カテゴリ:読書
……前回の読書カテゴリで、また大江健三郎を読み始めたと書きましたが。
面白い! しかしまた大部なものでなかなか進まない。 弓子さんは「屋敷」を背にしていくらか歩くだけで、周りが真の暗闇となるのに驚いていられた。懐中電燈で斜め前方を照らし出しているのではあるけれど、舗装された道の脇の夏草の茂りに始まり、緑の上に墨を塗りかさねたような暗さが木立へ続き、森を見上げると暗黒の壁のようだ。 …(中略)… 私は弓子さんの嘆声の奥深さから、あらためてこの暗闇の中で生き続けて不思議にも思わない、いまの自分を意識していた。東京から帰ってしばらくは、自分の寝室に横たわっていても、「屋敷」を囲んでいる暗闇の絶対的な暗さが、頭のジーンとするほど色濃く感じとられていたのに…… 『燃え上がる緑の木~「救い主」が殴られるまで』より 同郷のせいもあるだろうが、こんな細部の実感、よくわかるなあ。 ……疲れるので(笑)、息抜きに別の本も読むことにしたのだが。 柳美里『ファミリー・シークレット』 ファミリー・シークレット 息抜きにならん! 汗 柳美里のご子息は、確かうちの長女の1歳上。 発表される作品を追いかけると、ちょうど長女の年と重なる感じなので、常に気になっている。 一昨年だったか「虐待疑惑」に柳美里ブログ炎上、という話があったが、そのきっかけが「息子のついた意味のない嘘」で、当時私もこんなことを記事にして悩んでいたりしたので手に汗握りながら記事を読んだ記憶がある。 この本は、そんな軋轢の原因を「虐待の連鎖」、すなわち柳美里自身が幼い頃に受けた虐待にあるとして、彼女が受けたカウンセリングの様子を赤裸々に記録したもの。 記録通りに整然とは話されていないのだろうけれども、また脚色もたぶんあるだろうけれども、柳美里という人の性格も境遇も考え方も、結果としての対人関係も、オソロシイほど見えてしまう本だ。 そして、彼女が繰り返し小説の中で殺してきた「父」が登場する章ときたらもう……涙なしには読めん。 真実は永遠にわからない。 虐待した方もされた方も、日々記憶を作り替えてでも、なんとか生きのびてきたのだろう。 ほんとに、やっとのことで。 辛い。 ……丈陽がんばれ! 次。 那須正幹『ぼくらは海へ』 ぼくらは海へ さっそく読みました! 新刊のソムリエ、もんたまさんの紹介本。 ま、新刊、と言っても昔の本だったのよね…… セイタカアワダチソウが跋扈する埋め立て地、という舞台をかなりリアルに想像できる年代と出自でした、私。笑 途中の話はもんたまさんレビューに譲るとして、ラストは私は、桐野夏生『柔らかな頬』の子ども視点版、ととらえました。 結果として死に向かうかもしれないけれど、行き先は子どもの王国。 ……子どもが親を捨てる行為であると。 あんなことがあってからたったの3日間で、12歳をまた日常に放置してはいかんですよ親! 自分の家庭じゃなきゃいいんですか! 大人はいますぐ、想像力のなさを反省してください! ぐわー。 ちょうど観たばかりの映画、「告白」の感想とかぶった……。 大人って責任重大だ……。 読書生活、続く。次回は「告白」で。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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