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カテゴリ:心身の健康、不登校、ひきこもり
「3週間で再登校」業者を紹介 不登校の親に、批判受け中止 板橋区
不登校の子を持つ保護者を支援し「平均3週間で再登校している」などと実績をPRする民間事業者を、東京都板橋区教育委員会が区立校を通じて保護者に紹介していた。これに対し、不登校問題に取り組むNPOなどから「無理な再登校の働きかけはリスクもある」などと批判が相次ぎ、区教委が紹介をやめる事態となった。区教委は「試行だった」などと釈明している。 事業者は株式会社スダチ(東京都渋谷区)。同社のサイトでは「不登校を3週間で解決する」「再登校できたお子様90%以上」などと紹介。子どもとの接し方を、研修を受けた同社スタッフが保護者にオンラインで指導する。家庭でのルールを決めたり、褒め方を工夫したりし、状況を毎日把握しながら、登校日を決めて再登校をめざす、などとしている。 区教委によると、昨年10月、区議の仲介で同社から事業内容の説明を受け、今年5月には、希望する家庭に対する無償サポートの提案があった。同社から子どもに与えうるリスクの説明はなかったが、不登校問題の多様性も考慮し、「一部の家庭には効果があるかもしれない」(担当者)として試行を決めた。 不登校について区教委は「『登校する』という結果のみを目標としない」という対応方針を定めている。取材に対し、区教委の冨田和己・指導室長は、同社の事業内容との整合性について「登校できるようになるからではなく、保護者へのアプローチの選択肢になると思った。方針と矛盾するとは考えなかった」と話した。 「試行」決めた区教委 業者側は「連携」と発表 区教委は不登校児童数の多い区立小2校を選んで同社に紹介した。2校は7月、同社の説明を受け、うち1校が保護者9人にチラシを配布。1人の保護者が関心を示したが、契約には至らなかったという。 その後、8月に同社が、区に相談なく「板橋区と連携」などとする文章を公表。すると区教委に、「区の不登校の対応方針と矛盾する」「親子関係が悪化しかねない」などの意見や批判が相次いだ。「連携」と表現した同社との認識の違いもあり、区教委は試行をとりやめた。冨田室長は「検討が拙速で十分ではなかった」と釈明した。 ゲーム取り上げられ、暴れた子ども 利用者の証言 一方、不登校生を支援するNPO団体などは8月、同社との関係を問題視し、公開質問状を区教委に提出した。再登校支援を宣伝する民間事業者によって子どもの精神状態や家族関係が悪化した事例が寄せられているとし、「無理な再登校の働きかけは自死のリスクを高めるとの指摘もある」と言及。同社と区が関係を持った経緯などを質問した。また、保護者にサービスを紹介する際はリスクについて説明することなどを求めている。 同社が公開している動画によると、今年6月までの4年間で1050人を再登校に導いたとし、再登校までの平均日数は17.5日だと説明している。「サポーター」と呼ばれる同社のメンバーが保護者とやりとりしながら、伴走するという。費用は子どもや家庭の状況によって異なるとしている。 同社を利用したが、子どもは再登校には至らなかったという中部地方の女性が取材に応じた。 数年前、小学校低学年の子どもが不登校になった。女性によると、無料の面談を経て1カ月半のサービスで費用は約40万円。最初に「子を1日10回ほめる」といったルールをつくるよう言われ、その履行状況をオンラインで毎日報告したという。 ルールには、「(ゲームやスマホなど)デジタル機器の使用禁止」も入れるように言われた。女性がルール通り、ゲーム機を取り上げると、子どもは怒って暴れ、自室にこもるようになった、と話した。 女性は、スマートフォンで不登校の支援サービスを検索し、同社サイトに書かれた「3週間で解決」という文言に魅力を感じて契約したという。 同社は取材に対し、子どもの精神状態に与える影響については「リスクの判定をしたうえで(サービスの利用を)お断りするケースもある」と回答した。一方、板橋区教委に提案した事業内容などに関する質問については「回答を差し控えたい」とした。 「行政はリスクある事業者を避けて」 文部科学省の「不登校に関する調査研究協力者会議」委員を務めた伊藤美奈子・奈良女子大大学院教授(学校臨床心理学)は、同社の事業内容について「不登校生に向けた支援は多様な選択肢があるべきで、方法の一つとしてはありうる」としたうえで、「行政が単独の事業者を紹介すれば、それが正解との印象を保護者に与えかねず、慎重になるべきだ」と指摘する。 また、一般的に、再登校を強いたり一方的にゲームを取り上げたりすると親子関係の決裂や子どもの精神状態の悪化などにつながる危険性があるという。「保護者がそうしたリスクも理解した上で自由に選択できることが重要」としつつ、「行政はリスクのある事業者はなるべく避けつつ、親の会や子どもの居場所などについて情報提供をするのが有効だ」と話す。(本間ほのみ、高浜行人) このような業者や団体などは、不登校が問題視されるようになってから後を絶ちません。 子どもが不登校状態になるのには、多くの場合長い時間が経っているのです。 その過程で、心が傷ついたり大人への不信感、周囲の人達への恐怖感などが積み重なっている場合が多いので、心の傷を自己修復する時間が必要です。 三週間で再登校する子もいるかもしれませんが、その三週間の働きかけでさらに心が傷ついたり、体調を崩す場合もあるでしょうし、親子関係が悪化することもあるでしょう。 親が、何とか学校に行ってほしいと思うのは理解できますが、お子さんの声に出せない声に耳を傾けてほしいと願います。 そして、お近くの親の会に参加して先輩の様々な体験を聞いたり、色々な生の情報を聞くことをお勧めします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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