27日

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• 君が思うよりずっと

  3連作の２：ケイ視点編です。---　「合コン？」　久しぶりに学食で会ったクラスメートに声をかけられ、僕は驚いた。　「そうなんだ。今夜あるんだけど、メンバーが１人足りなくて。ここが会ったが百年目。頼むよ。」　目の前で両手を合わせるクラスメートに、僕は少し考えて、いいよと答えた。彼は一瞬驚いたみたいだったけど、すぐに僕の手を握ってブンブンと振り回し、彼の携帯番号と店の地図が書かれた紙を僕に渡した。手を振ってかけていく彼を見送って、僕は独りため息をついた。　あの日から一ヶ月も経ってないというのに、アキラさんにしつこくしないという僕の誓いは早くも危うくなっていた。気づくといつも視線はアキラさんを追ってしまうし、夕飯を一緒した日は、帰ってほしくなくてお酒を勧めちゃったりする。アキラさん、お酒好きだから、いつも飲んでくれて泊まって行ってくれるけど、こういうのをしつこいって言うのかもしれない。僕はちょっと外を見る必要があるのかなと思って、合コンの誘いに同意した。　[ねえ、イライザ、僕はどうしたらいい？]　[コマッタトキハ　ホシヲミアゲテ]　僕とアキラさんのイライザは相変わらずで、真っ昼間にこんなことを言う。　「あーあ、時間属性も必要だなぁ」　「何が必要だって？」　僕が椅子にもたれかかって伸びをした瞬間、院生室の入り口から声がかかった。僕は驚いて振り返る。アキラさんだった。僕はさりげなくウィンドウを閉じた。　「イライザに時間属性を入れたらどうかなって思って。」　立ち上がると冷蔵庫に飲み物を取りに行った。冷蔵庫を開けようとして不意に腕を取られる。　「それはいいね、今夜一緒に考えようか。」　耳元で囁かれると、僕はどうにかなってしまいそうで、あわてて離れる。　「こ、今夜は、合コンに行くんだ。」　言い放って俯いたが、アキラさんから何の反応もないので思わず顔を見上げた。アキラさんは見たこともない表情で僕を見ていた。でもすぐにいつもの顔に戻って、そっかと答えると自分の席に戻って行った。　僕は合コンの間中アキラさんのあの表情が気になって仕方がなかった。けどさっきからひっきりなしに話しかけてくるお姉さんのおかげで、いろいろ考えることができなかった。　「じゃあケイくんは今１人暮らしなんだ？」　３期生だという彼女は最近彼氏と別れたらしく、年上はだめだわぁ、これからは年下よ！と力説していた。　「はい、大学の近くの寮に住んでます。」　僕はちょっと周りの友だちにＳＯＳのサインを送ったのだけど、みんな女の子と話すのに夢中で気づいてくれない。　「寮ってことは、女人禁制？」　---ど、どうしよう。む、胸が・・・　擦り寄られて、腕に彼女の胸が当たっていて、僕の声はだんだん小さくなってしまう。　「寮といっても、普通のアパートなんで、そんなことはないと思いますけど・・・」　僕は顔が赤くなるのを感じて、俯いたままそれだけ答えると、彼女は突然立ち上がってみんなに向かって宣言し出した。　「あたしケイ君のこと気に入っちゃいました～！今日は絶対お持ち帰りしちゃう～。」　僕はびっくりして、あわてて否定したのだが、彼女はかわい～とか言って抱きついてきた。みんなも騒ぎ立てて彼女を煽り出した。僕は頼むぞ、とかしっかりやれとかからかわれ、肩を叩かれ、途方に暮れた。　本当に、もう、どうしたらいいんだ。　何人かつぶれる人も出てきて、そろそろお開きな雰囲気になった。彼女がトイレに立ったのを見計らって、僕は幹事の友だちに自分の分のお金にちょっと上乗せして渡した。　　「ごめん、僕、先に帰るね。」　彼は僕を無理に誘った手前、そんな様子の僕を見て苦笑したが見逃してくれるようだった。なのに、鞄を取って店の開き戸に手を掛けた瞬間彼女に見つかってしまった。　「どこいくのぉ！？」　彼女に後ろから抱きつかれた。僕は彼女をずるずる引きずったまま店の外に出る。　「お、お願い帰らせて」　後ろでドッと笑いが起きた。もう、笑ってないで誰か助けてよ。　「ケイ」　彼女の腕を剥がすのに必死になっている僕を呼ぶ声がした。そっちの方を見上げると、アキラさんだった。アキラさんはガードレールに寄せたバイクに横乗りになってこっちを見ていた。僕は嬉しくなって彼女の腕を引っぺがすと、駆け寄った。　「アキラさん、どうしたの？」　僕が尋ねると、アキラさんは僕にヘルメットを渡しながら、笑って迎えに来たと言った。僕はアキラさんの笑顔を見ただけで、なぜか赤くなってしまった。でもよかった、今日はなんか変な感じだったから。　バイクが動き出した時、彼女が後ろで何か言ってたけど、僕はもう全然振り向けなかった。アキラさんにしがみついて、彼の背中だけを見ていた。---お前が思うよりずっと人物紹介俺が思うよりずっと 

  2006年05月26日

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• お前が思うよりずっと

  今日から君が思うほど～の番外編というか、最終話といいますか、を、３部作で書かせていただきます。マモル視点→ケイ視点→アキラ視点の３部構成です。マモル様視点からスタートです。楽しんでいただければ幸いでございますー。ではどぞ。---　８月も終わり、帰省していた面々が次々と戻ってきた。毎日誰か彼かがお土産を持ち込んで、お茶会や飲み会が開かれている。俺たちがいる院生室も５人全員が揃い、にぎやかな日々が戻ってきた。　夏休みにあった事件のことは、俺たち以外誰も知らない。ヤマサキが卒業まであと半年の時点で留学したことは、みんな不思議には思っていたが、金持ちの考えることだからとか、卒論が間に合いそうもなくて現実逃避したんじゃないかとか、適当なことを噂していた。　アキラとニシハラはその後、まあまあうまくやっているようだ。大学でいちゃつくなんてことはさすがにないが、時々同じシャンプーの匂いをプンプンとさせてくる。まあシャンプーの匂いなんて意識していなければ気づくものでもないけれど。何よりニシハラの表情がとても明るくなった。そして何だかとても艶っぽくなった。以前は、ゼミに来ていたかどうかを思い出せないほど目立たなかったのだが、今じゃ無意識に振り向いてしまうほどの存在感がある。両手で頬杖を着いて、切なそうにため息をつかれた日には、こっちがどぎまぎしてしまう。ニシハラをそんなに艶っぽくしている理由は一つしかない。好きなのに好きじゃない振りをして、相手を自由にしてやっているからだ。艶っぽいというのは、愁いの表情をしているということに他ならない。あの馬鹿のためにそこまでする気持ちが俺にはわからないが、ニシハラにとっては価値のあることなのだろう。　そんな関係でも、二人が幸せならかまわないさ。　・・・と思ったのだが、　「なんでお前はうちにいるんだ。」　俺はうちのソファーに寝そべって、雑誌を読んでいる馬鹿につぶやいた。　「暇だから」　馬鹿は雑誌から目を離さずに、ぶっきらぼうにそう答えた。　「何で。ニシハラは？」　俺は彼の手から雑誌を奪い取ると、それを丸めて握った。　「合コン」　アキラの口から意外な答えが返ってきた。あのニシハラがよもや女の子と遊びに行く日が来ようとは。　「なるほど。それで不貞腐れてるんだ」　「不貞腐れてねぇよ。」　アキラは俺を睨みつけてそれだけ言うと、俺の手から雑誌を奪い返し、それを顔の上で広げる。　「・・・あいつ、俺に気使ってんだ。俺が鬱陶しく思わないように、外向いてる振りしてんだ。」　・・・呆れた。こいつはそこまでわかってて、気づいてない振りしてるのか。　「何やってんの？お前ら。」　俺はアキラに近づくと、その頭を軽く小突いた。アキラはムッとして俺の手を軽く払う。　「そのほうが助かると思ってるもん。のめり込まれると、また、俺何しでかすか自分でもわかんないし。」　---へえ。そんなこと思ってる顔には見えないけどな。まったく、今の顔を鏡で見てみろって言うの。　俺はアキラに乗っかると、雑誌を床に落とし、その誰に怒ってるんだかわからないような顔を、覗き込んだ。　「じゃあさっさとしようぜ。」　俺はその首に顔を埋め、シャツのボタンに手を掛ける。　「ちょ、ちょ、ちょっとまった。」　焦ったようなアキラの声に、俺は気づかない振りをして続ける。アキラが堪らず俺の手を掴んだ。　「き、今日はそんな気分じゃないんだ。」　---今日は、ね。　俺は自覚のないアキラにさらに意地悪く言う。　「何で？ニシハラだって今日は誰かんちにお泊りするに決まってるぞ。」　アキラがハッと息を飲んだのがわかった。俺は内心ニヤリと笑ってさらに続ける。　「ニシハラのことだから、年上のお姉さんにからかわれて、ちょっと困った顔しながら俯いちゃったりして、かわい～とか言われて、私絶対この子うちに連れて帰る～なんて言われて、ことわりきれずに持って帰られちゃったりするんだろうなぁ。」　俺の下で、アキラの顔色があからさまに変わっていく。俺はアキラの上から退くと、ソファーの端に腰掛けた。　「お前、あいつのこと手放せんの？」　アキラが俺を見上げてくる。その瞳はとまどいの色でいっぱいだった。　「俺・・・でもケイのこと、壊したくない。」　俺は思わずため息をついた。こいつの思い込みは相当だな。　「お前、今まででそう思ったやつ、いるの？少なくとも嫉妬するお前なんか始めてみたけどな。」　俺の言葉を聞いて、アキラは起き上がって頭をクシャクシャとかいた。　「俺、今までと違うかな。」　「全然」　頭を抱えて尋ねてくるアキラに、俺は即座に答えた。アキラは顔を上げてさらに尋ねてくる。　「俺・・・ケイのこと好きなんかな。」　「そりゃもう、メロメロでしょう。」　俺はふとヤマサキのセリフを思い出してそう言った。あいつの思い込みも相当だったな。　「・・・俺、迎えに行ってくる。」 アキラが立ち上がってヘルメットを掴んだ。　「おう、行け行け。」　俺はシッシッと手を振ってみせる。出かけ際、アキラはドアに手をかけ、サンキューな。と口を動かした。　「もう戻って来るなよ。」　ドアが閉まる音を聞いて、俺はそうつぶやいた。---人物紹介君が思うよりずっと 

  2006年05月25日

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• 小説書きバトン

  柊りんごさんからバトンを受け取りました。楽天では初バトンだわ。1.あなたが書くジャンルはなんですか？創作(JUNE),FC(青年)ってやつですな。おお振り書きたくて始めたはずが、オリジナルにどっぷり・・・なんだか毎日そっちに追われてしまってます。おお振りでチェックして下さってる方には申し訳ないです・・・。2.あなたの作品ができるまでをちょろっと教えて？うーん。大体は、言わせたいセリフが出てきて、そこに行き着くまでの変遷を考える。ってパタンです。だからタイトルがセリフになっちゃうんだな。後は勝手にキャラが動いちゃうんで、後着いて行くって感じ。その章書くのに専念しちゃう。計算も何もなくて、２章くらい先を考えて伏線張るくらいが精一杯。本当はもうちょっと大きなゴール考えて、そこから下位目標立てて立ててって系統立ててやりたいのだけど・・・。3.文章をかくときに気をつけていることはなんですか？１日置くこと。明日の自分は今日の自分ときっとちがうから、ちょっとだけ第三者的な目で見られるかなと。なかなか読み直しして修正してからアップする余裕ができないんだけど・・・後は文章どおりに頭の中でシミュレーションして見て、スムーズに動くかチェックすることかな。やっぱ人に読んでコメントしてもらわないと、なかなかメタに見られないんだよね。だから、ブログってその場で読者がどう受け取ったかがわかるので、感想とかすごいありがたいです。それを踏まえて修正するべきなんだよなーと思ってます。4.ずばり、あなたの最高傑作は？え？自分の作品の？そんなのあるかなぁわりと上手く書けたかなと思うのは１３話の前半部分かなぁ。あとは２９話の最初のところとか。何がうまく書けたなと思わせてるんだろ・・・テンポ？リアルさ？うーん。おお振りだと、ハナタジのベロチューの回とモモカンにノックアウトの回かな。なんで上手く書けたのか、自分が好きな文章はどんなのか、の共通点見出して次に活かすべきですね。突き進むだけじゃなく、振り返って反省するのが大事だと思いました。5.バトンをまわす5人えっと、お暇があったらで良いです。お願いします。真名さん◆羅夢◆さん真珠さんLeoれおさん高瀬RINGさんみなさんの小説の作り方知りたいです！ 

