こんなにも咀嚼しがたい作品があるのだろうか。
難解というわけではない、説明がないのである。映画的手法にのっとって作っていない作品。小学校の何年生なのか説明はないし、ネクタイをして給料をもらっていると大人(正社員)なのかと思ってしまった。主人公が何歳で何をしているのか、説明もなければテロップでの補足もない。これだけつかみどころのない導入部から時空を超えて前後してしまうと、長年培ってきた映画鑑賞経験則から逸脱しているので、摩訶不思議な現代作品として映ってしまった。まわりの気持ちも相手の気持ちもわかろうとせず、否定的でいじめで、またそのことを顧みずもせず。
最悪の事態をむかえようとする生死の霧ヶ峰をいきつもどりつする内容は、まったく想定外というしかない。人を傷つけいじめて平気な登場人物たち。被害妄想。ひどいしうちのくりかえし。この彼らが存在する世界は、不協和音ともいうべき複雑な人たちである。
現代の人間たちの心にあるひずみはなんというものであろうか。そして、結末はこれでよいのであろうか。
こんなにも死に直面し、他人との軋轢にもまれ、それでも大団円。ほんとに、これでよいのであろうか。
2016年/日本/129分/G
監督:山田尚子
声の出演:入野自由、早見沙織、悠木碧、小野賢章、金子有希、石川由依、潘めぐみ、豊永利行、松岡茉優、小島幸子、武田華、小松史法、谷育子、鎌田英怜奈、濱口綾乃、綿貫竜之介、西谷亮、増元拓也、ゆきのさつき、平松晶子
お薦め度
「聲の形」★★★★(80%)