「とりどりみどり」西條奈加 (著)
万両店の末弟、鷺之介が齢十一にして悩みがつきない原因とは――。
時代小説の名手が描く、ホロリと泣かせる大江戸謎解き物語。
万両店の廻船問屋『飛鷹屋』の末弟・鷺之介は、齢十一にして悩みが尽きない。
かしましい三人の姉――お瀬己・お日和・お喜路のお喋りや買い物、芝居、物見遊山に常日頃付き合わされるからだ。
遠慮なし、気遣いなし、毒舌大いにあり。三拍子そろった三姉妹の傍にいるだけで、身がふたまわりはすり減った心地がするうえに、姉たちに付き合うと、なぜかいつもその先々で事件が発生し……。
そんな三人の姉に、鷺之介は振り回されてばかりいた。
ある日、母親の月命日に墓参りに出かけた鷺之介は、墓に置き忘れられていた櫛を発見する。その櫛は亡き母が三姉妹のためにそれぞれ一つずつ誂えたものと瓜二つだった――。
西條奈加 さんの本は何冊か読んでいるが、読みやすいし気持ちが柔らかくなるものが多い気がして、これも辛いニュースから逃げるように読んでしまった。
私にとって読書には、そんな効用があるのだ。
この作品は時代は江戸時代だし、登場人物の家はいわゆる富裕層。
現代でもそうだと思うが、富裕層がそれだけで完璧に幸せとは限らず、
富裕層だけに抱えやすい家族の問題もあるだろう。
この作品の登場人物はとても個性的で鼻持ちならない姉たちもいるけれど、
根っこはみんな善人ばかり。
それがまず、いやな気分にならなくていい。
連続短編集ともいえる作品で、隙間時間に読めるのもいい。
そして、読後感はとても心が温かくなるものばかり。
「読む心の薬」としてお勧めです。