  2006年05月23日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６７

  反転作戦第２弾です。１８禁でしかも♂×♂です。それでも良いという方は、以下反転させてお読みください。どぞ---　暁は時間をかけて指の数を増やしていった。　前立腺を刺激してやると、圭のモノが再び意識を持ち始めた。　「う・・・ん」　圭の腰が、気持ち良いところを求めて時々揺れる。　「ケイ」　名前を呼んでキスをする。上気した顔がうっすらと目を開ける。　「入れるよ」　ささやいて圭の両足を広げた。少し眉を歪めた圭の両腕を自分の首に巻きつける。　「しがみついてな。」　そう言って耳もとに顔を埋めると、圭の後ろに自分のものをあてがった。表情を伺いながらそろりと押し込んだ。　「んんっ」　先が入った瞬間、圭が顔を歪ませてギュッと暁の首にしがみついた。暁は動くのをやめ、そのまましばらく圭の首筋に唇を当て抱きしめていた。頭を撫でてやると、身体の力が抜けてきた。そのタイミングを見計らって、ゆるゆると腰を上下にゆすりながら少しずつ進める。　「きつい？」　尋ねると、唇をかみ締めたまま何度も首を振る。暁は、ギュッと閉じた圭の目尻にたまった涙を舌で舐め取ると、額に気持ちを込めてキスをした。　ゆっくりと腰を動かす。そのたびに圭の口から苦しそうな息が吐き出される。暁は手に唾液をかけると、圭のモノを握った。耳に舌を差し入れながら、手を動かすと、圭の口から苦痛以外の吐息が漏れ始めた。起き上がって前立腺の辺りに当ててやると、首を仰け反らせた。　　「あ、や・・・これ、なに・・・」　圭の目が宙をさまよう。暁は前を擦り続けながら、当てたところをピンポイントに揺すってやる。踊り出した圭の足を捕らえて、指を口にくわえた。そのまま指の間を舐める。　「あ、あ、いや・・・こわぃ」　経験したことのない脳を直撃するような快感に襲われて、圭は怖くなって手を伸ばす。暁は腕を取って強く抱きしめた。腰を揺らしながら、不意に圭の中にいるんだ実感がストンと落ちてきて、涙が出そうになった。　「ケイ、ケイ」　何度も名前を呼びながら、腰の動きを早める。二人はピッタリとくっついたまま、一緒に揺られた。圭は何度も呼ばれる自分の名前を意識の拠りどころにして、暁の背中に強くしがみつく。お互いの身体の間で圭のモノがぐちゃぐちゃとこすられていく。　「んあ・・・はっ」　暁の上がった息を耳に受けて、圭がたまらなくなって叫んだ。　「やぁ！・・・もぅ」　「いいよ、イって。俺も、イク・・・」　圭が身を捩って果てるのを見て、暁も圭の中から引き抜いて、自分の手の中で果てた。　お互い抱きしめあったまま、どちらからともなくキスを交わす。暁は汗で額に張り付いた圭の前髪を指でよけると、額を当てて目を閉じた。身体を寄せ合ったまま息を整える。　シャワーを浴びた後も、裸で抱き合ったまま眠った。　ふと目を開けると、すぐ横で暁の静かな寝息が聞こえる。圭は肌布団を掛けなおし、暁の肩口に鼻を摺り寄せた。人の体温を感じながら眠ったのは何年ぶりだろう。これまで気付かない振りをすることで、引き出しの奥に閉じ込めていた孤独感が押し寄せてくる。切なくなって涙が溢れた。　「どうした？」　まだ夢の中にいるような顔の暁が圭の顔を覗き込む。　「ううん、なんでもない。」　目をこすって笑ってみせる。暁は圭を引き寄せて額に唇を寄せると、再び眠りに落ちた。　（あなたと一緒にいられるなら、好きじゃない振りするくらいなんてことない。君が思うほど僕は君のこと好きじゃないっていつでも言うよ。）　圭は暁の寝顔に心の中でそう言うと、唇にそっと誓いのキスをした。---人物紹介 

  2006年05月22日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６６

  今回と次回はいつもどおり反転です。１８禁になってますので、１８歳以上の方は以下の真っ白な部分を反転させてお読み下さい。どぞ。---　舌を絡ませ合いながら、倒れるようにして床に転がった。暁は服一枚でさえも、２人の間にあってほしくなくて、キスの合間に逸るように脱ぎ捨てた。圭のシャツにも手を掛けたが、唇を離すことを躊躇って、捲くるだけで肌を合わせた。触れ合った場所がじぃんと熱を帯びる。触れていたくて、離したくなくて、暁は身体中に手を這わせ、顔中にキスを落とした。　圭は休むことなく降り注がれるキスを受けながら、息を弾ませた。初めて抱かれる不安は全然なかった。むしろ夢中でことを進める暁を、ゆったりと受け止めていた。　「ごめん。」　顔を両手で包み込み、圭の額に自分の額を合わせると、暁がつぶやいた。止められない自分の行為に対してか、それとももっと他の何かにか。圭は全部わかっているみたいに、微笑むと頬を包む暁の手のひらに唇を寄せた。　（好き・・・）　２人とも、思ってはいたけれど口には出さなかった。ただただ近づきたくて、身体を擦り合わせる。　暁は圭の胸に舌を這わせながら、手を伸ばして、さっきまで圭の代わりに抱きしめていたクッションを掴んだ。それを圭の腰に滑り込ませる。　「あっ・・・や・・・」　浮き上がった腰に暁の舌が絡む。　「や、や・・・アキ・・・あっ」　圭は斜めになった体を支えるために手を床に強く押し付けた。暁は口を上下に動かしながら、圭の腹から胸に左手を伸ばす。わき腹から胸の間をまさぐりながら、突起を捕まえる。指の腹でなでつけるようにしてそれを硬くしながら、舌でチロチロとカリの先端をもてあそぶ。　「いやっ・・・はっ、はっ。」　圭は時々波のように襲ってくる快感をやり過ごすために、目を硬く瞑った。自然と息が上がる。圭のモノは先端から溢れ出る分泌物と、暁の唾液で濡れそぼっていた。暁がそれを口に含むと、ぐちゅっぐちゅっと音が響いた。　「ふ・・・う、あっ」　空いた手で袋の部分を刺激してやると、快感が徐々に育って圭を捕らえた。圭は必死で手を顔に押しつけ首を振るが、膨らんだ快感は圭を包み込んで離さない。　「んんっ・・・あっ、はっ」　段々とスピードを上げる暁の動きに伴って、圭の息づかいも早くなる。　「やだ、も・・・」　圭が限界なのを感じると、右手を代わりにして、口を離した。見上げたが、腕で顔を隠しているので表情が見えない。暁は身体をずり上げると、胸に舌を這わせる。　「いや、あっ・・・ん」　乳首を甘噛みすると、圭が大きくのけぞって果てた。　暁が、腕を顔に乗せたまま呼吸を整える圭の唇に口付けると、圭は腕を額にずらして薄目を開けた。視線を合わせると、圭が視線を暁の唇に移した。改めて唇を寄せる。キスを交わしながら、暁は精液にまみれた手を、圭の後ろにそっと這わせた。圭がビクンと反応する。暁はキスを続けながら、落ち着かせるために、反対の手で肩を優しくなでた。　顔中にキスをしながら、徐々に後ろをほぐしていく。　顔を離して圭を見ると、少し不安げな目で見上げてきた。微笑んで額に沿って顔をなでると、ゆっくりと指を挿入した。圭がぎゅっと目を閉じる。暁はすっかり赤くなった唇にもう一度口づけた。押したり退いたりを繰り返しながら、指を少しずつ、少しずつ進めていく。暁は舌を絡めたり、歯の裏を舐め上げたりしながら、なんとか圭の身体の力を抜こうとした。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６７人物紹介

  2006年05月21日

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  Happy Birthday!!!

  ５月１７日三橋の誕生日っつうことで、三橋イヌにケーキを与えてみた。実はこの日、うちのばーちゃんの誕生日。何がほしい？ってきいたら、物が増えるけんなんもいらんよ。と言われた。なので、必殺の月の土地をプレゼントしました！はい、母の日も母に同じものを送りました。そしたら、私が夢枕に立ったらしい・・・心配で電話してきたし・・・いや、死ぬときはきっと黙って死にます。夢枕に立つなんて高等技使えないから安心してください。とか慰めなんか良く分からないコメントをしてみたり。 

  2006年05月18日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６５

  　圭の心臓は、壊れるんじゃないかと思うほど波打った。言われたことの意味処理に脳が追いつかない。　「な・・・んて言ったの？」　声が震えた。　暁は身体を離し、目を見開いている圭の顔を見ると、少しだけ苦笑いを浮かべた。両手で圭の髪を後ろに撫でつけ、その形のいい額にキスをする。　「ヤマサキの家に閉じ込められている間、思い出すのはお前のことばかりだった。マモルから、お前が脅迫のネタに何となく気づいてるって聞いて、実家にいる時も気が気じゃなかった。お前のことが気になってしょうがなかった。会いたくて、たまらなくなって。それで飛び出してきた。」　圭は夢うつつで、顔をほてらせ、暁の唇の動きをぼうっと眺めていた。ふわふわと身体が浮いているようだった。　暁は、圭の手を握り自分の唇に当てると、教会で神に懺悔をするように両膝を立てて目を閉じた。　「俺は、彼女が死んでから、誰も抱いてない。同じことが起きるのを恐れてたし、今でも恐れてる。近づきすぎると、自分がコントロールできなくなって、相手を傷つけるようなことを平気でしてしまう。だから誰も自分のテリトリー内に入れたくなかった。そのくせ誰にでも抱かれた。抱かれるのは楽だったし、逃げるのも距離を置くのも簡単だったから。結局俺は、誰も近づけたくないのに、独りにもなれないんだ。」　暁は一息に、でもとても穏やかな声で話した。圭は暁の告白を聞きながら、浮いていた足が地についた。片手をはずして、目の前で跪く暁の髪をそっと撫でる。暁が顔を上げた。圭は見つめてくる瞳を、今度は逸らさなかった。　「ケイ。俺は、お前のこと抱きたい。でも俺はいつかお前のことも壊してしまいそうで怖いんだ。・・・お前をヤマサキのようにしたくない。」　暁のむき出しの心が伝わってきて、圭は思わず暁の頭を両腕で抱きしめた。頬を寄せ、いったん硬く目を閉じると、決心したように目を開けた。　「僕は、ヤマサキ先輩のようにはならないよ。」　暁は身体を離して、意図を汲み取ろうと圭の顔を覗いた。圭はふんわりと微笑むと、そのまま目を逸らさずに言い切った。　　「だって僕は、あなたが思うほどあなたのこと好きじゃないもの。」 　暁に安心を与えられるなら、これくらい何でもないと圭は自分に言い聞かせた。暁は肩の震えで、それが圭の本心ではないことに気がついていた。それでも目を逸らさずに言い切る圭の強さに涙が出そうになった。　　「だから、僕を抱いてよ、アキラさん。」　　圭が暁の首に腕を絡めて、唇に触れるようなキスをした。暁は離れた唇を追いかけるようにして捕まえる。目が合うと、気持ちが溢れだしたようにお互いの唇を貪り合った。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６６人物紹介 

