君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・43
山崎は、99%圭はこちら側に着くと確信していた。衛さえ二人でどうにかしてしまえば、切り札を持っている自分に、暁と圭を引き離すのは簡単なことだと考えていた。 「付き合いも長いみたいだし、このままじゃアキラさんはそのうちマモルさんのものになっちゃうと思わないか?」 圭は小さくため息を吐くと、自分の頬を手のひらでこすった。圭の顔つきが変わり、山崎は望んだ答が聞けるとにわかに色めく。 「・・・アキラさんは、誰のものにもなりたくないし、誰も自分のものにはしたくないと思う。」 圭の返答に山崎は肩透かしを食わされた気分になった。しかしすぐに自説を弁護する。 「今はそうかもしれないけど、そのうちあいつら落ち着くって。決まってるんだ。だからアキラさんも安心しちゃって、遊んでんだ。ちょっとした寄り道に過ぎないんだって思われてるよ。あいつらを引き剥がせば、こっちを向いてくれる・・・かもしれないじゃん。」 山崎は興奮して少し早口になったが、それに気付いて、最後は少しトーンを落とした。そして落ち着くために、両手で髪をかき上げ、コーヒーを一口飲んだ。 「僕、興味ない。」 圭はストローでジュースを飲むと、言い捨てた。山崎はそれを聞き奥歯を噛み締めた。 「このままじゃ、すぐに捨てられるんだぞ!」 圭は自分の涙をぬぐうように、紙コップの水滴を袖口で優しく取り去ると、山崎を真っ向から見据えた 「僕は、ヤマサキ先輩が考えてるほど、アキラさんのこと好きじゃないよ。アキラさんを僕のものにしようなんてちっとも思ってない。」 山崎は絶句した。圭は黙ってしまった山崎を見て、オレンジジュースを吸い込むと、帰ると言って立ち上がった。山崎は藁をもつかむような気持ちになって圭の腕を掴んだ。 「じゃあなんで寝たんだよ。」 圭は、悲壮感さえ漂わせる山崎の顔を上から見下ろすと、ゆっくり瞬きをした。 「別に、理由があったから。それだけ。・・・ヤマサキ先輩こそ、しつこいと嫌われるよ?」 最後の一言に含まれる悪意に、圭は自分でも驚いた。 「・・・こいつ!」 山崎が、掴んだ圭の腕を突き飛ばした。圭が後ろのガラスに突っ込みそうになる。 「やめろっ。」 衛がすばやくガラスとの間に立って圭を支えた。すかさず加藤が山崎を後ろから羽交い絞めにする。山崎は衛の顔を見ると、にがにがしく舌打ちをした。 「とにかく人のいないところで話そう。これ以上目立ってもしょうがない。」 衛はざわめき始めたカフェを見渡すと、先に山崎と加藤を促し、圭の頭を撫でて背中を押した。---君が思うほど僕は君のこと好きじゃない・44人物紹介