「選別ですな、選別。」(その3)
「食料・農業・農村基本法」が、農業政策の最も基本となるべき法律でしょうから、それを見てみました。 基本法、というくらいですから、その分野の憲法ともいうべきものです。 で、ウィキペディアによると「産業法」という分野に分類されるそうですから、農業を産業として、どうやって発展させるか、というようなことを書いているのかと思いきや、どうやら、この法律の関心は、その方向には向いていない。 第一印象は、よいところも悪いところも含めて、現在の村落共同体を守ろう、日本の食料自給率を上げるということや、貿易自由化に対応できる農家を育てる、などいう、日本の農業の抜本的な改革が必要なことはするべきではない、予算や補助金が必要なら、それを取るために必要なことは、すべて書き込んである、というような法律だ、ということです。 たとえば、これ。(高齢農業者の活動の促進) 第27条 国は、地域の農業における高齢農業者の役割分担並びにその有する技術及び能力に応じて、生きがいを持って農業に関する活動を行うことができる環境整備を推進し、高齢農業者の福祉の向上を図るものとする。 別に、この趣旨に反対するわけではないのですが、この種の条文が山と盛られてしまうと、大胆なことなど、できるわけがない。 さらには、これ。(多面的機能の発揮) 第3条 国土の保全、水源のかん養、自然環境の保全、良好な景観の形成、文化の伝承等農村で農業生産活動が行われることにより生ずる食料その他の農産物の供給の機能以外の多面にわたる機能(以下「多面的機能」という。)については、国民生活及び国民経済の安定に果たす役割にかんがみ、将来にわたって、適切かつ十分に発揮されなければならない。 日本人の情緒に訴えかける内容があり、あやしい条文です。 「食料・農業・農村基本法」は、まだ、ましだった「農業基本法」(昭和36年成立、平成11年成立)を改正するという形で、平成11年に成立した法律です。 なんで、こんな法律ができたのかはよく分からないのですが、多分、当時から低落傾向にあった自民党の票田を維持確保する、というためだったのでしょう。 それと、農協系金融機関だけが、なぜ、保護されるのか、というような批判が起きた住専問題が、平成7年ころですから、同じような問題が再び起きた時に、そのような批判に対抗できる法的根拠を与える、というような目的があったのかもしれません。 いずれは、改正されるでしょうが、これは、ちょっと、という感じがします。