  2006年05月18日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６４

  　「アキラさん！？どうしたんですか、こんな朝早く。実家にいたんじゃ・・・」　暁は驚いて大きな声を上げる圭の口に手を当てると、シーシーと苦笑いで指を立てた。　「夜中に家抜け出して、高速飛ばして帰ってきたんだ。順調に進みすぎて、着くのが早すぎた。」　久しぶりに見る笑顔に、圭は赤くなって俯いた。　「とりあえず、中、入ってください。」　暁は久しぶりに圭の部屋に入り、大きく息を吸った。カーテンがほんのり光を帯びているのを見て、眼を細める。圭は暁にクッションを渡して座るように促すと、ティーポットに水を張って電子レンジにかけた。　「身体はもう大丈夫なんですか？」　カップとティーパックを用意しながらミニキッチンから声だけかける。暁はああ、と答えながら自分の左の手首を見る。内出血は消えたが、うっすらと跡が残っている。この傷跡は消えないかもしれないなと何となく思った。　「久しぶりに帰ってきた息子はげっそりしてるし、あちこち傷だらけなもんだから、もう大騒ぎ。一生うちから出しません！って勢い。」　暁は母親の様子を思い出して笑った。　「だから書置きだけして、夜中にこっそり抜け出して、バイク飛ばして帰ってきた。」　電子レンジがあたため終了を告げる。圭は、布巾を鍋つかみの代わりにして熱くなったポットを部屋のテーブルに運んだ。　「もう。そんなことしたら、また大騒ぎになっちゃうんじゃないですか？」　ティーバックをポットの中で振りながら、怒ったような呆れたような声を出した。  　暁が部屋に入ってから、圭は一度も暁と目を合わせてはいなかった。　[俺も、会いたかったよ、ケイ]　イライザに書き込んだセリフが頭の中をぐるぐると回って、目が回りそうだった。あんなことを書き込んだ自分が恥ずかしくて涙が出そうになった。　「紅茶、もういいんじゃないか？」　暁の声で我に返り、あわててカップに注ごうとして直にポットを触った。　「あつっ。」　手を離してしまい、紅茶が暁に向かってこぼれた。　「アキラさんごめん！」　布巾を掴むと暁に駆け寄り、パンツにかかった紅茶を拭う。大丈夫？と顔を上げた瞬間、パチリと目が合う。暁が困ったように顔を歪ませる。圭はそれを見て、悲しくなって顔を反らせた。　「ケイ」　不意に腕をとられ抱きしめられた。圭は驚いて身体をこわばらせる。暁は圭の肩に顔を埋めて、もっと近づきたくてギュッと力を入れる。 　「ケイ、俺、お前のこと・・・抱きたい。」 　暁の囁きに、圭の心臓が跳ねた。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６５人物紹介 

  2006年05月17日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６３

  　暁が山崎の家から救い出されてから４日目、加藤が院生室を訪ねて来た。あの日依頼、圭と衛が加藤に会うのは初めてだった。　「あの、アキラさんは？」　加藤は傍から見ても気の毒になるほど恐縮して尋ねた。衛はアイスコーヒーをポットからグラスについで手渡す。　「あいつはまだ実家だと思う。あの形（なり）だからな、当分家から出してもらえないんじゃないか。」　衛からグラスを受け取りながら、加藤はますます小さくなる。　「アキラさんには譲歩してもらって、あいつも感謝してるんです。」　衛は自分のカップにも継ぎ足すと、圭に、差し出した。圭はそれを受け取って自分のカップに注ぐと、冷蔵庫にポットを戻した。　「ニシハラの家の鍵は、念のため取り替えさせてもらう。坂下さんが今手配してくれてる。」　圭は加藤を見て頷くと、コーヒーにガムシロップを２つ入れ、さらにミルクも２つ入れた。　「ヤマサキはどうしてるんだ？」　衛は圭のカップを見て顔をしかめると、自分はブラックのまま一口飲んだ。加藤はグラスを見つめたまま口をつけなかった。　「ご両親が、大学を休学させて、海外に出すことに決めたそうです。」　加藤はあえて、留学という言葉を使わず、外に出すと表現した。悔しそうに唇をかみ締めグラスを握り締める。圭と衛は何も言うことができなかった。  　圭は衛からCD-ROMを受け取って以来、家で暁のイライザと会話をするのが日課になっていた。暁のイライザに話しかけては、暁の返事を想像してデータベースを膨らませる。暁が作ったロボットを、自分が引き継いで育てているようで、つい時間を忘れて朝までのめり込んでいた。　[僕には両親がいないけど、両親がいるヤマサキ先輩のほうが、僕よりも不幸に思えるんだ。]　圭は暁に話しかけるようにキーボードを打ち込む。　「アキラさんならなんて言うかな。」　[幸せは自分でしか掴めないのさ。完璧な環境なんてどこにもないんだから。]　暁のセリフを登録して、本当に言いそうだなと思ってクスリと笑う。　[孤独でも、幸せなのかな。出会わなかったら、寂しいなんてわからずに過ごせていたかもしれないのに。]　圭は打ち込んではみたものの、登録せずに削除する。キーボードを押しやって、机の上に突っ伏した。　「ウザイな、これは。アキラさんはこんなセリフ聞きたくないよ。」　自分の腕に顔を埋めて目をとじた。顔を机につけたまま、腕を伸ばして手探りでキーボードを打つ。　[会いたいよ]　[俺も、会いたかったよ、ケイ]　自分で打ってみて、腹から笑いが込み上げてきた。ひとしきり１人で笑った後、ショートカットボタンでパソコンの電源を切って顔を上げた。　どこかで鶏が鳴いた。カーテンの隙間から見える空の裾が、ほんの少し白んできた。ぼうっと眺めていると、ドアがカタンと鳴った。　（新聞屋さんが間違えたかな。）　圭は新聞を取ってはいなかったが、ときどき隣の部屋と間違えてポストに入れられることがあった。こっそり隣の部屋に入れ直してあげようと思い、ドアを開けた。　「いてっ」　「ごめんなさい。」　新聞屋さんに当ててしまったと思い、あわてて謝る。　「ケイ」　名前を呼ばれて顔を上げる。　そこに立っていたのは暁だった。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６４人物紹介  

  2006年05月16日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６２

  　衛が大学に着くと、圭は自分の席でボーっとモニタを眺めていた。耳にはいつものようにヘッドフォンがしてあって、衛が入ってきたことにも気づかないようだった。衛は自分の席に着くと、手を振って圭の注意を向けた。　「あ、おは、こんにちは。お疲れ様です。」　圭はヘッドフォンを外すと衛を見上げた。今朝会ったのを思い出し、照れ笑いで挨拶を変えた。　「そっちこそ、お疲れさん。バイトはもう終わったの？」　衛の問いに、圭は「はあ、まあ。」と曖昧に答えを返すと、画面に目線を戻した。　「アキラさん、大丈夫でしたか。」　さりげなさを装っていたが、気になって仕方がないという様子は、キョロキョロと動く瞳がよく語っていた。　「ニシハラが帰ったすぐ後に目覚めて少し話をしたよ。取り合えず２，３日帰省することにしたらしい。」　そうですか。と圭はホッとため息をついた。　「どうして会っていかなかったんだ？バイトがあるなんて嘘までついて。」　衛が席と席の間に置かれている敷居に腕を掛けて圭を見下ろす。圭はギクッとして衛を見上げたが、すぐに俯くと頭をカシカシかいた。　「僕のせいであんな目にあったんだと思うと、会わせる顔が、ないです。」　（ニシハラのために、甘んじてヤマサキの変態行為を受けたということはどういうことなのか、こいつらは全く考えないのかねぇ。）　衛は呆れ顔で天井を仰いだ。それからあきらめたようにため息をつくと、鞄からCD-ROMを取り出し、暁からだと言って圭に渡した。圭は素直に受け取ると、さっそくドライブに入れた。  　「イライザ？」　自分の席に座りかけていた衛は、圭のその言葉に振り向いて、モニタを覗きこんだ。CD-ROMにはいくつかファイルが入っていたが、圭はELIZAという名前の実行ファイルをダブルクリックした。　[コンンチハ　ワタシハ　イライザ　アナタノコトヲオシエテ]　実行されたプログラムはいつもと同じことを圭に聞いた。　[こんにちは、話すことなんて何もないよ。]　圭は何を話して言いかわからず、結局いつもと同じことを入力した。　[デハ　オトウサンノコトヲハナシテクダサイ]　そしてまたいつもと同じ質問が帰ってくる。　[父さんはずっと昔に死んだよ]　（僕のイライザと同じじゃないか。アキラさんは何をして欲しかったんだろ。）　がっかりして椅子の背にもたれかかったとき、イライザがいつもと違う反応を返した。　[チガウ　オトウサンハ　キミノナカニチャントイキテル]　圭は驚いて背筋を伸ばした。　[僕の中に？]　圭は思ったことを書いた。それに暁のイライザが答える。　[ソウ　イノチトキオクハオナジモノ　オモイダシテクレルヒトガイルカギリ　オトウサンハイキテイル]　あわてて実行ファイルを中断し、プログラムのソースファイルとデータファイルを開けてみる。　「これは・・・」　圭と衛は目を見張った。データファイルの中には大量の会話パタンが入力されていた。予想される圭からの入力と、それに対する返答がひたすらつづられていた。　「こりゃまた知能もなにもあったもんじゃないな。」　衛が半ば呆れたように言い放った。ファイルの詳細情報から、圭が山崎の家に行った直前まで更新されていたことがわかった。圭はどう受け取ってよいかわからず、すがるような目で衛を見た。衛は眼鏡をクイッと上げるとモニタを眺めながら言った。　「たぶん、監禁されてる間、あいつはお前とずっと会話してたんじゃないかな。それに支えられてたんだろ。」　圭は改めて大量のデータを見つめる。　「拉致られたきっかけは、お前のネタだったのかもしれないけど、そりゃあいつが勝手に選んだことだ。お前がいたからこそ耐えられたことの方が重要なんじゃないか？」　衛はそう告げると、圭の頭をクシャッと撫でた。圭は涙が滲んできた目を袖口でゴシゴシとこすり、自分も暁と会話をするために、もう一度イライザファイルを実行した。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６３人物紹介 

  2006年05月15日

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• 本日更新できません

  友だちの漫画のアシスタントしに行くので、今日の更新ありませぬ。もうちょっと続き練り直したいしね・・・ラストまでもうちょっとあと５回くらい（？）の予定です！初完走できる予感（T-T）感動

