ブルターニュの歓び
おもむろに、彼女は鞄から携帯電話を取り出した。「ダメ元でも、海外旅行保険のエマージェンシー・コールにかけてみる。」今回の旅で、彼女が用意した重要な段取りが、フランスで使える携帯電話、日本語サービスの充実した海外旅行保険である。「Caenという街にいるんです。 VINCIの駐車場で RESISTANCE とういう名前。」「通り名は?」と聞かれたので、ぼくは走って見に行く。 あった! Avenue du 6 Juin(6月6日通り)結局、10分後に折り返し電話をもらうことになった。だが、ぼくの心の内は、「人が動かないと解決しない無理な話、さらに日曜日だ。おまけにフランスだし...。諦めるかない。」ところが、である。もう、皆さんお分かりでしょう。答えは、「その時間(9h-13h)は入庫の制限時間で、出庫は駐車券にて24時間できる」ということは..。「そうだ。フランスのドアはやたら重いんだ!」駐車券を挿す。「ブー」力いっぱい引いてみる。ガッシャ~ン!!「開いた」冷静な第三者の助言が必要だったということ。フランスでは、ホテルのドアも駐車場のドアも開きにくい。日本の常識は通用しない。ホッとする間もない。次の目的地、カンカールへはまだ、数時間のドライブが必要だ。出発したのは、16:30。まぁ、「とにかく良かった良かった。次はオマールだ。」これが現在の共通の気持ちだと思っていた。が、なんと彼女は、この状況下でも「モン・サン・ミッシェル」の近くまで行きたいと言う「だってモン・サン・ミッシェルなのよ!!」。とうぜん「却下」するが、これから先、2人の良好な関係は続けられるのか...。遠くに小指の爪ほどの「モン・サン・ミッシェル」を眺めながら、ふくれっ面の彼女を乗せて、緑から青へ変化するカンカールの海沿いを走る。たどり着いたのは古い部屋、変なエレベーター、狭い螺旋階段、まぁね フランスのホテルだもの。ホテル・シャトリエにつく。19:40。レセプションの元気で明るいイザベルの応対が気持ちいい。「全くこちらの手違いでバス付きの部屋がない。シャワーのみでいい?ご希望ならグレードの高いバス付きの部屋をディスカウントするわ」後者で手を打ち、腰掛け付きの広いバスタブと暖炉もどきのある広い部屋でディナーへの用意をする。イザベルに彼女は、「メゾン・ド・ブリクールを予約してるの」「まぁ、素敵。でも何時に?」「9時までに行けばいいみたいだけど20分後にタクシーお願いね。」少々遅れて来たタクシーで向かう。思ったより遠い。やっと着いた『Le Coquillage : bistrot marin』。20:30だが空は18時頃の感じだ。とりあえずジャック・セロスをボトルでたのみ。アペリティフ+αとする。127ユーロなら安いと思う。料理は、前菜と主菜からそれぞれ一皿選択するプリフィクスで51ユーロ。オマールは、+29ユーロ。非常にリーズナブルだが、HPにあるような「洗練された皿」はみあたらず、オーソドックスなスタイルに感じた。オマールも「火入れが云々」というより、ガッツリ食べなさいである。ただ、他所にはないスパイスの使い方等は、さすがと思わせる。特筆すべきは、サービスの心地良さだろう。レセプションもギャルソンも☆☆☆のそれと変わらないレベル。こんな感じ。レセプションの女性が、前のカップルを席に案内する。「すぐ戻りますので、少々お待ち下さい。」通りがかった黒服の男性が、受付をさっと引き継ぐ。だからこそ戻ってきた女性は、すぐにぼく達を案内できる。ジャック・セロスのコンディションは良好で、強すぎない熟成度が魚料理と相性が良い。写真の許可をとっていたが、周りの雰囲気を壊しそうで遠慮した。でも、アミューズは撮っておけば良かったと後悔している。美しくて洗練された味の一皿で、☆☆☆の名残がみえていた。白ワインは、Leflaive Puligny Pucelles 2000 195ユーロ これもドンピシャの熟成感。ワインの温度管理(途中何度も確かめる)やグラスの選択もスマートで感心する。席は、10の内、3,4番目あたりの海がみえる場所であり、全体を通して満足できる夕食となった。