カテゴリ:第三章 241 ~ 300 話
( ん、ん・・・・ん・・・・ ) ここは大自然が広がる異空間、その奥深くに小ぶりにそびえる尖がった山々のふもとの洞窟 の中。大竹林寺と呼ばれる伝説の聖域である。 その数ある部屋状のスペースの中の一室。 うっすらとまぶた越しに明かりがぼんやりと見えてきた。 意識がはっきりしないまま、ゆっくりとまぶたを開ける。見えるのは火が炊かれた複数の かがり火、薄暗いながらもチラチラとおぼろげに灯っていた。 次に見えてきたのは岩の壁。なにか冷たそうなツヤを発している。その上の天井はかなり高い。 その下に目線を送るころには目が馴染んできて、ひとつひとつ映し出す姿をはっきりと捉え られる様になってきた。 寝ていた姿勢から身体をゆっくりと起こし始めた利江。 そう広くはないスペースをぐるっと確認した利江が斜め後ろに顔を向けた時、 [神霊巫女]マーシャ 「気が付いたようね。」 頭にティアラに似たわっかを被り、宝石なのかいくつもキラキラ光る石をぶらさげている。 眉間には赤く丸い石が張り付いている。 その赤い石に向かって頭の被り物から、一匹の竜と思われる形をした金色の装飾品がまさに 噛み付かんばかりの姿をしていた。 首にも装飾品を付け、扇状に素肌をほどよく覆っている。 全身はきらびやかな装飾品で覆われた羽織物が、その容姿を隠している一人の女性が声を 掛けてきた。 利江 「ここは・・・・」 [神霊巫女]マーシャ 「大竹林寺の中よ。」 利江 「大竹林寺・・・・、 そうだわ、私、大竹林寺[月光軍長]と名乗る人に捕らえられたんだったわ…。 あ、あなたは・・・・」 [神霊巫女]マーシャ 「私はマーシャ。ここの住人です。」 利江 「住人の方・・・・。綺麗な装飾品を身に付けていらっしゃるんですね。」 [神霊巫女]マーシャ 「ここ大竹林寺のあるこの大地には、宝石の原石が各種眠っているの。 手にするのはそう難しいことではないわ。 あなたにも同様なティアラなどを作らせるから、近く身に付けることが出来るのよ。」 利江 「私・・・・にも・・・・?」 [神霊巫女]マーシャ 「そっ。これは誰もが身につけられるモノではないの。 特殊な能力のある人だけがゆるされている装飾なの。」 利江 「特別に・・・・? !? もしかして・・・・ マーシャさんは[神霊巫女]ではありませんか・・・?」 [神霊巫女]マーシャ 「えぇ、その通りよ。 よく知っているのね。」 利江は、どんな人なんだろうと考えることが多かった[神霊巫女]。 その空想していた人物が、今目の前にっ! その瞳は、ある種芸能人を間近でみたような驚きと、憧れのまなざしで見つめていた。 利江 「あなたが・・・・あなたが[神霊巫女]・・・・・」 老婆でもなく、また同世代の少女でもない。 今、目の前にいる女性は、一番油の乗りきったナイスミドルなご婦人であった。 年齢は、自分の母に近いかも・・・・そんな風に思えた。 [神霊巫女]マーシャ 「どうしたの? そんなに驚いて・・・・。 まず、あなたのお名前を聞かせてくださるかしら。」 利江 「あっ、はい、私は利江、今野利江です。」 [神霊巫女]マーシャ 「利江ちゃんね、よろしく。 私は[神霊巫女]なんて一言も言わなかったのに、詳しいのね。」 利江 「え、えぇ、大少林寺の館長様から伺いましたので・・・・。」 [神霊巫女]マーシャ 「そう、それで知ってたの。 私はここに来てから知らされたわ。 その館長様が利江ちゃんにお話したってことは、あなたも私と同じ能力を身に付けてい るからなの。それはご存知・・・?」 利江 「はい、同じかどうかは分りませんが、突然、何か獣のような鳴き声が聞こえたりしたん です。 青龍湖の辺(ほとり)で・・・・。 その話をしたら館長様が・・・・」 [神霊巫女]マーシャ 「そうだったの。じゃ、自分の能力を知らずに先にその鳴き声を聞いたのね。 私の場合、説明の方が先だったわ。」 利江 「説明が先・・・?」 [神霊巫女]マーシャ 「そっ、説明が先だったの。 能力を本当に兼ね備えていたのが分ったのはまだここ数年前ですもの。 利江ちゃんが持っている[石]、以前は私が手にしていたの。」 利江 「この[探神霊石]をマーシャさんが !? 」 [神霊巫女]マーシャ 「その[探神霊石]、ほんと詳しいのね。 私達以外が手にしてもただのガラスの欠片にしか見えないの。 でもね、私達が持つと、薄い水色を帯びるの。 その状態を大竹林寺の人が見て・・・・連れてこられて・・・・。」 だまって首元から[探神霊石]を取り上げる利江。 確かに、いつも水色を帯びた色をしていた。だが、今は、強い青色に染まっていた。 [神霊巫女]マーシャ 「ここに来て、大玉の[探神霊石]を手にしたとき、この大竹林寺にある空気を吸い込む 穴があってね、そこに投げ入れなさいと言われてその[石]とはさよならをしたの。 でも不思議と、ちゃんと能力のある人の元に行くって聞いて。 今の持ち主が利江ちゃんってことで、再びその[石]を見ることが出来たわ。」 利江 「ちゃんと[神霊巫女]の元に・・・・。 でも、今は時折輝く青色に常時染まってます。」 [神霊巫女]マーシャ 「それは青龍の色。 輝く色で現れる[三獣神]が識別できるの。 これから順次説明していくわ。 利江ちゃんは、私から引き継ぐためにここに連れて来られたんだもの。」 利江 「引き継ぐだめ・・・?」 [神霊巫女]マーシャ 「一代に一人いると言われているの。 私がこの世を去ったら、次はあなたがこれを次世代に引き継がなくてはならないわ。 それがあなたの使命であり運命なのよ。」 利江 ( 私の・・・・使命・・・運命・・・・ ) 利江の気持ちは複雑であった。 ・突然、意識の無いまま強引に大竹林寺に連れて来られたこと。 ここは今、世界を我が物にするべく、町村を襲っている張本人のアジト。 ・大竹林寺の[神霊巫女]はどんな人なのだろうと思い焦がれていた人が、今目の前に。 落ち着いた大人の女性であったことになんとなくほっとしている自分。 ・今、自分が手にする[探神霊石]、巡りめぐって自分の手元にある[石]、それが考えて みれば当然なのであろうが、目の前にいる大竹林寺の[神霊巫女]も手にしていたという。 そしてそれを手放した後、自分の手にあること。 いずれ私もこれを手放すのだろうけど、年月が経つと今度は私が目の前の[神霊巫女]と して、このことを次の世代の女性(ひと)に説明する立場なんだろうなと。 ・初めて聞いた[探神霊石]の色の秘密。 ・そして改めて自分の使命であり運命だと告げられたこと。 一度にたくさんのことが自分の頭の中を通り過ぎていく・・・・。 頭と心の整理が言われてすぐにつくものではない。 そんな戸惑いを隠せない利江であった。 利江 「あの・・・・私・・・・」 その時、[近衛軍副長]トンコウが一礼して部屋に入ってきた。 [近衛軍副長]トンコウ 「マーシャ様、失礼致します。」 [神霊巫女]マーシャ 「何用だ。」 口調が変わるマーシャ。 [近衛軍副長]トンコウ 「はい、青龍湖に青龍が現れましてございます。」 [神霊巫女]マーシャ 「解っておる。」 [近衛軍副長]トンコウ 「は、それを受け、討伐に当たっておりました各軍長達が一斉に引き上げてまいりました。 黄龍道(おうりゅうどう)元帥様がここまでの状況を聞くとおっしゃいまして、 元帥広場にて集合が掛かっております。」 [神霊巫女]マーシャ 「うむ、分った。 すぐに参る。」 (もしかして・・・吉報ですか) ※ このドラマはフィクションです。登場する内容は、実在する人物、団体等とは一切関係がありません。 また、無断で他への転載、使用等を堅く禁じます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2021年08月06日 16時28分51秒
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