  2006年05月13日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６１

  　暁はまぶしい光の中目を覚ました。　「ケイ・・・」　つぶやいて、思いをはせて、今日も一日が始まってしまったと愁いに沈んだ。それから突如山崎の家じゃないことを思い出し、飛び起きた。　「起きたか。」　頭上から聞き慣れた声がした。逆光で影になる顔を見上げた。　「マモル・・・」　左腕が攣った感じがしてそっちを見ると、腕からチューブが伸びていた。改めて回りを見渡す。そこは清潔感に溢れた真っ白な世界だった。　「急性胃炎だと。それと栄養失調。点滴打って一晩過ごしたから、目が覚めたら帰っても良いそうだ・・・お前のその手首と首の傷、ごまかすのに苦労したんだぞ。」　衛は読んでいた新聞を畳むと、ベッドの横の小さな机の上に置いた。　「ずっといたのか？」　暁は内出血の跡が消えない自分の手首を見つめながら尋ねた。衛は足を組むと、そこに腕を立ててあごを支える。　「いや、俺は今来た。ニシハラが一晩中いたよ。」　暁はそうか。とだけ答えた。　「もうすぐ目を覚ますから会っていけばって言ったんだけどな。教授のバイトがあるからって、ついさっき帰ったよ。」　衛は左手の腕時計を見た。８時半を過ぎたところだった。暁はもう一度、そうか。とつぶやくと、ハタと思い立ったように急に周りを見渡した。　「マモル、俺のパソコン知らないか。」　衛は、ああ、と思い出したように顔を上げると、腕を伸ばして自分の鞄を取り、中から暁のノートPCを取り出した。暁はそれを受け取ると、左腕から点滴の針を抜き、その針でCD-ROMドライブの強制インジェクトホールを押した。　「無茶苦茶するな、お前。」　呆れた目で見る衛に、そこから取り出したCD-ROMを渡す。　「これ、ケイに渡してくれ。」　衛は頬杖をついたまま、眉をチョイッと上げて暁を見る。　「・・・なんで自分で渡さない？」　暁はもう一度CD-ROMを突き出す。　　「俺はもうケイには会わない。」　　衛は姿勢を変えることなく無言で暁を見つめる。暁は一向に受け取ろうとしない衛の腕を取って無理やりそれを握らせた。　　「・・・頼む。俺はあいつを・・・ヤマサキのようにはしたくないんだ。」　　「ヤマサキがああなったのは、別にお前の所為じゃないだろう。」　衛はフウとため息をつくと、受け取ったCD-ROMを指でクルクルと廻しながら言った。暁はベッドの上で膝を抱えると、眉をひそめて俯いた。　　「いや、俺の所為だ。どっかで俺が煽ったんだ。俺は人をムキにさせる天才らしい。」　　それから顔を上げて寂しく笑って見せた。　「・・・お前も、もう奈美ちゃんのところに帰れ。」　衛は暁のおでこを中指でパチンと弾くと、CD-ROMを自分のハンカチに包み、ポケットからカードのようなものを取り出し、その上に乗せた。　「ニシハラはお前が思ってるほど弱いやつじゃない。これ、ニシハラの免許証。こいつのおかげで俺らはお前を救出できたってわけだ。あいつ、今免許不携帯状態なんだ、早く届けてやってくれよ。」　情けない顔で見上げる顔を、もう一度それで叩いた。　　「・・・あいつ、なんとなく察してるぜ。お前が拉致られたネタが、自分に関わってるってことに。」　　CD-ROMをしぶしぶ受け取ろうと手を伸ばした暁が、弾かれたように衛を凝視する。　「どうして・・・。」　その様子を見て、衛は深々とため息をつく。　「やっぱりそうか。」　「カマ・・・かけたな。」　暁はムッとしてCD-ROMをひったくった。衛はクイッと眼鏡を上げる。　「ヤマサキが言ってたのさ、ニシハラに向かってお前はもう終わりだって。あれであいつも気付いたんだろうよ。だからさ、あいつ、お前に負い目感じてると思うんだ。それで会わずに帰ったんだろう・・・会ってやれよ。」　暁は頭をガシガシとかくと、免許証の写真を見つめた。それから目を閉じると、受け取ったCD-ROMと免許証を、手だけ伸ばしてもう一度衛に渡す。　「やっぱ、これはお前から渡してくれ。俺は・・・ちょっと反省してくる。」　今度はすんなりと受け取った。　「まあ、夏休みだしな。ゆっくり帰省してこいよ。」 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６２人物紹介 

  2006年05月13日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６０

  　衛が圭から送られてきた地図を頼りに、山崎のマンションにたどり着いた直後、山崎の車がマンションの駐車場に滑り込んだ。衛は近くに車を止め、様子を見た。マンションの入り口まで行ってみたが、オートロックな上にインターフォンの横にはカメラがついていた。　「これはニシハラにくっついて中に入るのは難しそうだな。」　衛はクイッと眼鏡を上げるとため息をついた。　山崎が中へ入って、１０分ほどで圭がマンションへたどり着いた。　「マモルさん。」　圭はよほど不安だったのか、衛の顔を見てホッとした様子を見せた。衛は買ったばかりのプリペイド携帯を取り出すと、通話音量を最小に設定してから自分の携帯に電話をかけ、通話状態にしたままそれを圭に渡した。　「いいか、このままポケットに入れとけ。中での会話は全部こっちで聞いてるから。危険だと思ったら何としてでも助けに行く。」　圭は衛の力強い目を見て、コクリと頷いた。それから携帯をパーカーのポケットに入れると、インターフォンで山崎を呼び出した。  　圭は指示された通りエレベーターで７階に上がると、一番奥の部屋に進んだ。ポケットの携帯が通話状態になっているのを確かめると、財布から免許証を取り出し、それをパーカーの袖口に隠すようにして握った。一度深呼吸してからチャイムに手をかけ、勢いをつけて押す。　山崎がドアから顔を出した。促されるままに入り、靴の紐をほどく振りをして、鍵がかかってしまわないように免許証をドアの隙間に挿んだ。  　衛はマンションをぐるりと一周してみたが、潜り込めそうなところが見当たらず、エントランスに戻ってきた。時計を見ると１８時を回っていた。　「そろそろ住人が帰ってくる時間だな。誰かが戻ってきたら何とかなるんだがな。」　階段に腰掛け、携帯を手に取る。携帯の向こう側では、山崎がシャンペンを抜き乾杯の音頭を取っていた。暁の悲壮感漂う呟きが聞こえた。いつもならそんな話軽く流すだろうに、暁は相当平常心を失っているなと衛は膝の間で頭を抱えた。　「マモルさん」　その時、加藤が坂下の車から降りて、衛に駆け寄ってきた。坂下も車から降りて衛に会釈する。　携帯からは圭が山崎に向かってきっぱりと否定した声が聞こえてきた。　（まずいな）　衛は少し早口で坂下に向かって尋ねる。　「坂下さん中に入れますか。」　坂下はすぐに頷いた。　「ただし、中の鍵はもちあわせておりませんので、部屋の前までしか行けませんが。」　３人は坂下の鍵でエントランスを抜け、足早にエレベーターに向かった。携帯からは圭の強気な発言と、暁の止める声が聞こえてくる。　エレベーターが７階に着いたと同時に、坂下の携帯がなった。　衛はエレベーターのドアをこじ開けるようにして出ると、一番奥の部屋に走った。　「アキラさん！だめぇ！！」　携帯から圭の悲痛な叫び声が聞こえる。　山崎の部屋のドアに手を掛けると、隙間に何か挟まっているのが見えた。衛は思い切ってドアを引く。カチリとドアが開き、圭の免許証がはらりと落ちた。　衛はそれを拾って、中に入った。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６１人物紹介 

  2006年05月12日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５９

  　「離せ！殺してやる」　起き上がることもままならなかった人間のどこにこんな力が残っているのか、殺気立った暁を圭は必死で抑えた。　山崎は暁の形相に青ざめ腰を抜かした。　「もうやめて！アキラさん！」　圭は暁の背中にしがみつき涙が止まらなくなった。  　「アキラ！」　衛が飛び込んできた。暁の手首を掴んで無理やりナイフを外す。加藤と坂下も息を切らせて入ってきた。　「坂下！FAXしろ！写真を！早く！」　山崎は坂下の姿を見るなり叫んだ。　「やめろー！」　パ――――ン　暁が叫ぶと同時に、加藤が山崎の頬を全力で張った。吹っ飛んだ山崎の上にさらに馬乗りになって肩を揺さぶる。　「いい加減にしろ！何やってるかわかってるのか！お前！殺されても当然のことしたんだぞ！！もう！目ぇ開けろよ！！」　山崎の顔にパタパタと加藤の涙が落ちる。張られた頬が急にジンジンと痛み出した。落ちてくる涙に加藤の体温を感じた。　加藤は腕でごしごしと涙を拭いて振り向くと、倒れ込むようにして、衛と暁の前で頭を床にこすり付けた。　「アキラさん、すみませんでした。こいつどうかしてたんです。許してやってください。」　山崎は驚いて起き上がる。　「やめろよ。何の真似だよ。」　「こいつが、こんなになったのは、俺にも責任あるんです。ずっと傍にいたのに、何も気付かなかった。いや、知ってて知らない振りしてたんです。友だち面して、利用してるだけだった。・・・ごめん。」　最後の一言は、山崎に向けて言った。　山崎は唇を噛み締め、うつむく。　　それまで黙っていた坂下が、持っていた封筒を山崎に差し出す。　「これは、もう、必要ないのではないですか？」　山崎はいったん坂下を見上げ、それから封筒に目を落とした。手を伸ばして封筒を受け取る。ゆっくりと立ち上がると、ポケットからライターを取り出し、暁の前で封筒に火をつける。お祝いのケーキを載せるはずだった皿の上に、火のついた封筒を置いた。隙間から写真が燃え上がるのを見つめながら、山崎は黙ったまま涙を流した。  　暁は、封筒が全て燃え、灰と真っ黒になった鍵の残骸を見届けると、それまでぎりぎりで保ってきた意識を手放した。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・６０人物紹介 

  2006年05月11日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５８

  　（さからっちゃだめだ。・・・わかってる・・・けど）　圭は唇を噛み締め、拳を握った。  　「いやだ」  　口を真一文字に結んで、圭がつぶやいた。　山崎が腕を暁の首に絡めたままゆっくりと圭を振り向く。　「わからないやつだなぁ。しつこいと嫌われるよ？」　山崎は圭に言われたセリフを返し、ニヤリと笑う。　圭は目を開けると、何か憑き物がストンと落ちたように身体の余計な力が抜けた気がした。フゥッと息を吐くと、山崎を見据えた。　　「こんなの嘘だ。わかってないのはヤマサキ先輩のほうだ。アキラさんはあなたのことなんかちっとも見てないじゃないですか。」 　山崎の口元から笑いが消えた。　「ケイ、やめろ。」　暁が初めて圭の方を向いた。自分から離れようとする山崎の腕をとっさに掴む。　「やめない！そんな、人形みたいな、中身のないアキラさんはアキラさんじゃない。心までは縛れない。気持ちばっかりはどうしようもないですよ。」　今度は圭が山崎のセリフを返す。　「うるさい！アキラは僕のものだ！」　山崎は掴まれた腕を離そうともがく。暁はそれを必死に繋ぎとめる。　「だめだ、ケイ、頼む、やめてくれ。」　「アキラさんは誰のものにもならない。誰も縛ることなんかできないんだ。」　圭は確信に満ちた目できっぱりと言い放った。　山崎は暁をつきとばすと、放り出してあった鞄の中から携帯を掴み取る。　「お前はもう終わりだよ、ニシハラ。僕の邪魔をしたらどういうことになるか教えてやるよ。」相手の番号を呼び出し、通話ボタンを押す。　「やめろ！ヤマサキ！」　暁は力の入らない腕で、這うようにしてテーブルに近づくと、ケーキの横においてあったナイフを掴んで山崎に向かって行った。　「アキラさん！だめぇ！！」　圭は咄嗟に手を伸ばした。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５９人物紹介 

  2006年05月10日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５７

  　山崎は、 ウキウキと圭の腕を引っぱって向かいの席に座らせると、自分は暁の横にぴったりとくっついて座った。圭の目は、隣にべったりとくっついている山崎を全く映してはいなかった。暁の透き通るように白い肌と、目の下の隈、血の跡が滲んだ手首に釘付けになっていた。　（会わなくなって一週間も経ってないのに、こんな・・・）　暁は自分を見つめる圭の視線を感じながらも、圭を見ることができず、テーブルの角を見るともなく眺めていた。目を合わせてしまえば、この場を逃げ出してしまいそうになる自分を抑える自信がなかった。　山崎がシャンペンの栓をポンッとはじけさせる。手際よくグラスに注いで、暁と圭に手渡す。　　「ニシハラのおかげで、マモルさんが消えてくれたことに乾杯！」　　山崎が１人グラスを上げる。　「マモルが・・・なんだって？」　暁が驚いて山崎を見る。傾いたグラスからシャンペンが零れ落ちる。山崎はシャンペンを一口飲むと口端を上げた。　「ニシハラと協力して、マモルさんを排除したんだ。マモルさんはアキラから手を引くと言ったよ。」　圭はゴクリと唾を飲み込んだ。そんなのは嘘だと言ってしまいたい衝動に駆られた。しかし、暁がなぜここに閉じ込められているのかがわからない限り、山崎を怒らせることは賢明ではなかった。　　（アキラさん、こっちを見て。僕とマモルさんを信じて。）　　圭は祈るような気持ちで暁を見つめたが、暁が圭を見ることはなかった。　（俺からのメールは届かなかったのか・・・？）　山崎は傾いた暁のグラスを暁の手ごと握った。それから、青ざめて固まってしまった暁の頬を手のひらで撫でる。　「それでね、ニシハラ」　山崎は暁の顔をうっとりと眺めたまま、圭に話しかけた。　「協力してもらったのに悪いんだけど、アキラは僕を選んだんだ。」　人の気持ちばっかりはどうしようもないよね。と、山崎は振り返って圭に笑いかける。　「嘘だ」　圭は思わず口を突いて出た。しまったと思ったが、山崎はさほど怒った感じはなく、逆にバカにしたように鼻を鳴らした。　「アキラ、嘘じゃないってこと言ってあげてよ。」　山崎がアキラの首に腕を絡める。暁は凍るような視線で山崎を見つめながらも、それに従った。  　「こいつの言うとおりだ。さよなら、ケイ。もう会わない」  　山崎が伸び上がって暁にキスをする。圭はぎゅっと目を瞑る。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５８人物紹介 

