盆帰り
君が着た 花掠り君が舞う 花祭りひとときを故郷の 懐に遊ぶ明日には村離れ汽車に乗り村忘れ一年を忙しく 過ごすのは 何故汽車に乗れば 故郷の手土産の 一輪の花の色褪せることも知りながら暮れ方の 盆帰り火を落とす 花祭り今宵また 故郷の 駅を発つ人影いくつかの 歳月を繰り返すこの旅を窓に寄りいわれなく 想うのは 何故汽車の窓に 映り行く景色に似て 何もかもがめまぐるしいだけの場所へと知りながらひとときの盆帰りすぐにまた振り返り気忙しく 上りの汽車 乗り込むのは 何故せせらぎに素足で水をはねた夕暮れの丘で星を数えた突然の雨を木陰に逃げた故郷の 君の姿ぬぐい切れないと知りながら『 盆帰り 』 by 中村 雅俊