カテゴリ:第三章 188 ~ 240 話
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尚もナンチャン坊に打って出るザウバー、 その打撃速度が徐々に増してきているようだっ! ズゴっ バコっ パシパシ、 ガシガシっ! その速度に比例するように、ザウバーの繰り出す拳が段々当たる数が増えてきた。 ドコっ★ ズゴっ★ ズコーン! 鋭い蹴りも見事に決まり、飛ばされたナンチャン坊を目だけ追うザウバー。 しかし、ナンチャン坊はまたまた立ち上がったのだった。 周りの7人をチラ、チラっと見たナンチャン坊。 クンナを始め、チュウラン、チーラン、スウラン、そしてスンチャにゆうすけと利江。 みな一様に口元を緩め、ナンチャン坊の視線が来た時にうなづく者もいた。 それを見たナンチャン坊、 またまたスタスタとザウバー目掛けて歩き始めた。 ザウバー 「くそ、これで終わりにしてやるっ!」 『 うぉぉぉぉぉりゃぁぁぁっ! 』 ザザっ 物凄い速さであっと言う間にナンチャン坊に近づくと、渾身の力を込めた 強烈な蹴りをナンチャン坊に放つザウバー! するとナンチャン坊は、 ザウバーの左側に向かって飛び上がり、物凄いスピンで回転を始めたっ! ぶかぶかだった羽織物が、遠心力で花のように広がり、ザウバーの視界を奪った。 そして左わき腹に拳を一発叩き込んで着地した。 続けざま、ザウバーの 膝っ小僧 の裏側を軽く蹴り抜く。 トン ザウバーは、力が抜けたようにその膝から崩れた。 ガクっ 『おぉぉ!』 修行僧から歓声が上がる。 片ひざで、一方の手を地面に付いた姿勢のザウバー、 どうしたことか、その体制のまま動かなくなってしまった。 ザウバー ( ぬぅぅぅ、なんということだ・・・・。 自分で蹴り抜いた、そして打ち抜いた場所が腫れてきやかった・・・。 そして・・・なぜか体が動かねぇ・・・・・くそ坊主め・・・・ く、くそ・・・・ ) 二十三房長 「ザウバー殿・・・・ここまでとするが、よいかな。」 ザウバー ( く・・・・ ) 苦痛で声にならないザウバー。 左足の膝を地面に付け、右ひざは立てて、そして左手を地面に付き、左わき腹を右手で押さ えた姿勢のまま動かない。 二十三房長 「それまでっ!」 その声を聞き合掌して一礼、振り返って観戦していた修行僧達の中に消えていく ナンチャン坊。 一人の坊さんに苦湯を飲まされたザウバー。 悔しさの気持ちとは裏腹に、体が未だに言うことをきかない。 その傷ついた身体をゆっくりと、ゆっくりと起き上がらせる。 そして顔を館長の方に向け、 ザウバー 「館長、邪魔したな・・・・」 一言吐き捨てたその顔は澄ました姿であったが、見つめる瞳は凍るような冷たさを放って いた。 そして石垣の下で倒れている戦闘員を摘みあげ、引きずるようにその場を後にしたのだっ た。 ザウバーが立ち去る後姿を見た館長、 館長 「あの男、心に野心が芽生えてしまったようだ・・・・ 今日ここで師範を助けたことと陳南家 南流伝承者殿と戦わせたこと、 この選択でよかったのだろうか・・・あるいは・・・・」 ~ ~ ~ 南ちゃん 「じいちゃん、ありがとう。 ちょっとほころびが増えちゃったけど・・・・」 南ちゃんに貸した赤と金色の羽織物を受け取りながら、 坊さん 「なぁに、陳南家 南流伝承者殿に着て頂いた羽織物として家宝になりまする。 大切にさせて頂きますじゃ。」 『ナンチャ~ン♪』 二人の元に、みんなが集まってきた。 振り返る南ちゃんと坊さん。 クンナ 「あれがレペル-3ってやつだな。」 南ちゃん 「うん、彼がそうだね。」 チュウラン 「まるで速い。 チュウラン、相手無理。」 クンナ 「おれだってそうさ。 目で追うのがやっとだもん・・・。」 ゆうすけを後ろから抱きしめながら、 スウラン 「でも、ナンチャンのお陰。 相手、たっぷりと見れた。」 チーラン 「あんなん、相手出来ない・・・・。」 ゆうすけ 「あそこまでは無理・・・だろうな。 人間の常識を遥かに超えてしまっているもん。 ってさ、もうその髪型・・・・いいだろうに。」 南ちゃん 「あぁ、これか・・・・忘れてた。」 レゲエ白髪に手を掛けて、スポっと取り去る。 坊さん 「またこいつに戻しませんとな。」 (T ←^ ^;これこれ。。。) と、そのレゲエ白髪を受け取る坊さん。 片手に、プラスチックのTの字を先っぽに付けた木棒をみせながら。 