  2006年05月09日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５６

  　暁は壁に寄りかかり、朝から休むことなくパソコンに向かってプログラムを打ち込んでいた。手は常に震えているし、目もかすんでいたが、辛いどころか、口元はほんのり笑みさえ浮かべていた。しかし、画面に当たる光が翳ってくると、次第に目の光が失われていった。手を止めて、離れた窓から真っ赤な夕日を、絶望を見るような目で見つめる。　　「あと何日・・・」　　暁は考えをかき消すように首を振ると、ファイルをセーブし電源を落とした。立ち上がろうとしてふらついた。吐き出すものはもう何もないのに、絶え間なく吐き気が襲ってくる。這うようにしてソファにたどり着くと、ぐったりと身をもたれた。目を瞑り、柔らかなくせっ毛を想像したところで、鍵が解除された音に引き戻された。　「ただいまぁ」　今日も上機嫌の声がする。舌打ちする元気もなく、暁は身を起こすと、勤めて明るく「おかえり」と返した。もはや「おかえり」という言葉に何の意味も持たない。　人が１人隠れてしまうほどの大きな花束を持って山崎がリビングに現れた。　「すごいな。」　暁はお世辞ではなく、心の底からそう思った。花束を持つ山崎が圭とダブル。涙がでそうになった。　　「ケーキと料理もあるんだ。今日はパーティだからね。」　山崎は鞄を入り口に放り投げると、花束を暁に預け、ケーキと料理をリビングのテーブルに並べ始めた。ロールケーキにピンクのハートのチョコレート。ロースとビーフにロールキャベツ。シャンペンにグラスが３つ。　（・・・３つ？）　「・・・なんのパーティ？」　暁の声に緊張が走る。山崎はにっこり笑うと、暁から花束を取ってチュッと音を立ててキスをする。　「２人の間にあった邪魔なものが１つ消えたお祝いだよ。・・・そしてもう１つも消すためのパーティだよ。」　山崎が花束をソファに立てかけるようにして置いた。暁の額から汗が滲む。　「誰、が、来るの？」　搾り出すように声を出す。山崎が口を開けた途端にチャイムがなった。インターフォンのモニタを確認する。ロックを解除して再び暁の元に戻ってきた。　「アキラはここ。」　立てかけた花束の横に暁を座らせると、あ、そうだ。忘れてた。と言ってあわてて首輪をはずしてそれを寝室に持っていく。再びチャイムが鳴った。山崎は走って玄関へ向かう。それから山崎が先にリビングに戻ってきて、客をこっちへ来るように声で促した。　暁は立ち上がって入り口を見つめる。喉が鳴った。  　「アキラさん・・・？」  　そこに立っていたのは圭だった。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５７人物紹介 

  2006年05月08日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５５

  　相手に見つからず、見失わない距離を保つのは結構難しかったが、山崎の赤いクーペは、つけるのには目だって都合が良かった。しかも山崎はよく止まった。花屋に入ったかと思うと、すぐに出てきて車の中で誰かに電話をかけ、メールを打ち、惣菜屋、ケーキ屋により、またメールを打ち、花屋に戻る。　衛はその度に、ちょうど良く距離の離れている駐車スペースを見つけるのには苦労した。　「むしろ、小回りの効く加藤のが適任だったな・・・」　花屋の向かいのビルに隠れるようにして車を停めると、ため息をついた。しっとりと汗ばんだ　手をハンカチで拭き、ハンカチを当てたままハンドルを握ぎった。　太陽は大分斜めに傾いていたが、まだまだ暑かった。 　山崎が大きな花束を抱えて車に乗り込んだのが見えた。汗が目に入り、車を出すタイミングを誤った。急いで出したが、途中で信号につかまり見失った。　「ち。」　車を歩道脇につけ、どうしようか考え始めたとき、携帯にメールが届いた。加藤からかと思い開くと、以外にも圭のパソコンからだった。　[今、ヤマサキに呼び出しを受けました。今からヤマサキの家に向かいます。念のため位置情報を添付しておきます。]　メールの最後にヤマサキのマンション付近の地図情報が添付されていた。　「よし。ニシハラえらい。」　衛は思わず声に出して言った。それから近くのコンビニに入ると、急いでプリペイド携帯を１台購入した。  　　加藤は喫茶店に入ると、ウェイトレスを押しのけ、立ち上がろうとしている坂下の前に立った。　「あの、サカシタさんですよね、ヤマサキんちの秘書の。」　坂下は突然話しかけられ、驚いた様子だったが、加藤の顔を見ると、ああ、と目を細めた。　「君は、確か、ケンゴさんのご友人の・・・」　「カトウです。そのケンゴさん、ヤマサキのことで話があるんです。今時間ください。」 　加藤は坂下の腕を取ると、立ったばかりの席にもう一度座らせた。そして自分はさっき山崎が座っていた席に座り、すっかり氷が溶け水滴に覆われた山崎のグラスを手に取ると、一気に飲み干した。それから何事かとこちらを見ているウェイトレスに水くださいと空のグラスを指し出した。　「さっきヤマサキから封筒を受け取ってましたよね。中なんですか？」　加藤の勢いにあっけに取られていた坂下は、自分に問いかけられていると気付くのに少し時間がかかった。　「あ、ああ、これ？中は写真とかおっしゃってたかな。ケンゴさんから連絡があったら、中にある名刺の番号にFAXするように頼まれましたが、これが何か？」　坂下は落ち着いた感じでゆっくりと話す。加藤は気が急いて早口になる。　「鍵は？鍵は入ってない？」　鍵ですか？と聞き直して、坂下は封筒をゆする。加藤はじれったくなって封筒を坂下の手から取り上げる。そして封を開けようとしたところを坂下にきっぱりと止められた。　「申し訳ありませんが、それはさせられません。」　加藤の手から封筒を取り戻すと、水を運んできたウェイトレスにオレンジジュースを頼んだ。　「ケンゴさんがどうかされたんでしょうか。」　諭されて、泣きそうな顔をしている加藤に坂下がさっきとは違う優しいトーンで話しかける。　「あいつ、先輩を家に拉致してるんだ。その写真と鍵で何か脅しかけてるっぽいし。」　坂下はとても開いているとは思えない細い目を見開いた。　　「は・・・？拉致、ですか。」 　ウェイトレスが運んできたオレンジジュースを加藤に手で進めながら、２回ほど瞬きをした。加藤はストローを挿すのももどかしく、そのままコップを掴んでごくごくと半分ほど一気に飲み干した。　「あいつ、アキラさん、って、あ、先輩なんだけど、を自分のものにしたくて、閉じ込めちゃったんだ。このままだとあいつマモルさんに殺されるよ。当然っちゃ当然なんだけど、俺、あいつのこと助けたいって言うか、いろいろ知らなかった俺も悪いって言うか・・・」　目のふちを赤くさせて話す加藤の要領を得ない話を、坂下は頭の中で整理した。最近の山崎の態度もあわせて、これは少し厄介なことになっているということは瞬時に理解できた。　「この封筒は、ケンゴさんのものなので、お渡しすることはできませんが、兎に角、一緒にケンゴさんのところに行きましょう。」　加藤は坂下が伝票を持って立ち上がるのを見て、残りのジュースを口に入れると、両手で目をこすりながら後を着いて店を出た。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５６人物紹介 

  2006年05月07日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５４

  　衛は山崎が部屋を出て行ってから充分時間を空けて、彼の後をつけた。駐車場に出たところで加藤に連絡を入れてから車に乗り込む。　山崎は大学から西へ３０分ほど行った喫茶店に入っていった。衛は喫茶店の影に車を停めてから加藤の携帯を鳴らす。１０分ほどで、加藤が原付に乗ってやってきた。身をかがめながら足早に衛の車に近づいて窓を叩く。　「アキラさんからメールが届いたって本当っすか？」　加藤が助手席に乗り込みながら衛に尋ねた。　「ああ。やっぱりやつの家に閉じ込められてるみたいだな。ヤマサキとコンタクトを取ってる人間から写真と鍵を取り返せって。」　衛は窓を開けて、サイドミラーの角度を喫茶店の窓が見えるように調整した。　「写真と・・・鍵？アキラさんちの鍵ですかね。」　加藤は額の汗を拭うと自分側のサイドミラーも手で動かした。衛は窓のサンに腕を掛けて頬杖をつく。喫茶店の窓を鏡越しに眺めながら、メールのことを考える。暁は直には書いていなかったが、それらは圭に関しているものだろうと衛はなんとなく思っていた。　（恐喝、監禁、盗撮・・・立派な犯罪だろ、ヤマサキ）　鏡を通して山崎を睨みつける衛の険しい表情を見て、加藤は拳を握り締めた。　「ま、マモルさん。」　「ん？」　加藤の呼びかけに、衛は顔を動かさず声だけで答えた。　「アキラさんを助けた後、どうするつもりですか。あいつのこと。」　衛は目線を、俯いて自分の拳を見つめる加藤に向けた。　「警察にでも突き出すさ。」　加藤もそれは当然のことだと思った。それだけのことを山崎はしている。でもチクリと胃が痛む。右手で胃を押さえながら顔を上げる。衛に何かを言いたくて、口を開けるが、上手く言葉にならない。　「あいつは・・・」　それでも何か伝えようと声を出した途端、衛の手がそれをさえぎった。促されてサイドミラーを見る。喫茶店の窓の奥で、山崎の向かいに黒いスーツを着た男が座った。山崎に何かを手渡し、何かを話す。山崎はソファにだらりと腰をずらして座り、男の方は見ずに横を向いている。ウェイトレスが水を運んできて、注文を聞いて下がる。　「あれは・・・」　山崎が渡された袋を床に放り、それを拾い上げたときに、男の顔が正面から見えた。　「知ってるのか？」　衛が加藤に尋ねる。加藤はサイドミラーに顔を近づけてまじまじと眺める。　「確か、ヤマサキの父親の秘書をやってる人で、サカシタさんって言う人です。ヤマサキのマンションに何度か来たことがあります。」　衛はクイッと眼鏡を上げると、男の一挙一動を観察する。　「我がままぼっちゃんに手を焼いてるって感じだな。・・・来たことがあるってことは、マンションの鍵、持ってるのかな。」　衛が唇を舐める。加藤はその様子を見て、なぜかドギマギしながら目をそらせた。　「エントランス抜けて部屋の前まではいけると思います。ただ、部屋の鍵は山崎の指紋しか認証しないんで、勝手に入ることはできないと思いますけど。」　指紋認証という言葉を聞いて、衛がヒューと口を鳴らした。　喫茶店では、今度は山崎の方が封筒のようなものを坂下に押し付け、２言３言強い口調で何か話してから立ち上がった。　衛と加藤はシートに体を深く埋めて隠れた。　「マモルさんはこのままあいつを追ってください。俺はサカシタさんと話をしてきます。」　　加藤は衛が止める間もなく車を降りると、山崎が車を発進させるのを確認して、喫茶店に向かって走った。　「ち、ヤマサキのマンションの場所を聞いておくんだった。」　衛は舌打ちしつつも、しかたなく山崎の後を追うために車のエンジンを掛けた。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５５人物紹介 

