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カテゴリ:屋久島巡礼
今年の梅雨は本格的だ。 もうずいぶん長い間、すっきりと晴れたすがすがしい日には、とんとご無沙汰している。 時折、梅雨の晴れ間が顔を出すことはあったが、直ぐに厚い雲に覆われてしまう有様だ。 この半月ぐらいで、幾度か青空と太陽にはお目見えしたが、それもつかの間のことだった。 お月様については、満月は言うまでも無く、欠けた月にはほんの1~2回しか拝めなかった。 天気予報によると、東京では来週一杯もずっと曇り/雨マークが続いている。 青空や紺碧の夜空が恋しい。 そんなこんなで、私事もさることながら、うっとうしい日々を送っています。 ふと、ブラッドベリの『すべての夏をこの一日に』を思い出しました。 そのSF短編小説の舞台は金星、金星に住む子供たちの物語。 ◇ ◇ ◇ そこでは、幾千年も、幾日も雨が降りしきる惑星と言う設定だ。 そこで生まれた子供たちは、9才。 7年前のある一日に、1時間だけ太陽が貌を見せたことがあったが、みんな思い出せない。 ただ1人、地球に生まれ移住してきたマーゴウという少女だけが太陽の様相を知っていた。 そして、今日こそは7年ぶりに太陽がその姿を見せる貴重な一日なのである。 科学者たちが予告したのだった。 マーゴウは、太陽を見たことの無い他の子供たちからは特異な目で見られ、一種のいじめを受ける。 無邪気ではあるが、残酷な子供たち。 もうすぐ太陽が貌を見せると言うその直前に、マーゴウは他の子供たちの悪戯で戸棚に閉じ込められてしまう。 マーゴウにその瞬間を見せないという、心底の悪戯は無かった。 ちょっとした悪戯だった。 しかし、その時が来て、色めき立って先生の合図で校庭に駆け出す子供たち。 すっかり、マーゴウの事なんか忘れてしまっていたのだった。 科学者の予告どおり、厚い雲は俄かにかき消され雨がやむ。 そこには、初めて見る燃え盛る太陽が輝いていた。 ほんの2時間の間、子供たちは初めての太陽を驚きと共に享受する。 子供たちはすべてを見、すべてを味わい、1時間もの間歓喜の中で走り回る。 そしてまた、予告どおり、ポツリポツリと雨粒が落ち始め、太陽はまた消えていくのだった。 俄かに雷鳴が鳴り、また雨が激しく降り始める。 また、7年も降り続くのだ。 そこでふと、ひとりがマーゴウのことを思い出す。 「あっ」、みんなも気づく。 「戸棚の中にとじこめたままだ」 子供たちは、ゆっくりと戸棚のところへ歩いて行き、扉の鍵をはずしそろそろとマーゴウを外につれだす。 ◇ ◇ ◇ そこでこの短編小説は終わっているのだが、まるで、マーゴウが太陽そのものだったような余韻が残る傑作である。 この作品は『メランコリイの妙薬』(早川書房)に掲載されている。 SFの古典だが、3年前に改定版が刊行されているので、興味のある方はご一読を。 あらすじをばらしちゃったけど、ブラッドベリはその着想もさることながら、文体をこそ味わうべき作家ということらしく、訳書でも充分その不思議な世界は味わえる。 他にも、たくさんの秀作が入っているので、これを機会に是非ブラッドベリの世界に浸ってみるのも乙なものですよ。 さて、以上の連想で当然思い浮かべたのは、今月22日に起きる天文現象、<皆既日蝕>のことです。 日本列島で見られるのは1963年以来の46年ぶりのことで、次は26年後の2035年まで待たなければなりません。 人生だいたい72年とすると(R.シュタイナーの説)、ちょうど足掛け3回となります。 わたしは小学校の教室から先生に促がされて下敷き越しに見た記憶があります。 部分日食でしたが、太陽が月のように欠けるのを見て驚いた記憶が微かにあります。 2035年には、私自身生きているかどうかわからないので、是非この機会に体験したいと思っています。 わたしは運良く、屋久島への遠出が確保できました。 後は、当日の天候だけですが、是非晴れて欲しいものです。 ちなみに、まぁ、2035年の皆既日食を見てからこの世を去りたいという希望もあるのですが。 トカラ列島や硫黄島などでは皆既日食帯に掛かるので、その瞬間が見られますが、日本列島のほとんどの場所では部分日食になります。 福岡で90%、東京で70%、北海道で50%だったかな、11時から正午あたりです。 部分日食では真っ暗にはならないので、ややもすると見過ごしてしまいます。 10%の光でも、太陽光は充分に眩しいのです。 国立天文台の先生方が、裸眼で太陽を見ることの危険性を声高に広報していますね。 悪くすると失明の恐れもあるそうです。 是非見てみたいと思う方は、日食専用グラスを用意した方が良いようです。 300円から1000円くらいで市販されています。 しかし、未だにうっとうしい梅雨は続いていますね。 今日は半夏生、田植えの時期ももう終わり。 七夕の満月には晴れて欲しいですね。 久しぶりにクリアーなまん丸お月様が見たい気分です。 ~ 雨の夜の風景(このオーブは雨粒でしょうか) ~ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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