利江 「モップ・・・?」 南ちゃん 「そう、じいさんが用意してくれたんだ。」 あごひげもむしり取りながら返答する南ちゃん。 南ちゃん 「レベル-3は、一端どんな程度なのかが目に映ればいいさ。 出来れば戦わない方がいい。 それよりスンチャ。 上出来だったじゃないか~♪」 スンチャ 「おかげさまで。 戦ってて気が付いたよ。 ナンチャンが組み手してくれてたレベルって、 あの異人よりも少し上でやってくれてたでしょ♪」 チュウラン 「そうだ、それ感じた。」 クンナ 「だな。」 チーラン 「うん。」 南ちゃん 「まぁね。 でもみんな凄いよ、ちゃんと戦えてたもん。」 スンチャ 「みんな?」 不思議そうな顔をするスンチャ。 ゆうすけ 「戦闘員を相手にみんなシャドーしてたのさ♪」 スンチャ 「なんだよ・・・おれの戦いを見てなかったか・・・・」 チーラン 「見てた。 スンチャ、カッコ良かった。」 ゆうすけ 「完勝だったぜ。」 少し照れながら、 スンチャ 「ま、まぁ、相手一人だったからな。。。」 南ちゃん 「うん、その余裕が持てるのがいい。 いずれ複数を相手にしなくちゃいけなくなるかもしれないからね。」 チュウラン 「チュウラン、まだまだ修行。」 クンナ 「だな。」 そこへ、師範がやってくる。 師範 「ナンチャン、いえ、陳南家 南流伝承者殿。」 突然輪に割って入り、南ちゃんの目の前で片ひざをついて師範、 師範 「命救って頂き、ありがとうございました。 私(わたくし)の力では、到底あの者に敵うはずもなく・・・・」 片ひざを付いた師範の横にしゃがみながらゆうすけ、 ゆうすけ 「師範さん、面あげて下さいよ。 あいつは特別なのさ。誰だって無理ですよ、あのレベル-3には。 それにこういちにはお礼なんて。。。なっ♪」 南ちゃんを見るゆうすけ。 南ちゃん 「うん。 気にしない、気にしない♪ まさか突然ザウバーがここ大少林寺に来るとは思ってもみなかったさ。 それにお礼ならこのじいさんにだよ。 機転利かせてくれたお陰さ♪」 師範 「匠人様。」 南ちゃんの隣にいる坊さんに合唱する師範。 坊さん 「なぁに、わしに出来んことをしてくれるこういち殿だけに、 思ったことを任せればいいだけのこと。わしも楽しませていただきましたよ。 それにの、あやつの態度、師範殿もよく辛抱されておった。 若かりし時のわしじゃったら、食って掛かっておったかもしれんでの。 しかしあの腕前では、その場で命を捨てておったことじゃろ。 これも御仏の思し召しじゃろうて。 南無阿弥陀仏。」 ゆうすけ 「けど・・・・ザウバー・・・・」 南ちゃん 「あぁ。」 クンナ 「ん・・・?」 スウラン 「ザウバー、どうした?」 ゆうすけ 「・・・あいつ、なんか野心に火がついてしまったかもしれねぇ・・・ こういちに負けたのであれば、自覚があるからなんでもないんだけど、 別の・・・それに下っ端と名のる者に負けただろ・・・・ 大少林寺に対して敵対心、 そして今以上に更に強くっていう気持ち・・・持っただろうな。」 利江 「しかたないわ。 今の場は、こういち君が代理で立ち会わなければ、師範の他にも死者が 出ていたかもしれないもの。」 チーラン 「ナンチャン、みんな守る。」 南ちゃん 「後のことはまだやりようがある。 だけど、みんなの前で・・・それも無益な死に様は、師範は見せては いけないと思った。 それだけのこと。 大事なのは、先の展望を見据えつつも、今この場、今をしっかりと生きなきゃダメなん だ。今を大事に、そして自分でしっかりと選択していかなければ・・・」 チュウラン ( 先の展望を見据えつつも、今この場、今をしっかりと生きなきゃダメ・・・か。 ) ゆうすけ 「今出来ないやつが、後回しにしても、その先にだって対処できるかってことだよな。 先を全く見ない選択は、ただ視野の狭いやつってこと。 ザウバーの事はやつの動向次第だが、またその時にしっかりと作戦練ろうや。 今日の選択、利江ちゃんの言うように、止むを得ない選択だったってことさ。」 そう言うと、スっと立ち上がるゆうすけであった。 (どうした、雲行きが怪しいではないか) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年12月28日 14時25分13秒
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