  2006年05月06日

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• プライド見に行っちゃった

  朝東京から帰ってきて、昼間書き書きして、夕方更新しようと思ってたんだけど、友達に誘われてスポーツバーにプライド観に行っちゃいました。昨日のプライドはめっちゃ盛り上がった！というわけで、更新できませんでした。話はなんとなくゴールが見えてきたんだけど、見せ場のところで（いや、エロじゃなくて）うだうだしてます。Ｇ．Ｗ．中にある程度書き上げちゃいたかったんだけどな・・・無理だった。 

  2006年05月05日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５３

  　山崎が計画した通り、衛は圭を迎えに行かずに１人で登校した。昨日のビデオを見て、圭が衛を拒んだのだろうと思い、山崎はほくそ笑んだ。　衛と圭は山崎の動向を探るために、あえて別行動を取ることにしていた。衛が院生室に入ると、またも机の上には山崎からのCD-ROMが置かれていた。念のためウィルスチェックを掛けてから起動させる。　「・・・これはニシハラには見せられんな・・・何されてるんだか、あの男は。」　拘束具をつけられ、よがり鳴く暁の姿が映し出された動画を見て、衛はふざけたセリフを吐いたが、顔は笑っていなかった。　　その時メーラーがメールの受信を知らせた。　　衛は親指で自分のあごを支えると、無意識に人差し指で唇を触りながら、その短いメールを読んだ。　「なるほどね。・・・さて、どうしたものか。」　唇を噛み、クイッと眼鏡を上げたところで、ドアがノックされた。急いでメーラーを閉じてから促すと、山崎がするりと入ってきて、後ろ手にドアを閉めた。上目遣いに衛を見ると、口端を上げる。　「見て、いただけました？」　衛は椅子に座ったまま足を組むと、CD-ROMを手にとって振って見せた。　「これは立派な犯罪じゃないのか？ヤマサキ。」　山崎はフッと笑って見せると、左腕を体に巻きつけ、右手の親指の爪を噛んだ。　「もちろん合意の上ですよ。アキラはね、こういうのが好きなんだ。」　衛は、ほう？と片眉を上げてみせる。　「警察に突き出しても、そう言えるのか？」　山崎は一瞬驚いて見せると、声に出して笑った。　「あははは、警察？アキラの趣味を全国に曝す気？」　ひとしきり笑うと、衛に近づいてCD-ROMを奪った。それから、机に腰を掛けると、椅子に座っている衛を上から見下ろした。　「ねえ、もういいでしょう？ニシハラもあなたのことを軽蔑しているようだし、アキラから手を引いてよ、マモルさん。」　二人はしばらくにらみ合っていたが、やがて、ため息をつくと、衛が両手を挙げた。　　「・・・わかったよ。もうアキラには手を出さないよ。」　　山崎は、沸きあがってくる喜びで踊りだしたくなるのを無理やり押し込めると、暁は僕が幸せにするよと言って出て行った。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５４人物紹介

  2006年05月04日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５２

  前半かわいそうなのダメな人（意味不明？）読み飛ばしてくだされ。Ｈシーンです。大丈夫な人、反転させてお読みください。どぞ。　---　「やめ・・・ろ・・・もう。」　両手足をベッドに括り付けられ、自由を奪われた状態で、暁は溢れ出る涙を拭くこともできずに、おぼれかけていた。　「昨日とは全然違うね。やっぱりアキラはこういうのが好きだったんだね。」　山崎は、根元に射精を制御するためのリングをつけられた状態でパンパンに張り詰めているモノを、愛おしそうに撫でる。先からはとめどなく透明な汁が流れ出て来る。目から溢れる涙を舌で舐め取ると、後ろに挿入したバイブのスイッチを入れる。　「あああ！」　暁の悲痛な叫びも、山崎には歓喜の声に聞こえる。背中を仰け反らせた暁の姿をうっとりと眺める。　「こんなにも綺麗な君を、みんなが欲しがるのは無理ないね。でももう僕のものだ。」　山崎は暁の唇にキスをすると、耳元で囁く。　「僕がほしい？アキラ」　暁は浅い呼吸を必死で繰り返しながらも、山崎を睨みつける。無言で口を開け閉めする暁を見て、山崎が耳を近づける。　「てめえの小さいものじゃ満足できねぇよ。」　搾り出すような声でその耳に囁く。　バシッ　山崎が暁の頬を張った。　「そんなにおしおきが欲しいならあげるよ。」　山崎はバイブのスイッチを一気に最大にした。　「ぐあぁぁぁ！」　暁は大きく仰け反ると、意識を手放した。  　暁はまぶしい光の中で目を醒ました。ここはどこだったか、今日が何日だった頭がもやもやして考えられなかった。体が異常にだるい。喉が痛い。声を出してみようとしたが、掠れて空気の漏れる音にしかならなかった。額に手を当てようとして、血の滲んだ手首が目に入った。途端に夕べのことを思い出した。　「やばい！圭・・・」　ガバッと起き上がる。　（くそっ！何くだらないこと言ってんだ、夕べの俺！）　暁は山崎に悪態をついたことを悔やんだ。ふらつく足取りで寝室を出て山崎を探す。リビングにもダイニングにも山崎の姿は見当たらなかった。青ざめた暁の目に、テーブルの上のメモが飛び込んできた。走り寄って、すがりつくようにしてメモを取る。　[夕べのアキラ、素敵だった。朝ごはん用意したので食べてください。]　読んだ途端、全身から力が抜けた。その場でうずくまる。底の方から笑いが込み上げてきた。　「ふ・・・はははは。」　（都合の悪いことは全てなかったことにするわけだ。）　朝食は取る気になれず、トイレに流した。  　シャワーを浴びた後、リビングに放置してあった自分のノートPCに電源を指すと、メーラーを立ち上げ、衛宛に短いメールを書いた。それから、それを持って、近所の無線LANを無断拝借すべく家中を検索して歩いた。さすがに家内では拾った電波が弱く、接続を長時間維持することができなかったが、何度もチャレンジしてなんとか送信することはできた。　（これでマモルが動いてくれれば。）　暁は壁に寄りかかり長いため息をつくと、一時瞼を閉じた。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５３人物紹介 

  2006年05月03日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５１

  　山崎は鼻歌を歌いながら、両手に荷物を抱えてエレベーターを上がった。ドアの前で一度荷物を下に降ろし、指紋で鍵を開けてから荷物を持ち直す。　「あ、おかえり。」　リビングに入った途端、今日もキッチンから声がかかった。トントントンという子気味よい包丁の音と美味しそうな匂いが一緒にやってくる。　「ただいま。」　山崎は笑顔で声の主に近づいて、後ろから抱きしめた。　「シャワーして来いよ、すぐできるからさ。」　山崎は頷くと、軽い足取りでバスルームへ向かった。　　暁は山崎がバスルームへ入るのを音で確認すると、左手で、引き剥がすようにして右手から包丁を離した。右手はカタカタと小刻みに震えていた。こめかみを汗が流れる。全身を鳥肌が覆った。　（落ち着け、落ち着け。）　心の中で何度も唱えながら、深呼吸を繰り返す。目をつぶり、真っ暗にした部屋の中を思い出すと、不意に右手が温かくなった気がした。　「―――大丈夫、独りぼっちじゃない。」　圭の声が耳元でささやく。途端に呼吸が楽になって震えが止まった。暁は腕で顔の汗を拭うと、何も無かったかのように作業を続けた。  　その日の山崎は怖いほど機嫌がよかった。夕食を一口食べるごとに感想述べ、暁の料理を褒めちぎった。暁は学校で何かあったなと思ったが、表面上ニコニコと笑って見せた。　「アキラは、食べないの？」　さっきからちっとも箸が動いていない暁に、山崎が言った。　「あ、ああ、あんまり腹減ってないんだ。」　暁は、機嫌が悪くなられても面倒なので、無難にスープを一口飲んでみせた。スープだけでも胃が上がりそうになる。　「なあ、それより、パソコン持ってきてくれたか？」　暁は山崎の機嫌の良いうちに、聞きたかったことを切り出した。山崎は思い出したようにパッと顔を挙げると、フォークとナイフを皿の両脇に斜めに掛けて、立ち上がった。　それからすぐに、右脇に暁のノートパソコンを抱え、左手にピンクのチェックの紙袋を提げてリビングに戻ってきた。ダイニングに座っている暁を手招きして呼び寄せる。　「はい、これアキラの。・・・残念ながら、無線LANの契約はしてないから、ネットにはつなげないけど。」　山崎はにっこりと笑って暁にパソコンを手渡した。暁は笑って受け取ったが、内心あてがはずれた。　（まあ、そう上手くは行かないと思ってたけどな。）　暁は長いため息をついた。山崎はそれには気付かず、はしゃぐようにピンクの紙袋の中身を次々とリビングのテーブルの上に並べた。 　「今日はいいことがあったから、アキラにもプレゼントをたくさん買ってきたんだ。」 　テーブルの上に広げられたものたちを見て、暁は言葉を失った。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５２人物紹介

