カテゴリ:第三章 188 ~ 240 話
.
団子をほお張りながら町外れの川に向かう細い斜面の道を歩くクンナと南ちゃん。 上空ではもくもくと入道雲がたちこめて、黒い雲が空を覆い始めていた。 辺りがどんよりと暗くなり、夕立の兆し。 山間地では既に降っていたのであろう。町を突っ切る川が泥水まじりでにごってきている。 水位も上昇してきているようだ。 クンナ 「一雨きそうだな。」 南ちゃん 「雨宿り見つけようよ。」 クンナ 「よし。」 暗い上空からは、ポツポツと雫が落ちてきた。 川沿いにある手頃な大きな樹木が連立しているとこを見つけ、その下に走りこむ二人。 そして大粒の雨が ボタボタボタと音を立てて落ちてくる。 そして、 ザーーーーーー 大きな木の下にペタンと座る二人。 クンナ 「ギリギリセーーフってやつだな。」 南ちゃん 「濡れても少し経てば乾いちゃうよ。」 クンナ 「濡れたままでいると風邪引くよって母ちゃんに教わらなかったか?」 南ちゃん 「 ・・・・ 」 クンナ 「あっ・・・、ゴメン・・・・ ナンチャンはお袋さんの顔すら覚えてないんだったな・・・・」 南ちゃん 「かぁちゃんはおいらの物心付く前にどっか行っちゃったって姉ちゃんが。 身近な女性なんて姉ちゃんただ一人だったよ・・・・。 だから南流の伝授はじいちゃんから。」 クンナ 「そうだったよね・・・・。 でも教えを請うたのはオヤジさんじゃないのか !? 」 南ちゃん 「本当はね・・・・」 クンナ 「本当は・・・?」 南ちゃん 「うん。 本当なら順番に引き継ぐよね・・・・」 クンナ 「・・・うん。 で?」 南ちゃん 「当時、加減ってことをしらなかったおいらは・・・・」 クンナ 「当時って・・・・小学生くらいか?」 南ちゃん 「総本山対極試合に行く前の年だったから、二歳だね。」 クンナ 「まぁ二歳じゃ加減なんて知らなくても・・・・ でさ、何を加減しなかったんだ?」 南ちゃん 「・・・・とおちゃんとの練習・・・・。」 クンナ 「えっ !? 」 南ちゃん 「とおちゃんを・・・・殺しちゃったんだ・・・・おいら・・・。」 クンナ 「な、なにーーーーっ! に、に、に・・・、二歳でーーーっ! 南流正規伝承者をそんなガキの時に倒してしまったってことかよ。」 南ちゃん 「あぁ・・・。 不出来な息子を生ませたわしが悪いと言ってたよ、じいちゃん。」 クンナ 「南流伝承者をも倒す南ちゃん、つまりこういちってことかよ。」 南ちゃん 「代々、先代の伝授者を倒して受け継ぐからね。 それで姉ちゃんが代理で総本山対極試合には数年出てたのさ。 だからおいらの生まれる前から出てたんだよ、姉ちゃんは。 とおちゃんは正規に伝承されてなかったんだ。」 クンナ 「だからって・・・能力はそれなりに持っていたんだろ? 二歳児が大人を倒せるんかよ・・・・。」 南ちゃん 「考えるより、事実が先になっちゃったから・・・・。」 クンナ 「やっぱこういちは半端じゃないってことだよ。 光栄だぜ、そんな人に人生で教えを乞うなんてさ。」 こういちは座りながら、近くに落ちている石をいくつも拾い始めた。 南ちゃん 「クンナ、お客さんが来たようだぜ。」 クンナ 「何 !? 」 立ち上がり、辺りを見回すが、それらしき人影は見当たらない。 クンナ 「ど、どこから来るっ !? 」 南ちゃん 「暑いから。。。泳いできたみたい (^ ^ ひぃ~、ふぅ~、みぃ・・・・ざっと10人は居るかな。」 石を拾うため、下を見ながら話す南ちゃん。 クンナ 「川の中・・・?」 南ちゃん 「まだまだ居るよ。 対岸の森の中、14人、そして上・・・12人。」 クンナ 「う、上って・・・・空か !! 」 上空を見上げるクンナ。 その目には、暗い雲間を大粒の雨をもものともせず、懸命に鳥が空を舞っているようにしか 見えなかった。 南ちゃん 「かなり高くを飛んでいるんだろうね。 普通に鳥にしか見えないよ。 それより・・・・なんか下から後ろに回って進んでいるのもいる。」 クンナ 「なにっ! 更に、し・・・下かよ・・・・」 今度は地面を見るクンナ。 石がゴロゴロと転がっているだけだ。 南ちゃん 「地中を進んでいる連中、町の中に進んでいる。 クンナ、そっちを頼む。 おいらはその他を。」 クンナ 「わ、分った・・・。」 なんとも半信半疑なクンナ。 南ちゃん 「8人くらいだ。 団子屋の先に集結してるっ! 土のところを注意しててね。 石畳では出て来れないから。」 クンナ 「よ、よし・・・。」 強い土砂降りの中、さっ☆ と先程来た細い斜面の道を駆け上がるクンナ。 南ちゃんは今だ木の下に座ったままだ。 数分間、沈黙が続いたが、先程までの強い土砂降りが嘘の様に止み、雲間から日の光が 差し込んできた。 太陽の位置とは反対側に綺麗な虹が川の上に架け橋となって現れた。 一つの石を親指に乗せた南ちゃん。 すると対岸の森の中から、一本の矢が突き進んできた。 石を乗せた親指を ピン彡 と弾いた南ちゃん、すると、 バチン 音と共に飛来してきた矢に当たり、折れて二方向に分かれて落ちていく。 矢じりのある先端部分は放物線を描いて木を超えて行く。 そして矢の後ろ半分はこういちの目の前にヒラヒラと落下してきた。 それを難なく手でキャッチする南ちゃん。 その折れた後ろ側の部分には、黄色い矢文が付いていた。 広げて読む南ちゃん。 南ちゃん 「達筆だねぇ。。。 うまいもんだ。。。」 にこにこしながら眺めている。 すると、 ??? 「少年、そいつを村の人に知らせてもらえんかな。」 どこからか、声が聞こえてきた。 南ちゃん 「やだよーー♪」 彡ポイっ (町ってな石畳が多いんだなぁ) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2020年12月08日 11時19分53秒
コメント(0) | コメントを書く
[第三章 188 ~ 240 話] カテゴリの最新記事
|
|