  2006年05月02日

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• 散髪日和　-君が思うほど・・・番外編-

  　真名さんに検索サイトを紹介していただいたお礼に、リクエストにお答えすると言うことで、「暁×圭のラブラブショートストーリー」書かせていただきました。　（ラブラブって言うより、暁のエロオヤジっぷりを露見しているだけのような気も・・・）お礼になってるのかわかりませんが(^^;)よかったらご覧ください。どぞ。---　「ケイ開けて～！」　食料を調達してから圭の家に来た暁は、両手に荷物を抱えていたため、圭にドアを開けてもらおうと声を掛けた。　「ちょ、ちょっとまって～。」　あわてた様子の圭の声が聞こえたと思うと、風呂場からばたばたとあわただしい音がした。　（シャワー中だったのかな、悪いことしたな。）　暁はそう思いつつも、シャンプーの香りがする圭を想像して、ニヤついた。しかし予想に反して1分もしないうちにガチャリとドアが開けられた。　（あれ・・・）　上下スエットというラフな格好で現れた圭からはシャンプーの香りのかの字もせず、髪の毛はいつも通り、いや、いつも以上にぼさぼさだった。　「ごめんね、今髪の毛切ろうと思ってたところだったんだ。」　そう言って圭は持っていたハサミをカチャカチャと握ってみせる。　「髪の毛！？何、おまえ、自分で切ってんの？」　暁は持っていた食料を危うく落としそうになった。暁の過剰な反応に圭は唇を尖らせる。　「だって、こんなのにお金払うのもったいないじゃん。」　そう言って圭は風呂場に戻った。　（どうりでいつもぼさぼさだと思ったよ。前髪も長いまんまだし・・・）　暁は鏡と向かい合う圭を見て、ハタと思いつき、ニヤリと笑った。　「俺が切ってやるよ。バックが切りにくいだろ？」　暁が後ろからハサミを取り上げる。圭は顔を上げて、上から覗き込む暁を見て眉をひそめた。　「いいよ。アキラさん、変にしそうだし・・・」　暁は圭の髪の毛を手櫛で整えながら、やる気満々に答えた。　「ばーか、お前、これ以上変にはなんねぇよ。俺を信じろ。」　な。と暁は鏡越しに圭に笑ってみせる。圭は変と言われて頬を膨らませながらもしぶしぶ承諾した。　「本当に変にしたら怒るからね。」　はいはい、と暁は答ながら圭のスエットを脱がせ始めた。　「なんで脱がせるの！」　圭は裾を手で押さえてガードする。　「ばーか、髪の毛がついたら洗濯面倒だろうが。」　「うう、2回もバカって言われた。」　泣く振りをしながら上半身裸になる。暁は満足そうににっこりと微笑むと、「ケイはばかじゃないばかじゃない」と、２回打ち消しながら、手で水をすくって圭の頭を撫でつけ、ハネを押さえた。　シャキッシャキッと潔いハサミの音が頭上でし始めた。圭は暁の手際のよさに、ポカンと鏡を見とれた。　「口に入るぞ。」　暁がそんな圭の様子を鏡越しにちらりと見て笑った。　「だって、アキラさん、本物の美容師さんみたいなんだもん。」　圭の目がキラキラと輝く。暁は器用に縦にハサミを入れて髪の毛の量を減らしながらまぁなと眉を上げた。　「実家、美容院だし。」　「うそ。」　暁の言葉に圭が驚いて振り向いた。　「こらっ動くな。」　圭は元の位置に顔を戻しながらも、目をぱちぱちさせた。　「はじめて聞いた。」　「はじめて言ったもん。」　圭のつぶやきに、暁は笑って答えた。自然に実家の話が出せた自分に驚いて、そして自然にできたことが嬉しかった。圭のつむじにチュッとキスをする。　「何？」　「なんでもない。髪の毛入るから、目つぶっとけ。」　ギュッと力を入れて目をつぶる圭にまた笑った。　圭は目をつぶりながら、暁の実家を想像してみる。　（アキラさんがいつも髪の毛ツンツンにしてるのは、そういうわけだったのか・・・お父さんもお母さんも美容師さんなのかな？アキラさんに似てるかな・・・）　　目をつぶりながら、七面相をしている圭を時々横目で見ながら、暁は一番重要な前髪を整えた。　（これでよし。んっふっふ。）　暁はバサバサっと手で振って、頭に残った髪の毛を落とした。それから下からかき上げて全体を見る。うん、良いできた。　「よし、できた。」　圭がゆっくり目を開け自分の姿を見る。　「わあ。すごい。」　全体的なイメージはそのままに、軽くふんわりした感じに仕上がっていた。自分じゃないみたいだと圭が感心する。　「でも、前髪短くない？」　眉にかかるかかからないか位の長さにまで切りそろえられた前髪を、圭は気にして引っぱる。　「そんくらいがいいんだよ。前髪なんてすぐ伸びるし。」　そうかなぁと言いながらも、圭はまだ気にして前髪をいじり続ける。　「ほら、髪の毛片付けるぞ。」　暁は買い物袋の中身を出すと、袋の中に切った髪の毛を捨て始めた。圭もそれを見て手伝う。９割方取れたところで、細かい髪の毛をシャワーで流す。　「わっ。」　暁がいたずら心を出して、シャワーを圭に掛けた。　「やめてよ、下が濡れるってば。」　じゃあ脱げ脱げと言いながら、暁は圭の頭からシャワーを浴びせる。　「シャンプーしてやるよ。」　圭は自分でやるってばと言いながら、顔にかかった水を手で拭って目を開ける。　「わー、なんで脱いでんだよ！」　その間に素早く服を脱ぎ捨てた暁が、シャンプーのポンプを押していた。　「濡れるから。」　にんまりと笑って圭に近づく。　「こ、これが目的だったんだな。」　壁に追い込まれて、圭が真っ赤になって暁を睨む。　「これって？シャンプーするだけだけど？」　暁はおや？という顔をして、しゃあしゃあと、手に取ったシャンプーを圭の頭に撫で付けた。圭はムッとして暁を睨むと、絶対に下は脱がないぞと心に誓った。  圭は壁に寄りかかって立ったまま、目をつぶって暁が自分の頭を洗髪するのを黙って受けていたが、前髪の生え際や、耳の後ろの辺りを優しく擦られるたびに、背中がぞくぞくっとした。他人に人間の大事な部分を触らせる行為自体、刺激的なことなのに、目をつぶっていて次にどこを触られるかわからない感じが、余計に煽られた。圭は我慢できずに目を開けた。が、目を開けた途端暁の裸が飛び込んで来て、心臓が波打った。　（うひゃぁ）　「どうした？」　「な、なんでもない。」　圭は顔を挙げることができず、うつむいたまま首を振った。暁はニヤリと笑うと、圭の耳に口を近づけた。　「お客さん、痒いところはないですか？」　耳に息がかかり、圭はたまらず身をよじった。　「な、ないです。早く終わらせて。」 　「じゃあ、触って欲しいところないですか？」　暁はシャワーでシャンプーを流すと、また耳元で囁く。圭は堪らなくなってへなへなとその場に座り込み、泣きそうな顔で暁を見上げる。　「やっぱりそうじゃないかぁ。ばかぁ。」　暁は笑って圭の脇に腕を挿し入れて抱き上げる。そのまま額に、目に、鼻にキス、キス、キス。口を尖らせてむくれていた圭も、唇へキスを落とすころにはすっかり受け入れていた。   　「や、やだ、もう・・・アキ・・・」　バスルームに圭の声が反響する。いつもは前髪が邪魔して見えない上気した顔が、うっすらと見える潤んだ瞳が、暁を登りつめる。　「やっ、ああっ・・・」　（うわっ・・・）　圭が達する瞬間の顔を見て、暁も放った。　「すげぇ・・・」　暁のつぶやきに、圭は息を整えながら目を開ける。そして放心している暁を見て首をかしげた。　「な・・・何？」　不安になって声をかける圭をがばっと抱きしめると、暁は顔中にキスをしながら背中をバンバン叩いた。　「お前、すげぇよ、やっぱ。ケイのイク顔最高！！すげえキタ。」　圭は、背中をギュウギュウ抱きしめられながら、何を言われているか分からずキョトンとしていたが、ハッと気付くと、暁を突き飛ばし、前髪を手で押さえた。 　「！！！！これか！」　暁のにんまり顔に洗面器がヒットする。　「もう、ぜっっっっったいやんない！」  　前髪が伸びるまで、暁は完全にお預けを食らった。---人物紹介 

  2006年05月01日

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  アフタ6月号から

  アフタ6月号の4枚目1番下のコマで、花井が泉にドンッて体くっつけてるの見て描いてみた。全然処理もしてないから駄漫画なんだけど、最近私の中で田島ザルと三橋イヌってキャラが生まれてかわいがっておるのです。34枚目1コマ目に水谷の横に田島がいるんだけど、45枚目1コマ目には映ってない。どこにいるか？花井の腰の辺りにぺちょって田島ザルがくっついてたらかわいいなぁ♪とか・・・はい、バカ満開です。だってほら、今日、暑いから。---

  2006年05月01日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５０

  　映し出された動画は、暁が山崎に向かって愛してるとつぶやくところから始まり、二人がキスしてベッドに入るところまでの過程が、編集されて３分ほどに収められていた。ご丁寧に、ベッドの中の暁の表情まで見せてくれている。　圭は動画が映し出された瞬間、驚いてよろけた。衛が腕でその背中を支える。　「大丈夫か？」　衛は画面から目を離さず声だけで尋ねた。圭は頷いて、衛の顔を見上げた。衛の表情からは心情を読み取れなかった。　動画が終わり、自動的にリスタートした。画面では再び暁が山崎に向かって愛してるとつぶやく。　「マモルさん、これ、どう思います？」　圭が画面を見つめたまま衛に尋ねる。衛は圭の背中からはずした腕を胸の前で組むと、口を開けた。　「何とも言えないな、編集されまくってるってことはわかる。何とかして言わせて、そこだけ切り抜いたんだろうな。ただ、アキラ本人があのセリフを言ったっていうのは間違いないな。」　「いえ、マモルさんがどう思ったか聞きたいんです。」　少し声に嫌気が含まれているように思えた。衛はクイッと眼鏡を上げると、圭を見た。　「・・・どういう意味だ？」　圭は、画面の中で山崎が暁の首に手を掛けキスをする様を、表情を変えることなしに見ていた。　「ヤマサキ先輩は、これを見ているマモルさんを僕に見せたかったんじゃないかと思います。」　衛は圭を見つめたまま、意図を量りかねていた。　「ヤマサキ先輩は、結局アキラさんはマモルさんと付き合うことになっていて、僕らはただの寄り道なんだって言ってました。それを僕に確認させたかったんじゃないでしょうか。」　（なるほどな、ヤマサキはニシハラに不信感を抱かせて、俺と引き離したがってんのか。）　衛は組んでいた腕を崩すと、喘ぎ声が聞こえだした動画を停止させ、再び圭を見た。　「で、お前はどう思ったんだ？ニシハラ。」　僕は・・・と言いながら、圭はうつむいたが、もう一度画面の中の暁を見てから、意を決したように衛を見上げた。「僕はそれでもかまわないです。僕は、アキラさんが手に入らなくてもかまわない。傍にいられるなら、それで。・・・いつか、遠くへ行ってしまうなら、それまで傍にいられるように、できるだけのことをするだけです。アキラさんが望むなら、好きじゃない振りするくらいなんてことない・・・ヤマサキ先輩は、やり方を間違えてると思います。」　衛はしばらく圭の眼を見ていたが、フッと力が抜けたように笑うと、圭の頭を撫でた。　「お前なら、あいつを変えられるかもしれないな。」---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５１人物紹介 

  2006年04月30日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４９

  　暁はベッドの上で、再び首輪をつけられぐったりとしていた。夕べ山崎はしつこいほど暁を抱いた。立たない暁のモノを、ねちっこく愛撫した。その行為に暁は何度も嘔吐しそうになり、萎える。山崎はその度に暁をなじり、行為をさらに煽った。悪循環の中、暁は目を瞑り圭の体を思い出す。圭のあえぎ声、いつも前髪が邪魔して見えないイク瞬間の顔、それらを想像してなんとか自分を駆り立てた。山崎に抱かれるごとに圭への思いが募っていくのを感じた。　「圭・・・」　暁はつぶやいて、枕を抱きしめていたが、やがてため息をつくと立ち上がった。汚れたシーツをずるずると引きずってバスルームへ向かう。途中、どろりと内側から山崎が放った精液が流れ落ちてきて、夕べからずっと堪えていたものを、バスルームに走り込んで吐き出した。　「げほ、げほ・・・くそっ」　シャワーで胃液を流すと、バスタブの端に腰掛け、頭から熱いシャワーを浴びた。　どんなに熱いシャワーを浴びても、底からせり上がってくる冷たい水は徐々に身体を冷やしていった。 　「平気か？」　圭をなるべく１人にしたくないと、家まで車で迎えに行った衛は、圭の顔を見た途端思わず聞いてしまうくらい、圭の顔色は悪かった。　「ちょっと眠れなかっただけです。もう平気です。」　車に乗り込みながらそう口にした圭の声は、確かに弱々しいものではなかったが。　「家だと眠れないか。院生室に暁の寝袋があるから、それ借りて寝てたらいいよ。」　「・・・それは余計に眠れそうにないな。」　圭の呟きが聞こえず、右にウィンカーを出しながら衛が聞き返す。　「いえ、なんでもないです。今日は教授の手伝いがあるんで、大丈夫です。」　　圭は院生室に入ると、暁の机の上に置いてあったノートパソコンがなくなっていることに気が付いた。　「アキラさん、学校に来たんでしょうか。」　圭のセリフと視線に、衛も暁の机を見た。パソコンが置いてあった場所に付箋紙が貼られた１枚のCD-ROMが置いてある。　「なんだ。」　衛はそれを手にとって見た。　[これが証拠だ。山崎]　付箋紙にはボールペンでそれだけが走り書きされていた。　「証拠って何です？」　圭が横から覗いて尋ねる。衛はクイッと眼鏡を上げると、自分の席に着き、パソコンの電源を入れた。　「アキラが、ヤマサキに夢中な証拠なんだと。」　圭は唇に手を当て考えた。　（自分には衛と暁がつきあってるようなことを言っていたのに。なんだろう・・・。）　念のためウィルスチェッカーをかけてからCD-ROMファイルを開けると、中には一本の動画ファイルが収められていた。　衛は、二人で見られるように立ち上がると、圭の横に並びその動画を再生した。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・５０人物紹介 

  2006年04月29日

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• 君が思うほど・・・４９

  原稿が入ってるメディアを持ってくるの忘れました・・・。いつかやるとは思ってたけど、ってか、今まで忘れてこなかったのが不思議だわ。というわけで、明日、明日更新いたしますm(_ _)m 

  2006年04月28日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４８

  　暁が食事の片づけをしている間、山崎は例の部屋にこもっていた。食器を洗い終わりソファでくつろいでるところへ、山崎が部屋から出て近寄ってきた。部屋のドアが閉まる音が、やけに響いて聞こえた。暁が立ち上がると、山崎はゆっくりと暁の首に手を回して、首輪鎖を鍵ではずした。　「こんなものがついてちゃ、楽しめませんからね。」　山崎が目を細めて暁を見上げる。口元には笑みを湛えている。　「いいのか？俺を自由にして。」　片眉を上げる暁を見て、山崎はくすくすと笑った。　「自由？こんなものがついていなくても、あなたに自由はありませんよ。あなたは僕のものだ。そうでしょう？」　暁は一瞬冷たい目で山崎を見下げそうになったが、目を閉じてそれを隠した。山崎は指先で唇に触れ、うっとりと見上げた。 　「僕を愛してると言って」 　暁は驚いて目を見開いた。　「なんじゃそりゃ、アホらし。」　バカにしたようにハッと鼻で笑った瞬間に、頬に痛みが走った。一瞬何が起きたかわからず、山崎を見降ろすと、２発目が飛んできた。　「言え！それがノートパソコンを持ってくる条件だ。愛してると、僕が欲しいと言え！」　暁はカッと頭に血が上るのを感じた瞬間、頬を押さえることも忘れ、山崎の両手を掴み壁に押し付けた。　「いたっ。」　山崎は背中を壁に強かに打った。暁は奥歯を噛み締め、怯える山崎を長いこと睨みつけていたがフッと力を抜くと、下唇を噛み目を閉じた。　それから真っ直ぐに山崎を見据えて、上唇を舐めると、ゆっくりと顔を近づけた。 「・・・あいしてるよ。お前が欲しい。」 　山崎は全身から力が抜けそうになるのを何とか堪えた、全身が打ち震える。欲しかった言葉が手に入った喜びで赤く染まる手を暁の顔に伸ばす。　「いいよ、かわいがってあげるよ。」　暁は山崎が自分を抱くつもりだと言うことがわかって、安堵した。抱かれるだけならなんてことない。 　ソファで山崎を受け入れながら、早く終わらせることだけを考えていた。 　床から上がってきた冷たい水はすぐ傍まで迫ってきていた。 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４９人物紹介 

  2006年04月27日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４７

  　山崎は駐車場に車を止めると、暁のバイクが止まっていることを確認してニヤリと笑った。自然と歩幅が広がる。エレベーターのドアが開く時間も長く感じられ、半分しか空いてないうちに体を外に出した。指紋を押してドアを開ける。　「あ、おかえり。」　リビングに入った瞬間にキッチンから声がかかり、山崎はギョッとした。　「た・・・だいま。」　無意識のうちに答えてしまい、気付いて顔が赤くなる。　「腹減っちゃって、冷蔵庫の中適当にあさって作ってるんだわ。お前の分もあるからシャワー浴びてこいよ。」　暁の明るい物言いに不振がりながらも、山崎は例のリビングの奥の部屋に鞄を置きに入った。　（鍵はかけられてないみたいだな。）　すぐに閉じられたので、中を見ることはできなかったが、暁はフライパンを操りながら横目でそれだけは確認した。　山崎がシャワーを浴びている間に、部屋に近づき、耳を澄ませた。微かに衛からの着メロが聞こえた。　「やっぱあいつ、持ち歩いてるのか・・・」　暁はそうつぶやくと、長く伸びた鎖を恨めしく見つめた。 　向かい合って食事を取りながら、山崎はチラチラと暁をうかがった。暁はテレビを見ながら、まるで自宅にいるかのように、ときどき笑ったりしてくつろいでいる。　「あのさ。」　テレビに集中していると思っていた暁から声をかけられ、山崎は思わず「はい」と言って背筋を伸ばしてしまった。心の中で舌打ちする。暁は、山崎のそんな様子を気にするでもなく続けた。　「昼間、相当暇なのよ。俺のこと帰す気無いなら、俺のノートＰＣ持って来てくんない？」　暁は、フォークを口に運びながらなんでもないことのように切り出したが、内心断られるのではないかと緊張していた。手が震えていないかと心配だった。山崎はそんな暁の心の内には気づかず、これは好都合とばかりにニヤついた。　「いいですよ。そのかわりやって欲しいことがあるんです。」 ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４８人物紹介

  2006年04月26日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４６

  　暁は山崎が出て行き、自由になってすぐに動き出した。まずは衛に連絡を取ろうと、携帯を探した。鞄をあさったが見つからなかった。　「まあ、犯人としては当然だよな。むしろ駐輪場に捨ててきた方が賢明だったのか・・・バカだな、俺。」　頭をガシガシとかくと、気持ちを切り替えるように、短く息を吐いた。次に首輪をはずそうと試みたが、手錠と同じように鍵がかかっていて外れそうになかった。首という位置がさらに物事をやり難くしていた。仕方なくあきらめ、家捜しを始めた。　「ケイの証拠を見つけ出して隠滅するか、対抗できるヤマサキの弱点を見つけるかだな。」　暁はそうつぶやくと、２ＬＤＫの部屋を見渡した。暁が動ける範囲は寝室とリビングの一部、キッチン、風呂、トイレだった。リビングの奥にあるもうひとつの部屋と、玄関、テラスにはちかづけなかった。　　　冷蔵庫を開け、適当に腹ごしらえすると、キッチンを一通り見て回った。キッチンには冷蔵庫、シンク、コンロに備え付けの戸棚があった。すべて隅から隅まで、裏側までチェックしてみたが、何も見あたらない。トイレに入ってトイレのチェック、シャワーを浴びて風呂場のチェック。タオルを一枚一枚広げてみたが、何も出てこなかった。　リビングのフローリングを叩いてチェックしているときに来客を知らせるチャイムが鳴った。一瞬助けを求めるチャンスだと思ったが、出かけ際山崎が言っていたセリフを思い出し、断念した。　「結局のところ、ケイの問題を何とかしなくちゃ、ここを抜け出しても意味がないってことか・・・」　暁はチャイムを無視して作業を進めた。　さらに2時間ほどかけてくまなく見て回ったが、役立ちそうなものは何も出てこなかった。　「あの部屋には何かあるんだろうな。」　リビングの奥のもうひとつの部屋のドアを見つめた。鎖が届くぎりぎりまで寄って、足を伸ばしてみたが、足の指先がドアノブに微かに触れる程度しか届かない。それでも必死で伸ばしてそれでも必死で伸ばして何度かチャレンジしてみる。　「いって！・・・つった・・・」　無理な体勢で無理やり伸ばしたせいで、足の裏が吊った。リビングの床に横になって、足の裏を延ばしながら天井を見上げる。天井の角にカメラが付いていることに気付いた。　　（部屋の中にまでカメラか・・・俺なにしてんだろ・・・逃げようかな）　目を瞑ると圭の笑顔が思い出された。またチャイムが鳴った。　「くそぅ！もう！何で俺はほっとけないんだ！」　うつぶせになってチャイムが聞こえないように耳を塞ぐ。　「・・・懐柔策しかないかな・・・」　暁はつぶやいた途端、冷たい水が床から上がってくるような感覚にとらわれ、眉を寄せて目を閉じた。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４７人物紹介 

  2006年04月25日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４５

  　圭は院生室のドアを閉めるとその場に立ち尽くした。片目からポロリと涙が落ちた。　（なんだろ・・・これ）　それを認識した途端、寂しさが一気に込み上げてきた。　「うっく・・・」　圭は思いがけないショックを受けていた。衛と暁が関係を持っていたことにではなく、相手が衛だろうとそうでなかろうと、暁が自分の傍からいなくなることを想像して、ショックを受けている自分にショックを受けたのだ。　（今まで、ずっと独りで生きてきたのに。ずっと独りで何ともなかったのに、ずっと独りでよかったのに・・・）　圭は、頬に触れる暁の指の感触や抱きしめられた肌の温かさに、いつのまにか安心感を得るようになっていた。　「もう・・・・」　唇を噛み締め、涙がそれ以上溢れてこないように硬く目を瞑った。   　「あいつ、アキラさんのこと好きだったなんて・・・知らなかった。」　加藤は背中に手を置いて、壁に寄りかかってうつむいた。衛は眼鏡をクイッと上げると、背もたれに腕をかけ、加藤を見上げて言った。　「・・・どうだろうな。アキラにコケにされて、意地になってんじゃないかな。」　「うん・・・あいつ、今まで手に入らなかったものなかったからな。」　加藤は今しがた山崎が出て行ったドアの方を見た。　「相談されてたら、協力してやったか？」　衛が少し意地悪く聞いた。加藤は一瞬、衛の方を向いたが、すぐに自分の足元を見るとフッと笑った。　「さあ、どうだろ・・・もうわかんないや。」  　「あいつも何やってんだかね・・・」　衛は、一向につながらない暁からの着信がないことを、もう一度確認すると、携帯をパタンと閉じ、立ち上がった。  ---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４６人物紹介

  2006年04月24日

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• 明日、明後日と

  ライブがあるので東京行ってきます。なので更新は月曜日になるかと。日曜日の夜できるかもしれないけど、期待させといてできないと悪いので、月曜日で！アディオス！

  2006年04月21日

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• 君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４４

  　衛はこれ以上何かあっては困ると思い、圭を先に院生室に帰した。それから、山崎をミーティングルームの奥の席に座らせると、入り口に近い席に向かい合って座った。加藤はまるで門番のように入り口付近の壁に寄りかかって立っていた。　「夕べ、アキラがお前のところに行っただろう。」　衛が切り出すと、山崎はニヤリと笑った。　「ええ、来ました。一晩ずっと一緒でした。」　山崎の表情で、暁が手を出したと勘違いした衛は、またあいつは。と言って人差し指でこめかみを押さえ、ため息をついた。　「今度はどんな理由つけたんだよ・・・」　「は？」　衛の独り言が聞き取れず、山崎が聞き返した。　「いや、なんでもない。」　衛は眼鏡をクイッと上げると、テーブルに肘をかけ、両手を組んで口に当てた。その姿勢で牽制するように山崎を見た。山崎は背もたれに寄りかかると足を組んで、負けじと下目に衛を見た。　「お前勘違いするなよ？あいつがどんな理由をつけたか知らないけど、本気じゃないからな。」　山崎は横を向いてフッと鼻を鳴らすと、流し目で衛を見た。　「アキラさんは僕のものですよ。あなたには渡しません、マモルさん。」　山崎のそのセリフに加藤はギョッとして組んでいた腕を崩した。　「お前、何言ってんだよ。意味わかんねぇよ。」　加藤のバカにしたような物言いに、山崎は加藤に向き直って目を吊り上げた。　「お前には関係ないんだよ！アキラさんは僕にメロメロなんだ！」　「メロメロってお前・・・いつの言葉だよ。」　加藤は眉を上げ、あきれ返ったたような力の抜けた顔で山崎を見た。　「突っ込むところはそこかよ。」　山崎が立ち上がって加藤に向かっていく。加藤もそれに応戦する。　「他にどこがあるんだよ、てめぇのケツにでも突っ込めってか？何なんだよお前！」　「ストーップ。」　お互いに掴み合いそうになったところに衛が割って入った。そして加藤の額を指で軽くはじいた。　「暴走を止めるはずのお前が、けしかけてどうする。」　加藤は２，３歩よろめく様に下がると、ストンと壁に寄りかかった。目の前で山崎がおかしくなっていく様を静観することができなかった。悔しさのような、怒りのような説明の付かない感情が湧き上がってくるのを目を閉じて堪えた。　「お前もアキラを買いかぶりすぎるな。あいつはお前が期待しているような奴じゃない。」　山崎は衛に掴まれた腕を振り払うと、両手で髪をかきあげた。　「ヤキモチですか、マモルさん。みっともないですね。・・・いいでしょう、アキラさんが僕に夢中なことを証明してみせますよ。」　山崎は、衛を睨みつけながら感情を無理やり噛殺したような棒読みのセリフを吐くと、加藤とはいっさい目を合わさずに部屋を出て行った。加藤も顔を逸らせたままだった。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・４５人物紹介

  2006年04月21日

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